*momentary happiness*
すごくすごく久しぶりに夜中に目が覚めた。
薄いカーテンの向こうにぼんやり月が見えて、俺はまだ朝になっていないことを知る。
夜明けにはまだ遠い。
背中越しに、シキの気配。
耳を澄ますと息を吐き出す音だけが規則正しく聞こえる。
そうだ昨日はシキに抱かれて、それから…そのまま寝ちゃったんだっけ。
体…綺麗になってる。
シキが拭いてくれたのかな…?
それならなんで途中で目が覚めたんだろう。
抱かれた次の日は大体、昼まで眠ってるのに。
俺はそっと寝返りを打ってシキの寝顔を見る。
長い睫。
さらさらの黒い髪。
上半身は裸のまま俺のほうを向いて寝てる。
綺麗なシキ。
俺と一緒に被ったシーツから少し見える腕も胸も腹も俺とは違ってちゃんと筋肉がついてる。
引き締まった、体。
俺は筋肉なんて無くなっちゃった。
前はもうちょっとついてた気がするけど…どうだろう。
昔からシキは俺のこといつも軟弱、とか脆弱な体っていってたし。
シキが隣に寝てくれるの、すごく好き。
トシマにいたときはこんなこと絶対なかった。
今だってシキは俺より後に寝て俺より先に起きる。
だから寝顔なんて見れないけど。
目が覚めたらいないことなんてしょっちゅうだけど。
でもトシマのあの部屋と違ってシキはいつもこのベッドで眠る。
広い広いベッド。
俺が隣にいることを許してくれる。
それを考えると…とても幸せになる。
シキのその頬に手を伸ばそうとして止めた。
あんまり動くとシキは起きちゃいそう。
もったいないものね。
ねぇ、シキ。
もうちょっと見ていてもいいでしょ?
そう…月が沈むまで。
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あとがきは続きから~。