リハビリがてらに書いてみました。
台詞は少なめですが…。
シキはアキラのものとかを大事にとっておきそうです。
っていうか保存?
ぺいっとは捨てられないというか…。
そういうところがシキの人間味なのかなぁ…なんて思ったりします。
拍手でメッセージ下さった方!
本当にありがとうございます。
メッセージはやっぱりとても励みになりました。
放置していて本当にすいませんでした。
暑さに負けずがんばりたいと思います~。
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*秘密*
ある扉の前でアキラはふ、と足を止めた。
城の大分奥まったところにその扉はあって、普段から城の中を徘徊しているアキラもこの扉の存在は知らなかった。
もっとも、アキラが歩いているときに部屋の存在をいちいち気にしているかといえば答えはもちろん否、なのだが。
いつも探しているのは自分を楽しませてくれる存在と、それに必要な部屋と、なによりもシキだった。
前の二つはシキがいれば取るに足らない問題で、歯牙にもかけないようなことだけれど、シキがいなければどうしても物足りなかった。
そっとドアノブをひねればなんなく扉は開いた。
多少軋みながら開いたそれは城内のどの扉とも同じく重く、アキラは両手でしっかりをドアノブを握りなおす。
首をかしげながら右足を踏み出せば床は埃のざらついた感触。
人が入らなくなって久しいのかもしれない。
そこそこに広い部屋の中は暗く、アキラは手探りで明かりのスイッチを入れてはみたものの、ぱちんというスイッチの音が鳴るだけだった。
電球が抜かれているのかもしれなかった。
真っ暗な部屋の中で少し視線を漂わせながら考えてアキラは扉を大きく開く。
部屋の中にわずかに明かりが差し込む。
暗闇よりかは多少ましになった、と小さく頷いて再度部屋へと踏み出す。
なぜこのとき気まぐれなアキラが興味を失わなかったか、というのはやはり彼の気まぐれとしか答えようがなく、その理由はやはりアキラにもわからなかっただろう。
彼はそういうふうに"なって"しまったのだった。
部屋の中においてあったものには埃よけに白い布がかけられ、それがわずかな光を反射してぽぅっと浮かび上がっていた。
細い指先がその布の一端を手繰る。
しゅるりと落ちた布の下から出てきたのは裸の少年の像だった。
白い石で作られており、すべらかな感触にアキラは何度か手のひらを這わせた。
いつか、どこかでこれを見たような気もしたけれど、思い出すことはなく。
脳の遠くで何かの映像がちかちかと明滅しただけだった。
この像と同じような台座が布の下から見えているものが周囲にいくつもある。
という事はここにはこれと同じようなものしかないのかもしれない、とぼんやり考えながらも、アキラは暗闇に慣れてきた目でそろりそろりと前進する。
傍を通ったものの布をすべて床へと落としていく。
あっという間に床は柔らかな布で埋まっていった。
部屋の一番奥にあったものは振り子時計だった。
薄いガラス戸を開いて、止まってしまっている振り子を指で揺らすと柔らかい音がして、アキラは右に左に繰り返し動かしてみる。
シキの心臓の音に似ている、とアキラはひとりでくすくすと笑って目を閉じる。
ひとしきり遊んで満足するとその時計の隣の棚に目をやった。
なにかが光った気がして首を傾げながらも手を伸ばす。
手探りで小さな箱の中にあった金属製のプレートをつかみ出した。
チェーンのついたそれは金属同士がこすれあって硬質な音を立てる。
指先で辿れば模様か何かが彫ってあるようだったけれど暗闇ではそれをみることはできなくて。
幾度も指を滑らせてみたけれど、結局わからなかった。
妙に気になったそれを部屋に持ち帰ろうと握りなおした矢先、名前を呼ばれてぴくんと、とアキラの体がはねる。
「シキ…!」
「こんなところでなにをしてる」
「………さぁ…なんだろう」
わからない、と首を振ってためらいなく右手に握っていたものを床へ落とすと、アキラは主のもとへと駆け寄っていった。
埃だらけのアキラにシキはこれ見よがしにため息をついて。
眉を寄せながらもその肩についたほこりを払ってやった。
「…何か…みつけたのか?」
「………ううん、なにも」
面白いものは何もなかった、とアキラはつぶやく。
シキがちらりと横目で部屋の奥を見る。
暗闇で見えないが、その奥にはアキラのものがおいてあるはずだった。
以前の、アキラのものが。
眇めた目が一瞬深い色に変わるも、すぐにそれは消えて。
腕を絡めてくるアキラの好きにさせながらそのまま振り返ることはなかった。
後日その部屋にはシキの命により厳重に鍵がかけられた。
アキラの過去とともに。
[7回]
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