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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
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*afterglow-08*

シキが死んだ可能性もある、と報告をしにきた男をアキラが殺せ、といった。
こんなところで報告を受けなければよかったと思うも、それはもはや過ぎたことで。
緊急の知らせに気が急いたのがいけなかったのだ、とリンは奥歯をかみ締めた。
絨毯の上に音もなく落ちたひしゃげた鶴が踏まれる。
よれた翼がとても惨めだった。
そのままアキラはリンの傍をすり抜けてその男のもとへと近寄った。
王の愛妾と影で言われているアキラに言い寄られ、以前は多くの兵が城の主によって死を賜った。
彼もそれを思い出していたのだろうか、報告をしに来ただけの男は体を強張らせてアキラの様子を伺っている。
シキのものとされるアキラにむやみに手をあげることはもちろんできず、かといって報告途中のこの場から退出することもできず。

「シキが死んだって…本当にそう思ってるの?」
「いえ…その…あの可能性の…話、ですから…実際にそうだと決まったわけでは…」

リン相手にだと実に明瞭簡潔に話すこの男もアキラ相手となればこの有様だった。
脳髄が甘くしびれるような、芳しい香気を男は確かに感じていた。
己の中に宿る、その血がざわりと蠢いたような気すらして。
この感覚を城主とそして目の前にいる情人がより強く感じているのなら惹かれあい、あれほどまでに互いに執着する理由がわかる気がした。
王の愛妾に手を出して死んでいったかつての同僚たち。
顔すらおぼろげだが、死ぬとわかっていて手を出すなんて、なんて愚かなのだと、そう思っていた己が確かに今、彼らと同じように揺らいでいるのがわかった。
彼らもきっと同じだったのだろう。
そしてきっと、より強く、ラインに依存していればしているほど、この香気は強く香ってくるに違いない。
目の前にいる上司はラインを服用していない数少ない例外だからこの香りには気がつかないのだろう。
この状況から逃れるためには黙って目を合わせず、ただ立っているのが一番よいのだと、男はわかっていた。
下手に動けば何をしてしまうか、わからなかった。

「ふぅん…そうなんだ」

するり、と男の腰をアキラの指先がなでる。
男はいまだ硬直したまま動かず、リンもまたどうしたものかと眉を寄せていた。
そしてアキラがごくごく自然な動作で男の腰から短剣を抜き取った。

「ねぇ…シキの血を体の中に入れてるってどんな感じ?…キモチイイ?」
「いえ…っそん、な」

きらり、と光を反射してナイフがきらめく。
鞘から出された刃をアキラはうっとりと眺めた。

「ねぇ…シキがいなくなるってことは、ラインがなくなっちゃうって事なんだよ…?俺の血からNicoleは取り出せないんだから」

おもむろにアキラはその鋭い切っ先を指先で滑らせた。
一瞬の後、その指先からは瞬く間に紅玉が盛り上がり、そうしてぱた、ぱた、と音を立てて磨き上げられた大理石の上へと落ちていく。

「これ…舐めてもいいよ?」
「アキラ…さまっ」

抗うように首を振る男に、ほら、とアキラが男のほうへ手を伸ばす。
相変わらず零れ落ちる鮮血が男のシャツの襟元を汚した。
どこか惹かれるような瞳で男の視線がアキラの指先を追う。
僅かでもNicoleをその身に宿すものは非Nicoleに惹かれる運命なのだ。
それを認めるとアキラはにっこりと笑い、どうしたの?と男の頬をなでた。
緋色の痕跡が男の肌に残る。
それは鮮やか過ぎるほどに赤く。
アキラの指先が男の唇にかかる。

「俺の血も…シキのみたいに甘い匂いするの?」

"あげようか?"とアキラはにこりと笑んだ。
けれどその笑顔は虚ろなものだと、リンにはわかった。

そして顔に笑みを貼り付けたまま細い切っ先をアキラが己の首筋に向けた刹那、リンはアキラの手からナイフを叩き落し、その体をぐっと己のほうへと引き寄せた。
細い体はいとも簡単に傾いで、すっぽりとリンの腕の中に納まる。
リンが遠くへ蹴やったナイフが壁に当たって澄んだ音を立ててからはっとしたように男は体の緊張を解いた。
あまりの出来事に男は目を見開くばかりで混乱しているさまがありありと伝わってくる。

「……」

一方、どこかぼんやりとした瞳でアキラはリンを見上げるとその赤く輝く指先を舌でちろりと舐めた。
扇情的なその表情もどこか歪んで見えて、リンは僅かに顔をしかめる。
視線が、交錯する。

「ふふ…っあはははは…っ…はは」

突発的な発作のように笑い出したアキラはリンの腕を押しのけた。
そこまで強い拘束をしていなかったことと、やはりどうしてもアキラの好きにさせてしまうリンは払われた手にかまうことなく、アキラをただじっと見つめた。

…以前シキの留守中にふとしたことでアキラが怪我をしてしまったことがあった。
そのときアキラが"血が出なくてよかった"と、安堵したのをリンはよく覚えている。
"俺を傷つけていいのはシキだけだから"と他ならぬアキラ自身がリンにそういったのだ。
それなのに指先だけとはいえアキラは自らを傷つけた。
それがなによりリンは信じられなかった。
そして、自分の首筋にもまた同じように刃を宛がった。
本気だったのかどうかは分からなかった。
ただ…以前までのアキラならこんなことしなかったはずだった。


リンの目の前ではアキラがくすくすと笑い続けている。
アキラが確実に、狂気へと足を進め始めたのは明らかだった。
それなのに、リンにはどうやってそれを止めたらいいのか、まるでわからなかった。
どうしたらいいのか、方法ひとつ見出せない。

「アキラ…!?」

ふ、と笑い声がやむのと同時に、目の前でアキラの体が前のめりに崩れ落ちていった。
その細すぎる体を助けおこしながらも、きっとアキラの狂気は止められない、とリンは頭のどこかで確信…していた。

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あとがきはつづきから

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