1500番のキリリク小説、「ED3:過剰にアキラを甘やかすシキ」でした。
スズカ様のみお持ちかえり可となっております。
書いていて、ぜんぜん"過剰に"甘やかしている風にならなくてあせりました…。
それは…たぶんうちのシキが基本アキラにこの上なく甘いから…!(いまさら)
過剰に、を出せるようにアキラにおねだりさせてみました。
そしてかなえてあげるシキ様。
すこしはリクエストに近づけましたでしょうか…。
個人的には苺を食べるシーンが見せ場かと!ここ書いてる時が一番楽しかったです。
スズカ様、リクエストありがとうございました!
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*STRAWBERRY KISSES*
シキがお昼を過ぎても部屋にいるなんて珍しい、と思ってた。
でも嬉しいからそんなこと気にもせずに俺は上機嫌でシキに体を預けて、取り留めもなく話して。
だから、部屋に昼食が運ばれてきたときに正直「あぁ…」とシキの意図が見えて少しだけ悲しくなった。
サイドテーブルには一人分のサンドイッチとスープとサラダがきれいに並べられて、食べられるのを待っている。
一人分。
シキは俺が食べるまで許してはくれなさそう。
スープの匂いは普通ならば食欲を刺激するのだろうけど、俺はあんまりお腹はすいてない。
「アキラ」
シキが俺の名前を呼んで食べるようにと促しているのがわかる。
「いらない」
「…アキラ」
もう一度呼ばれて俺は仕方ないって顔をして食卓につく。
シキ怒ると怖いもんね。
「…シキも食べるなら食べる」
シキがため息をついて、いいだろう、って。
だから給仕の人があわててシキの分をとりに行った。
シキと一緒にご飯たべることってあんまりない。
だからシキが食べるのを見たこともあんまりない。
二人分の食事が並ぶとシキが今度こそ俺のほうをじっとみるから、手を伸ばしてサンドイッチを少し齧る。
新鮮な野菜だって、卵だって、貴重なものなのにここではそんなこと嘘みたいに普通に出てくる。
それがすごいなと思う。
シキがここの支配者なんだから当たり前なのかもしれないけど。
シキは時々フォークでサラダをつついて、口に放りこんでる。
サンドイッチを1つ食べて、スープを飲んだらおしまい。
俺にしてはこれでもよく頑張ったほうだよね。
シキと一緒だと食べれそうな気もしてくるし、食べなきゃいけないんだろうなって思うし。
「もう終わりか?」
シキの方眉が少しだけ上がって不満、って顔。
俺はただ頷いて、スプーンを置く。
「せめてもう一つ食べろ」
差し出されたのはサンドイッチ。
レタスとハムの。
「もうお腹いっぱいだよ」
「違うな、お前は満腹なんじゃなくて食べるのが面倒なだけだ」
あぁ、あたってるかも。
「アキラ、俺は吐くほど食えとは言わない」
「…シキと一緒ならちゃんと食べるよ」
「毎日か?」
シキが忙しいのなんてわかってるんだ。
すごく、忙しいのなんて…わかってるんだ。
「…やっぱりいい」
結局、俺はシキからサンドイッチを受け取って大人しく齧る。
シキは何かを考えてるみたいだったけど、その間にシキの皿はどんどん空になっていってた。
静かな食卓。
「シキ、もう無理だよ…はいんない」
ほんというと、お腹がいっぱいなわけじゃなかった。
ただもう食べるのが疲れちゃっただけ。
椅子を降りて向かいのシキの膝に上る。
やっぱりシキは何も言わずに俺の好きにさせてくれる。
最近ではベッド以外の俺の指定席はシキの膝の上に決定しつつある。
だって、そこにいればシキはいつも頭を撫でてくれる。
「夕食ならいいだろう」
頭を撫でられていた手がぴたりと止まる。
「…?」
何の話かわからなくて、シキを見上げる。
「夕食なら一緒に摂ってやれるが」
「…ほんと?」
俺の言ったこと、考えててくれたの?
「もちろん毎日というわけにはいかないがな」
「うん…それでいい…それがいい。…俺、きちんと食べるよ」
シキはそうか、と言ってまた撫でてくれた。
嬉しいのと、心地いいのとで、ふわふわと意識を漂わせながらシキの胸に頭を預ける。
嬉しい。
嬉しい。
シキが、俺のために時間を作ってくれた。
食器を提げに来た給仕はいつもは俺のこと見つめてくるくせにシキがいるから俺のほうなんて見向きもしない。
それだって気にもなりはしない。
「本日のデザートはアキラ様のお好きな苺が手に入りましたので生のままでお持ちしました」
きらきらした赤い果実をのせた白い皿と練乳を残して給仕は去っていく。
「どうした、好物なのだろう?」
うん、苺は好き。だけど今は食べる気分じゃない。
シキの傍にいる、それだけでほかの事はどうでもいい。
「アキラ」
呼ばれて顔を上げれば目の前にシキの顔。
「食べろ」
「じゃぁ…食べさせて?」
シキに向かってあーんって小さく口を開ける。
シキはそんなことしてくれないだろうって思ったけどやってみた。
「なんだ、甘えたいのか?」
シキが親指で俺の唇を撫でて、すごく愉快そうに笑う。
本当に楽しそうで…珍しい。
「…そうだよ」
甘えたっていいでしょ?
いつもはこんなに長く一緒にいてくれないんだ。
朝起きたらいつもいない。
俺がどんな気持ちになるかなんて、知らないくせに。
頑張ってご飯も食べた。
それに今、すごく甘えたい気分なんだ。
だから、甘えさせてよ。
「…ほら」
シキが苺を俺の口元に持ってきてくれる。
その赤い果実に口付けて先端をかし、と齧る。
溢れてくる果汁が少しだけ俺の意識を冴えさせて、その甘さですぐに溶かす。
シキの指ごと口に含んで舐める。
苺の味。
「ぁ…」
優しく指が抜かれて、俺は息と一緒に小さく声を漏らした。
今度は少しだけ練乳のかかったそれを差し出されて、俺はまたシキの指ごと銜える。
柔らかく甘い果実を味わいながら俺は目を伏せた。
上手く飲み込めなかった果汁が口から滴ってシャツをピンクに染める。
ゆっくり飲み込んで、シキを見つめれば、苺よりももっと赤い瞳が近づいてくる。
ふさがれた唇をとおして送られてくる荒く噛み砕かれた果肉。
いつの間に、シキは苺を食べたんだろう。
ひどく、甘い。
「…もっと」
「そんな物欲しげな顔をせずともいくらでもやる。存分に味わえ」
「ん…ぁん」
シキに抱きついて、もっともっとってねだる。
体を密着させれば体温で暖められたせいかシャツの果汁がひときわ香る。
俺は本当にお腹がいっぱいなるまでシキに苺をねだった。
シキは最後まで俺に与えてくれた。
苺と、キスを。
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