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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
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ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
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*afterglow-10*


諜報員を何度も送り込み、やがてシキと思しき男の情報がぽつぽつと入り始めた。
シキ本人と確認できたようではなかったが、どうやらロシア軍の小隊を率いている男らしい。
顔も良く見えず、ただ背丈と、髪の色、そしてサーベル(日本刀ではなかったらしい)の扱い方から"どうやら"そうではないか、という、ただそれだけの情報だった。
なぜ敵の部隊にいるのか、また本当にその男がシキなのかだとか謎は絶えず、罠ではないかとの意見もあったがなりふり構っていられなかったというのも事実だった。
それしか、シキへの手がかりは無かったのだ。

一方でアキラは目覚めることもなく昏々と眠り続けていた。
リンは、ただあのときにアキラは純粋に眠りについたのだと思っていた。
だが、いくら経ってもアキラの瞼は閉じたままで、そしてその声で"リン"と呼ぶことも"シキ"と呼ぶこともなくなってしまったのだ。
アキラが眠りに着いたのは奇しくも、シキの情報が入り始めるほんのわずか前のことだった。
後もう少しそれが早ければアキラがこうなることは無かったのではないかとリンは何度も仮定を繰り返す。
それがどんなに無駄な事かなど分かっていた。

アキラを診た医者や研究者はアキラの体に異常はないと、言った。
ただ、相変わらず非Nicoleの適合率が少しずつ上昇しているということだけで。
彼らは本当にアキラが"眠っている"のだと言った。
データが示すことはたったそれだけだった。

「アキラ…」

リンは搾り出すようにその名を呼んでそっとその額の髪を払う。
少しずつ、少しずつ、アキラの命が零れ落ちていくようだった。
シキを待っているときの方がよっぽど良かった。
あの時はまだアキラは、リンのことを見ていて、そしてシキの話をしていた。
今はそれもなく。

日を追うごとにその肌から体温が消えていくようで。
死んでいるのではないかと疑ってしまうほど、アキラはただ静かに眠り続けていた。
毎日寝る間を惜しみリンはシキの行方を追い続け、そしてアキラの部屋へと通った。
最後にアキラが言った言葉が何度も頭を駆け巡る。

(からっぽのおと…)

一体その言葉が何を意味するのか、リンには考えても分かりはしなかったけれど。
あの悲しそうで、そして安心したような瞬間の顔が脳裏にこびりついてはなれない。
シキがいるときの心底幸せそうな顔や、シキにおいていかれて、一人で窓の外を見つめる顔も決してリンには向けられることの無いものだった。
それが悔しくて、でも、もう努力ではどうしようもないことだということも良く分かっていて。
だから、ずっとアキラの傍で。
そう、思っていたのだ。


(こんな形で傍にいることを…望んだんじゃない…)


城内、特に、主にシキが一切を束ねていた軍部は長い主の不在に少しずつ歪みを大きくしていった。
もともと実力主義で集められた兵達だが、それでもそれぞれがシキの圧倒的な存在感、そのカリスマ性に追随してもいたのだ。
よく統括され、機能していた。
しかし一方でラインを投与され、戦う場所を与えられる、そのことに喜びを見出すものも少なからずいた。
それらの兵にとっては絶対的な力を持ったシキがいない、ということは戦いの場が与えられない、ということと同義であった。
また絶対的指導者の不在というものはそれだけで組織立った軍を乱していくものだ。
シキが消息が不明になったということはまだ一部の者しか知らない事実ではあるが、やはりこの状態をおかしいと感じる者もいれば、これを機に城を占拠しよう、または城主の愛妾を奪おうとする輩も出てくるに違いなかった。
最悪シキが見つからなかった場合はラインが底をつくことになるだろう。
原液となるシキの血液はまだ余分にあるが、その場合はそれこそ争いが勃発するのは目に見えて明らかだった。

「アキラ…はやく起きて…目をあけてよ」

名前を呼んで、微笑んで。
これならいっそ、"シキ"のままでいればよかった…と思う日もある。
"シキ"のままなら…。

「もう、俺を見てなんて…思わないから」

………リンの願いは、届かない。
アキラの瞼は相変わらず下りたままで、長い睫は頬に影を作るばかりだった。

 

 

 

リンは硬い軍服の布地を強く握り締めた。
…シキを捜索に出た部隊が次々と消息を絶つ。

「なぜ…」

おかしい、とシキに与えられた執務室でリンは頭を抱えた。
何かがおかしい。
目に見えない、何かが確実に動いているのを感じる。
ただ、その"何か"が何なのか見当もつかなくて。
光の届かないところで蠢く闇が、リンの知らぬ間に一層と濃さをましていっているような気がしてならなかった。



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