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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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キリ番は500単位で受付中です。
お礼SSを書かせていただいてます。
踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
リンクフリーです。
バナーはお持ち帰りくださいね。


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唐突に投下してみます。
間を空けていたのは自分なんですが、やっぱりどうも書きにくいというか、論理的じゃないというか破綻しそうでいつもはらはらしています。
なんか軽い気持ちで書きはじめた自分が憎いです(笑)
眠り姫状態のアキラの出番が相変わらずありません!
うわー、完成まであと一息かな~。


********************
*afterglow-13*

扉を開けてリンはわずかに言葉を失った。
電話がひっきりなしに鳴り、しかしそれを誰も取ることもなく怒声が飛び交っていたからだ。
いつ訪れてもこの城内では珍しく、淡々と仕事をこなすような人間の多く在籍する部署とは信じがたかった。

「だめです、突破されます!」
「おい、どうなってる!?」
「緊急ロックかかりません…っ!第1サーバーダウンします、リブート……できません!」
「おいおい、一体なんだ、これは!」
「誰か電話線抜いてくれ!」
「それどころじゃねぇ」
「くそったれ!」

怒号のように言葉は飛びながらそれでもその部屋の殆どの人間はコンピューターに向かい必死になにかしらの作業をしていた。
その大半が瞬きすら惜しむように画面を凝視してキーボードを叩き、その指先はとてつもない速さで動き続ける。
おそらく多くの人間がリンの存在に気づいてすらいないだろう。
ざっと見渡して話を聞けそうな人間を探し、ちょうど部屋に駆け戻ってきた若い男を捕まえて問いただす。

「何の騒ぎだ」
「テロです!」
「!?」

あまりに現況とかけ離れた言葉にリンは眉をぐっと寄せた。

「…サイバーテロですよ!城のサーバーに攻撃受けてるんです、あとウイルスもばら撒かれて、あちこちシステムが書き換えられてこんな状態です。やたら手が込んでるせいで対応しきれてません。データバンクにはまだ到達されてませんが…今の状況が続けば突破されるかもしれません」

話をしながらもあわただしく現状把握に男の目線は動き、本来ならば上官であるリン(シキ不在の城内では現在最も階級は上である)に呼び止められたことにいらだっているように見えた。
それほど切迫した状況だということだった。
基本的に城内のネットワークはそれほど規模は大きくない。
しかし防衛策だけは念入りに行われていたはずだった。
データの破壊で済めばまだいいが情報の流出は命取りになるとシキもリンも分かっていたからだ。
それこそシキの支配を支えている、言い換えれば最大の強みであり弱みでもあるNicoleの情報がここには蓄積されているのだ。
それをなんとしてでも手に入れようとするものは多い。

「……研究室には通達したか?」
「先ほど成田に。現在城内すべてのコンピューターはネットワークへ接続できないようにしています。それからしばらくは電話も使えないはずです。もしかしたら電気系統の方へ侵入されるかもしれませんが…まあ基幹部は予備電源があるのでなんとかなると思います…もういいでしょうか」
「……あぁ、すまなかった」

男はリンが許しを出した途端にすぐに自分のデスクへ戻っていった。
おそらく連絡するためにぎりぎりの人員を削って送り出されたのだろう。
まずリンへではなく最も重要機密の集まる研究室へ。
…マニュアルどおりだ。
おそらく下の研究室では最新のバックアップデータのディスクを所定の場所へ移し、紙媒体やコンピュータ内のデータの消去を行っているのだろう。
結局ここでリンは何も出来ることはなさそうだった。
現在の状況を幹部たちへ通達し、これからの混乱を最小限に抑えるための手はずを頭の中ではじき出すとすぐに来た道を戻り始めた。
一瞬アキラのことが頭をよぎったが、もし電源が落ちたとしても医療系の器具はすべて予備電源に接続されているため問題ないだろうと思い直し短く息を吐いた。

 

 


カラカラカラ、と望月が半ば寄りかかるような形でリネンカートを押して歩いていた。
カートの中身は空で、シーツ一枚入っていなかったが。
研究室へとそれを押して歩いていると幾つ目かのセキュリティを解除したところで成田と偶然鉢合わせた。

「………それはなんですか?」
「見てのとおりリネンカート」
「そういうことではなくて」
「書類運ぶのに便利そうだったんで拝借してきた」

はぁ、と成田はあきれたように嘆息した。

「今どれだけ忙しいかわかってるくせによくまぁそんなこと考えてる余裕がありますね」
「その仕事の効率化のためのカートに決まってんだろうが。頭の使い方にもいろいろあるってことだ」

その言葉にぴくりと成田の眉間に皺がよった。
それを面白そうにみると望月は何食わぬ顔で歩き出す。

「ま、別に俺はあんたがどんなに馬鹿だろうがどうでも良いがな。俺に害はないわけだし」

振り返ることもなくただそう言って、相変わらず面倒そうにカートを押しながら長い廊下を彼は研究室目指して歩いていった。
成田がしばらくの間険しい表情のままで彼を見ていたがやがてすれ違ったドアが閉まると彼もまた望月とは逆の方向へと歩みを進めた。

 

 


7人の幹部にリンを加え、現在は8人が会議室で対策を講じていた。
会議室でリンが現在の状況を幹部たちに伝えれば、当然のように沈黙が訪れる。
彼らはシキがいなくなってからリンに形だけは従っているものの、その内心には不満が隠れていることをリン自身よくわかっていた。
彼らが従っていたのはあくまで"シキ"なのだ。
集う幹部たちの年齢や経歴はさまざまだが、それぞれがひとつ小隊を任されている。
彼らを選んだシキ曰く"面白そうかどうか"らしいので(もっともその基準はよくわからなかったが)リンは彼らの全貌をいまいち理解できていない。
いつもシキが腰掛けるチェアに座るのはどうも気が引けたが、そんな己の思いをふりきってリンは深くそれに腰掛けた。
いっせいに見つめられる瞳に、シキと比べられているのだと、わかった。

「…城のサーバーに攻撃、ですか」
「おまけにウイルス、だ」
「しかしそう簡単に城のネットワークに侵入など出来るものだろうか」
「…事実されてしまっているではないか」
「とりあえず通信機が使えないので連絡の場合はすべて無線機で行ってくれ」

相手に実体がないせいなのか妙に会議の空気も締まらない。
実質、銃声が聞こえるわけではなく、城内のネットワークに接続できないこと以外は普段と変わったところはない。
そもそもこの場にいる誰もがそれらのデータの敵に対して成す術を持っていないというのが妙な空気を生み出している大きな要因だった。
銃やライフル、刀などの武器を手に戦うことは得意であっても今回に限ってはそれは何も意味を成さないのだ。

「いったい何者が、というべきなのですかな」
「というよりはどこの組織が、ではないですか?目的はもちろんデータなのでしょうが」
「まぁ組織ではなくどこかの国ということも考えられるな。アレは狙われて当然のものだからな」
「しかしシキ様の件を考えるとロシアという線が一番妥当なのでは?」
「それも確証がある話ではないだろう」

それぞれに言葉を口にするもNicoleを狙っている、という条件ではあまりにも心当たりは多すぎて何も特定できずに、結局無為に時間だけが流れていく。
唐突に部屋の明かりが落ちた。
先ほど報告を受けていたとおりだった。

「さて、電気系統もやられたようだな」
「…攻撃を受けているサーバーの電源が落ちれば攻撃されないんじゃなのか?」
「………どうでしょうか。あそこはもともと電源が不意に落ちても対策できるように設計されていたはずですからここのように突然電源が切れるということはないような気がしますね。まぁ手動でならどうなるのかは知りませんが」
「そもそも一括管理しているコンピュータが駄目になればセキュリティがすべて消えるんじゃないだろうか?」

その一言にリンは何か重要なことをひらめいた気がしたのだが、それは明確な考えを持つ前に消えてしまった。そしてそれを邪魔したのは、突如として響いた銃声だった。
思索していたリンを一気に現実へと引き戻すに十分な音で。
タタタタタ、という聞きなれたライフル音も混じり、部屋は一様に一気に緊張感に満ちた。

「っ!?」
「下か?」

それぞれが軍刀に一斉に手をかけ、左右の窓際に駆け寄ってカーテンの端をわずかにあけて外をうかがう。
相変わらずの曇天にくすんだ景色には特に異常は見当たらない。
いったい何の音だったのかと皆が内心で首をひねったところに今度は爆発音が響いた。
地響きのような揺れに城が攻撃されていることを瞬時に理解する。

「無線機の電源を入れてすぐに持ち場に戻れ!各部隊で直ちに報告、B1からE2体制に移行後に応戦、排除!!」

叫ぶように命令を下しリンは真っ先に部屋を駆け出て行った。
サーバー攻撃の後に武力攻撃。
城内を監視するシステムも現在は停止中とくれば完全に計画的だ。
シキがいないというのもあるいは漏れているのかもしれない。

続々と腰の無線機から応戦開始という報告が入ってくるにつれ、城内もどんどんと騒がしくなっていった。
城内へ侵入されたのだろう。階下からひっきりなしに聞こえる爆発音や破裂音、周囲では軍靴が立てる硬質な音があわただしいリズムを刻み、ここが戦場になったのだとリンに改めて認識させる。
この堅固な要塞じみた城さえシキの不在と、システムの不具合だけでこんなにもあっさり敵の侵入を許してしまった。
それがなにより自分の責任に思えてリンは両手を強く握り締める。
留守一つ守れない自分にいったい何が出来るというのだろう。

アキラが眠るのは城の最奥部であるので安全だろうが、それでも気にはなった。
アキラが自分では動けない状態であることと、もちろん非Nicoleとして狙われる対象となっていることは大いに考えられるからだった。
セキュリティが死んでいないのならエントランスからの距離が遠い下に運んだほうが安全だろうか。
しかし、この状況でアキラを運べるだろうか。
応戦に出遅れたこともあり何割かは城内に侵入をされているだろう。
少数の敵であればリンひとりでも十分に対応可能だが、アキラを抱きかかえて、となるとそれも難しいだろう。
階下の状況は音質の悪い無線機によればエントランスでの攻防が続いているようだ。
入り口はそこ一点ではあるが数に押し切られるという可能性もなくはない。
シキがはじめに連れて行った遠征組と、続々と出した捜索隊の分を合わせれば現在は総力の7割程度しか城に残ってはいないのだ。
結局、セキュリティが生きていた場合は多少遠回りにはなるが安全であろう道を通ってアキラを下へ連れて行くことに決める。
検査室にベッドがあるからそこに寝かせておけばいいだろう。
執務室へ戻る道程でセキュリティが正常に動作していることを確認すると、リンはその先のアキラの眠る寝室へと向かった。
廊下を曲がったところで扉の前に通常なら2人立っているはずの護衛がいないことに気がつくや否や、リンは全速力で扉の前まで駆けた。
嫌な予感がした。
心拍数が跳ね上がり、冷たい汗が背中を伝う。
まさか、もうここまで到達されてしまったのだろうか。
だとすれば抗う術のないアキラは…どうなってしまったのか。
呼吸を整えながら小銃の安全装置をはずすと、扉を蹴りあけて銃を構える。
そしてそのままくっと目を見き、リンの動きは固まってしまった。
トリガーにかけた指が、ふと力を失う。

 

 

 

「………………え?」

ベッドの上にアキラはいなかったのだ。
いたのはそこに腰掛けた別の男、ただ一人。


「………………………シ…キ」

まるでリンを待っていたかのように、シキはかすかに目を細め、笑った。




*************************
あとがきはつづきから!

拍手[31回]

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ぱぱぁっと思い浮かんだままに書いてみました。
5分くらい?
タイトル思いつかないので無題で。
ED3のアキラのつもりだけど、その割には言葉が堅くて自分のブランクっぷりを感じます。
っていうか最近書いてるアキラはやっぱり初期のころに書いてたのとちょっと違う気がする!
ゲームも結局2回しかしてないし、大切なことを忘れているような気が…。
でもシキアキへの思いだけは変わっていないのでそれだけで乗り切っていけるような気もなんとなくします(笑)


******************

*no title*

冷たい手のひらが俺の目の上に覆いかぶさった。
眠れ、とそういうように。
あるいは、見るな、というように。
大人しく俺は目を閉じる。

"俺"が深く、深く沈んでいったのはいったいいつのことだったか。
シキが"俺"をどこかに追いやった。
俺の奥底、深くに閉じ込めて、幾重にも鍵をかけて。
もう、決してそれが外に出ることはないのだろう。
今は、もう、その必要もない。

だから、俺はシキの望むままここにいて、待ってる。
シキを、待ってる。
ここにいれば何も見なくてすむ。
目を閉じて、耳をふさいで、部屋にこもる。
シキが帰ってくるまで。
シキだけを目にうつして、シキだけの声を聞くために俺はここにいるはずなのに。

あぁ、なのに。
帰りを待って、待って、待って。
いつになったら帰ってきてくれるのだろうか。
俺はこんなにもいい子にしているのに。
早くしないと、きっと"俺"が目覚めてしまうのに。
出口を、探し始めてしまうのに。


ほしいのは言葉じゃない。
ほしいのはその存在。
その圧倒的な力で俺を支配してほしい。
すべてをその手に握られているのだと、理解させてほしい。


 



だから早く帰ってきて…早く"俺"を閉じ込めて。

*************************

放っている間にいろいろと拍手やらコメントやらありがとうございました!
相当放置プレイで申し訳ないです。
いろいろとひと段落着いたのでまたちょっと腰を据えてがんばりたいと思います。
自分に負けない(笑)
バレンタインも終わってしまって私の萌えは一体どこへ向かえばいいのか…。
いろいろ探求していきたいと思います。
世のシキアキサイトをめぐりたい!

それから、コメントのお返事折りたたんでます!
感想とか、励ましのお言葉とかいただけて嬉しかったです!
 

拍手[7回]

*ただそれだけが*

主の髪が、首筋に触れる。
さらさらとした毛先が素肌には妙にくすぐったくてたまらなかったけれど、アキラが身じろぎすることはなかった。
心地よい重みを体全体に感じながらゆっくり瞳を閉じる。

 

先ほど、シキが部屋に入ってくるなりベッドの上にいるアキラをきつく抱きしめたのだった。
あまりに唐突な出来事で、アキラは反応するのに時間がかかった。
胸を圧迫されてきゅっと息をつめる。
シキが部屋にくるなりセックスに及ぶことはあっても、こんな(シキに言わせれば意味の無い)行為は…あまり経験がなくて。
"抱きしめる"だなんてどうにもこの目の前の男には似合わないような気がして内心で首をひねった。
アキラはそれからしばらく考えてから、己の腕をそっとシキの背中に回す。
たっぷりとあまっていた袖口が肘までずり落ちた。
息が苦しくなるほどきつく抱きしめられても、それでもアキラは何も言わず。
指先でシキの存在を確かめるようにその背骨をたどり、髪に指を差し込んだ。

"シキ"、と名前を呼ぼうとして、やめる。
名前を呼んで、応えてくれたとしたらきっとそのときこの腕は解かれてしまう、そんな気がして。
抱きしめられるのは心地がよかった。
まるでシキの両の腕で絡めとられているような気がした。
抱きしめられた腕が自分を外界とを断絶する堅固な檻のようで。
いつもならアキラが抱きつくことはあっても、シキからこうされた記憶はなかった。

静かな部屋でシキの呼吸だけが耳元で聞こえた。
シキの音だ、とアキラは思う。
それに、触れ合った肌から伝わるその鼓動も、間違いなく己の主のものだ。

"どうしたの"なんていうつもりはなかった。
アキラにそれを知る権利はないし、尋ねる義務もなければ、教えてもらえる保証もないからだ。
それでもこうしてどこへも逃がすまいとするかのような主はどこか必死に見えて。
間違いなくいつもとは様子が異なっていた。

「…………ずっとここにいるよ」

目を瞑ったまま、どこにも行かないよとアキラは微笑む。
左腕に刺さった点滴の管を揺らしながらそっと、その主の背を撫でた。
まるで赤子をあやす母親のように、やさしい手つきで。
幾度も、幾度も背を撫でた。
無言を貫き通すシキにかまうことなくアキラはずっとそうしていた。
返事がなくてもかまわなかった。
そんなことは問題じゃなくて。
少しだけ首を傾けてその首筋にキスをする。

「…俺さ…」
「少し黙れ」

そういいながらシキはアキラの言葉を封じるように口付けた。
その高圧的な言葉とは裏腹に与えられる口付けはとても優しくてやはりいつもとは別人のようだ、とアキラは少し笑う。
それでも嬉しいことにかわりはなくて、回した腕の力をほんの少し強める。
こうして死ねたら幸せかもしれない、とそんな考えさえ出てきた自分がおかしかった。

今日は本当に自分もシキもどうかしていると思ったけれど、それも悪くない気がして。
だからアキラはなにも考えず、シキからの口付けに溺れていった。
徐々に力も抜けて、シキに支えられたまま。
ゆっくりと海の底に沈んでいくようだ、と思いながらアキラは薄く開いていた目を閉じた。
シキといると…意識もとろけていくようだった。

 


「シキ……」

その名前だけが、自分を生かすと知っていた。

拍手[23回]

頑張る月間持続中です。
長さを気にするのをやめました!
とりあえず完結目標で!
なんかこれも後から追記しそうな気がするけど…でもとりあえず投下しておきます!

**********************************************

シキの気配がする…様な気がするのに、どこにいるかはまるで分からなくて俺は…どうしたらいいかわからなくなる。
俺はずっとシキを待ってばっかりだった。
今の城に移る前も、そう。
うん、そう…きっと、ずっと。
寒い日も、暖かい日も、朝も夕も…ずっと。
シキが部屋に戻ってくれば無条件で嬉しかったし、その後はシキをどうやって部屋に引き止めるかしか考えてなかった。
シキの心も体も全部欲しかった。
俺のそばにいてほしかった。
シキがいないと…不安になった。
だって俺はシキに変えられてしまったんだから。
もう、昔の俺とは何もかもが違う。
シキが作り出した俺は、シキがいなければ存在意義を失ってしまうのに。
あまりにもゆがんでしまった俺はシキがいないとだめだって分かってたけど、きっとシキはそうじゃないんだと思う。
だってシキがそんなに弱いわけない、から。
戯れのように俺を蹂躙して、時折痛めつけて、いきなりふっと優しくなる。
俺を抱いた後に、どこか満たされない目でシキは遠くを見る。
大概はその後に城の外へと出かけてしまうんだ。
…俺を置いて。
そのときのシキの中に俺はいない。
俺の中にはシキしかいないのに。
それが悔しくて…悲しかった。
少しでもこっちをみてほしくて男を誘ってみれば、始めの頃はそれなりに効果もあったと思う。
俺に手を出した男を殺した後は、シキはいつも激しく抱いてくれた。
それだけで生きてるって…感じた。
だけどそのうち俺もシキもそんなゲームには飽きてしまった。
俺はどうしたってシキ以外で満たされることはなかったし、シキだってそんなこと分かっていたはずだった。
何よりも俺達を結び付けているのはNicoleという絶対的な存在であって揺れ動くような感情なんかじゃなかったから。
そんな…脆いものじゃなかった…のに。

あの日、シキが出かけて…約束した日に帰ってこなかった。
待っても待っても…帰ってこなかった。
段々と俺は窓の外ばかり気にするようになった。
シキがはやく帰ってくればいいのにって。
そう、俺は待つばっかり。

…でも夜になればシキにあえた。
目が覚めれば…もうどこにもいなかったから夢だと分かっていたけれど、それでもよかった。
シキって呼ぶと頬を撫でて、髪を梳いて、キスしてくれて、俺がねだるだけ抱いてくれる…優しいシキ。
夢の中の出来事はいつだって俺に都合がいいようにできてる。
寂しい昼は前の晩に見た夢の中のシキを思い出そうとしたけれど、いつも顔がぼやけてはっきりとは思い出せなかった。
あの赤い瞳で俺のことを見て欲しいのに。
あの瞳に俺はずっと囚われたままだから。

俺はどうしてこんなことを考えているのか、不思議だった。
多分…シキがいないからだ。
シキと出会って俺は少しずつこうやって考えることを放棄していったから。
シキのための人形になって。
でもそれでいいと思ってた。
シキが全部俺から奪っていって、俺が空っぽになって。
それでいいと…思っていたんだ。

いつだってどうすれば上手くいくのか全く分からなかった。
だからいつも上手くいかなくて、俺はいつもシキを呆れさせてたに違いない。



"行方が分からず…"
"…亡くなっている可能性も…"

急に流れ込んできた記憶に苛立った。
シキが死ぬわけない。
なのに。
だから。
そんな嘘は聞きたくない。
俺を置いていくわけない。
俺は…シキの所有物だから。
最後にシキが俺を殺してくれるまで俺はずっとずっとシキのものなのに!!

"シキ様はどこにいるか知ってますか?"

ふ、と声が聞こえた。
その声に俺の苛立ちは更に増す。
俺がそんなこと…知るわけない。
俺にはシキしかいないのに、俺はシキのことを何も知らないんだ。
シキは何も俺に教えてくれなかった。

 


でも…俺だってなにも聞きはしなかった。


そこまで考えて俺は小さく声をこぼした。
俺……もっとシキのこと、知ろうとすればよかった。





記憶だけに縋るのはとても怖かった。
俺は、忘れたことさえ忘れてしまいそうだから。


*afterglow-12*


「アキラ、おはよう」

リンはいつものように身支度を整えてすぐにアキラの部屋へと向かった。
重たいカーテンを開けば、大きな窓から陽光が差し込んだ。
くすんだ空の広がるトシマでもそれなりに快適だとリンは思っている。
なによりもすっかり慣れてしまったというのはあるが。
相変わらず眠ったままのアキラに微笑むとリンはそっとその額に口付けた。

「夢の中にシキはいる?」

だから起きないの?とリンはそっと呟く。
もしそうだとしたらアキラにとって、どちらが幸せなのだろう。
返事のないアキラの額にもういちどやさしく口付けてリンは微笑んだ。

「…いってくるね」

軍帽をきゅっと被りなおしてリンは出て行く。
いつものことだった。


深く椅子に腰掛けて、たまっていく一方の書類に軽くため息をつく。
その中からシキ関連のものだけ選り分けながら読んでいけば更にため息が増えるばかりだった。
…シキに関する情報が一切入ってこない。
シキらしき男の情報もあれ以来入ってくることはなく、相変わらず捜索部隊とは連絡が取れない。
城の警備も考えるとこれ以上やたらと捜索隊を送るのは難しいように思えた。
かといってシキを探さないという選択肢もリンにはなく。
そしてアキラは未だ目覚めない。
…アキラが目覚めて今の状況がどうにかなるわけでもなかった。
アキラにとってはそのほうがいいのかもしれない。
だからアキラが目覚めればいいと思っているのは自分のためだと、リンは知っていた。
そうすれば自分の気も少しは晴れるのではないか、なんて淡い期待を抱いているのだ。

(最低だな…)

軽く自嘲すると余計に空しくなって、くしゃ、と前髪をかき混ぜる。
何もかもが上手くいかない。
すべてが後手にまわって、いつかきっと取り返しのつかないことになってしまうんじゃないかと、リンは不安で仕方がない。
アキラのことも、もっとやり方があったんじゃないか、と。
シキを待ち続けたアキラに、もっとしてあげられることはなかったのか、とか。
仮定はきりがなくて、考えても仕方のないことをぐるぐると思考せずにはいられなかった。
こういうときに限ってシキのことを思い出した。
いつでも迷いなく突き進んでいく兄を、うらやましく…思った。
しかしリンがそんな感傷に浸っているのもわずかな時間だった。
仕事をしなければ、と頭を切り替えてコンピューターをたちあげる。
慣れた手つきでパスワードを入力すると、不愉快な警告音とともにエラーが表示された。
打ち間違えただろうか、と今度は丁寧に打ち込んでも結果は同じだった。
その後いくつかの方法を試しても城内のネットワークに接続できなくてリンは首をかしげる。
胸元から携帯電話を取り出して管理部に電話をかければ、コール音が鳴るばかりで一向に応答しない。

「………?」

訝しげに眉を寄せてリンは電話を切った。
電話に出ない状態というものがよくわからなかったからだ。
それなりに人数はいるはずであったし、なによりもよっぽどのことがない限り電話やメールには即時対応が鉄則だ。
そのままもう一度電話をかけても同じ結果だった。
他の部署にも電話をかけてみるがどうも混線しているようでしばらくすると電話も通じなくなった。
全くもって仕事が進まないので結局リンは直接聞くか、と席を立つ。
……何が起こっているのか、全く分からなかった。

 

その部屋に設置してある数多くのモニターには城内のあらゆる場所が数秒ごとに切り替わりながら映っていた。

「はじまったか…」

ひとつの画面をじっと見つめると優雅に足を組み替えて、にやりと、男の口の端が引きあがる。
そのモニターの中には白衣の男が映っていた。
 

拍手[8回]

今日一日、時間があったので書き溜めたメモを片手にうんうん唸ってみました。
待っていてくださった方、拍手してくださった方、メッセージを下さった方、本当にありがとうございます。

********************************

*afterglow-11*

アキラの担当医は二人いる。
医師としてはもちろんだが、この二人は城内の地下にある研究所の研究員でもある。
医学者、という言葉の方が近いかもしれない。
アキラは部屋からほとんど出ないため、怪我をすることも風邪をひくこともほとんどなく、仕事といえば定期的に検診を行い、その健康に異常がないかを検査する役割を担っているだけだった。
とはいえその判断を誤り、もし万が一のことがアキラにあれば首が飛ぶことは確実だった。
職を失うという意味ではもちろんなく、事実上胴体と頭が切り離されるだろう。
…シキの手によって。

この二人がアキラを担当しているのはリンが来る以前から、と聞いて、なぜ二人なのか、とリンはシキに尋ねたことがあった。
最高機密であるアキラの状態を把握する人数が増えれば増えるだけ危険も増すように思えたからだ。

シキの答えは明瞭だった。
以前、自らの助手と結託してアキラを外へ連れ出そうとした男がいたのだ、と。
きっとその男が以前のアキラの担当医だったのだろうということは容易に想像がついて、リンは押し黙るしかなかった。
研究室の中で2トップの二人は互いのスタイルに対し何かと反目しあっているのは割合有名な話だった。
だからこそシキはあえて二人同時にアキラの担当医に指名し、互いに互いの監視をさせているのだ。
また緊急時以外は二人同時でなければアキラの部屋へは立ち入れないことにもなっていた。

この男達の名を成田と望月といって、なんとも印象深い二人だったのでリンはすぐに名前を覚えてしまった。

成田の年齢はおそらく40代ほどでダークブラウンの短髪に柔和な笑顔が特徴の中肉中背、望月は成田より若く20代の半ば頃、長めの黒髪と酷薄な口元に皮肉ばかりを乗せるひょろっとした痩せた男だ。
白衣もいつも糊のきいたぱりっとしたものを着ている成田に対し、望月はいつ洗っているのか分からないようなくたびれた白衣に両手を突っ込んで歩いているところが城のあちこちで見られた。
二人とも研究員の中ではずば抜けて優秀で、他の追随を許さない。
もともとが優秀な人材ばかりの研究室内でその二人の能力は一種異様ともいえた。
Nicoleの研究をそれぞれに進め、定期的にシキに報告する。
この二人の研究成果によって明らかになった事柄も多く、適合率に関してのデータの採取なども積極的に行われていた。
シキの血を採取することが許されているのもまたこの二人だけであり、研究員の中では格別の報酬と権限を与えられている。



アキラが眠りについてから徐々にその体から延びるチューブが増えていく。
それがたまらなく嫌なのに、それを引き抜く勇気もなく、リンはいつものように午後のひと時をアキラのそばで過ごしていた。
規則正しい呼吸は乱れることなく、わずかなその胸の上下運動を見てまだ大丈夫だ、と。
そんな確認しか、リンにはできないのだった。
針が刺さるせいでアキラの手の甲や腕には針の跡がいくつも残っているのが痛々しい。

ガラガラと医療器具の乗ったワゴンを押しながら例の成田と望月が入ってきた。

「…そろそろ今の針の位置も変えなきゃいけませんね」

そういったのは成田だった。
リンはきゅっと唇を引き結んで腰掛けていた椅子から邪魔にならぬように立ち上がる。
成田は一度リンに礼をとってからアキラの上掛けを軽く捲る。
二人はてきぱきとアキラの点滴を取替え、いつものように状態をチェックしていった。
さらさらとカルテに書き込みをしながら望月が"いつまでここにおいておくつもりです?"と素っ気なくリンに聞く。

「…何の話だ」
「もちろん眠り姫の話ですよ」

望月が口の端だけで笑う。
形だけの敬語には、もちろん敬意は含まれていない。

"いつまでここに?"

その言葉にはいろんな意味があるように思えてリンは逡巡する。

"シキがいないこの城にいつまでこうして寝かせておくのか”

リンはそう問われている気がした。
この二人はシキについての現況は知らされていないのだから、深読みのしすぎかもしれない、とその可能性を打ち消しながらも妙に気にかかって仕方がなかった。

「…いつまででもシキ様が望まれる限り」
「あぁ、そう意味ではなく。………そろそろ"下"へお連れする許可がいただきたいんですが」

下、とは地下にある研究室を指している。
シキも月に一度程度は血液の採取と検査に降りていっていた。
アキラも自身への輸血用としての血液確保に定期的に採血へそこへ行かねばならなかった。
もともと血の薄いアキラは採血の後は日がな一日ぐったりと過ごすことが多かったし、なにより薬品の匂いが嫌だと唇を尖らせていたことをリンは不意に思い出す。
その度にアキラはシキに嫌だ、と繰り返し訴えてはいたが、当然それに取り合われることはなく。
ただ、まるで宥めるようにシキがアキラと連れ立って研究室へ訪れることが多かったのだった。

「下の部屋へお連れして検査をしながら目覚めを待つというのが最善かと思いますが」

機具もすべて揃ってますし、と望月は言葉をつむぐ。
そこで初めて成田がふ、と顔を上げた。

「私はここで経過を見るのがよろしいかと思います」
「…理由は?」
「何よりもアキラ様の安全を第一に考えるべきでしょう」

穏やかな声で語る成田は確かに望月の言葉を否定していた。
丁寧に上掛けをなおし、ベッドを整える。

「精査も済んでおりますし、研究所の方が人の出入りは多いですから、このままここでアキラ様の状態を見守るべきだと思います」
「俺は自分で検査したいだけだ」

望月の言葉に成田が表情を変えぬままカルテを小脇に手挟む。

「…私の検査項目に何か不満でも?大体あなたはその期間に休暇をとっていたんでしょう」
「あいにく他人は信用しないようにしているもんで。あんたは自分が一番正しいって顔してるが、年食ってるんだからあんまり自分の頭を過信するのはどうかと思うがな」
「私よりも経験の少ない貴方に言われたくありませんね」
「年取ってるだけで優劣つけようとするのは愚かな人間の愚かしい最たるところだ」

放っておけば延々と続きそうな言葉の応酬にリンが制止をかける。

「言い分は分かった。とりあえず考慮はしておくが、成田の言うとおりとりあえずは警護の点も鑑みてしばらくは下へは移さない。城内の警備の枠も見直さなくてはならないから、その際にうまく人員が割けるようには調整しておこう」

リンが若干うんざりしながら返答すれば望月は軽く肩をすくめ、成田は再び綺麗に一礼をとって退室していった。
10以上歳が離れているのによくああしてやりあえるものだ、とリンは苦笑した。
笑ったのは酷く久しぶりな気がして、違和感の残る口角を指先で触る。

部屋を見渡しても生活感のない部屋にはアキラの面影なんてどこにもなくて、ベッドの上で静かに眠るアキラの存在感までも霞ませているような気がしてならなかった。
ベッド脇のチェストには引き出しいっぱいの真っ赤な折鶴が詰まっているはずだった。
細い指先に祈りをこめて、アキラは一体何羽折ったのだろう。
それを思うとどうにもやりきれなくてリンは凝った想いまでも吐き出すように深呼吸した。
ふ、と腕時計を見て仕事に戻らなくては、とアキラの額に口付けてからリンもまたこの部屋を去っていった。






夜更けにこつこつ、と控えめに靴音を響かせながらアキラの部屋の前に男が現れた。

「はいはい、どうも夜中までお疲れ様」

ひらり、と白衣をなびかせてやってきたのは…望月だった。
扉を見張る二人の男にひらひらと手を振って敬礼をやめさせれば音もなく扉が開かれ、望月は当然のように中に足を踏み入れた。
入っていったのは…彼一人だけ。

「眠り姫を起こすのなんて簡単なコト…王子様のキスがなくたってお姫様は起きれるのにね」

にやりと音もなく笑うと望月は白衣のポケットからケースに入った注射器を一本取り出した。
点滴の薬液を一時的に止めて留置針からチューブを取り外すと、チューブの代わりに注射器を宛がった。
たっぷりと時間をかけてごく少量の液体をアキラの体内へ送り込んでいく。
注射針の跡を残すと後々面倒になりそうであえてこの方法を望月は選んでいたのだが、どうにも時間がかかるのはいただけなかった。

望月が注射をしてすぐにその変化は起こった。
ぴくり、とアキラの体が震え、一時的に心拍数が上がる。
青白い体にさっと刷毛で掃いたように朱が灯り、苦しげに眉がしかめられていく。
ただそんなことには目もくれず望月は注射を終えるとそれ以前のように再び点滴のチューブを繋ぎ点滴を再開した。
しばらくすればふ、と表情が緩み元のようにアキラは眠るお人形へと戻ると彼は知っていた。
そのアキラの額の汗をガーゼでふき取り髪の乱れをなおすと望月は注射器をケースへしまい、ポケットへ滑り込ませる。

「リン隊長はまだ仕事中で執務室。シキ様は…どこにいるか知ってますか?お姫様?」

面白がるようにその耳元で囁くと望月は来たときと同じように何食わぬ顔で部屋を出て、回廊の先の闇へと身を消した。


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