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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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ぱちぱち

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HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
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今日一日、時間があったので書き溜めたメモを片手にうんうん唸ってみました。
待っていてくださった方、拍手してくださった方、メッセージを下さった方、本当にありがとうございます。

********************************

*afterglow-11*

アキラの担当医は二人いる。
医師としてはもちろんだが、この二人は城内の地下にある研究所の研究員でもある。
医学者、という言葉の方が近いかもしれない。
アキラは部屋からほとんど出ないため、怪我をすることも風邪をひくこともほとんどなく、仕事といえば定期的に検診を行い、その健康に異常がないかを検査する役割を担っているだけだった。
とはいえその判断を誤り、もし万が一のことがアキラにあれば首が飛ぶことは確実だった。
職を失うという意味ではもちろんなく、事実上胴体と頭が切り離されるだろう。
…シキの手によって。

この二人がアキラを担当しているのはリンが来る以前から、と聞いて、なぜ二人なのか、とリンはシキに尋ねたことがあった。
最高機密であるアキラの状態を把握する人数が増えれば増えるだけ危険も増すように思えたからだ。

シキの答えは明瞭だった。
以前、自らの助手と結託してアキラを外へ連れ出そうとした男がいたのだ、と。
きっとその男が以前のアキラの担当医だったのだろうということは容易に想像がついて、リンは押し黙るしかなかった。
研究室の中で2トップの二人は互いのスタイルに対し何かと反目しあっているのは割合有名な話だった。
だからこそシキはあえて二人同時にアキラの担当医に指名し、互いに互いの監視をさせているのだ。
また緊急時以外は二人同時でなければアキラの部屋へは立ち入れないことにもなっていた。

この男達の名を成田と望月といって、なんとも印象深い二人だったのでリンはすぐに名前を覚えてしまった。

成田の年齢はおそらく40代ほどでダークブラウンの短髪に柔和な笑顔が特徴の中肉中背、望月は成田より若く20代の半ば頃、長めの黒髪と酷薄な口元に皮肉ばかりを乗せるひょろっとした痩せた男だ。
白衣もいつも糊のきいたぱりっとしたものを着ている成田に対し、望月はいつ洗っているのか分からないようなくたびれた白衣に両手を突っ込んで歩いているところが城のあちこちで見られた。
二人とも研究員の中ではずば抜けて優秀で、他の追随を許さない。
もともとが優秀な人材ばかりの研究室内でその二人の能力は一種異様ともいえた。
Nicoleの研究をそれぞれに進め、定期的にシキに報告する。
この二人の研究成果によって明らかになった事柄も多く、適合率に関してのデータの採取なども積極的に行われていた。
シキの血を採取することが許されているのもまたこの二人だけであり、研究員の中では格別の報酬と権限を与えられている。



アキラが眠りについてから徐々にその体から延びるチューブが増えていく。
それがたまらなく嫌なのに、それを引き抜く勇気もなく、リンはいつものように午後のひと時をアキラのそばで過ごしていた。
規則正しい呼吸は乱れることなく、わずかなその胸の上下運動を見てまだ大丈夫だ、と。
そんな確認しか、リンにはできないのだった。
針が刺さるせいでアキラの手の甲や腕には針の跡がいくつも残っているのが痛々しい。

ガラガラと医療器具の乗ったワゴンを押しながら例の成田と望月が入ってきた。

「…そろそろ今の針の位置も変えなきゃいけませんね」

そういったのは成田だった。
リンはきゅっと唇を引き結んで腰掛けていた椅子から邪魔にならぬように立ち上がる。
成田は一度リンに礼をとってからアキラの上掛けを軽く捲る。
二人はてきぱきとアキラの点滴を取替え、いつものように状態をチェックしていった。
さらさらとカルテに書き込みをしながら望月が"いつまでここにおいておくつもりです?"と素っ気なくリンに聞く。

「…何の話だ」
「もちろん眠り姫の話ですよ」

望月が口の端だけで笑う。
形だけの敬語には、もちろん敬意は含まれていない。

"いつまでここに?"

その言葉にはいろんな意味があるように思えてリンは逡巡する。

"シキがいないこの城にいつまでこうして寝かせておくのか”

リンはそう問われている気がした。
この二人はシキについての現況は知らされていないのだから、深読みのしすぎかもしれない、とその可能性を打ち消しながらも妙に気にかかって仕方がなかった。

「…いつまででもシキ様が望まれる限り」
「あぁ、そう意味ではなく。………そろそろ"下"へお連れする許可がいただきたいんですが」

下、とは地下にある研究室を指している。
シキも月に一度程度は血液の採取と検査に降りていっていた。
アキラも自身への輸血用としての血液確保に定期的に採血へそこへ行かねばならなかった。
もともと血の薄いアキラは採血の後は日がな一日ぐったりと過ごすことが多かったし、なにより薬品の匂いが嫌だと唇を尖らせていたことをリンは不意に思い出す。
その度にアキラはシキに嫌だ、と繰り返し訴えてはいたが、当然それに取り合われることはなく。
ただ、まるで宥めるようにシキがアキラと連れ立って研究室へ訪れることが多かったのだった。

「下の部屋へお連れして検査をしながら目覚めを待つというのが最善かと思いますが」

機具もすべて揃ってますし、と望月は言葉をつむぐ。
そこで初めて成田がふ、と顔を上げた。

「私はここで経過を見るのがよろしいかと思います」
「…理由は?」
「何よりもアキラ様の安全を第一に考えるべきでしょう」

穏やかな声で語る成田は確かに望月の言葉を否定していた。
丁寧に上掛けをなおし、ベッドを整える。

「精査も済んでおりますし、研究所の方が人の出入りは多いですから、このままここでアキラ様の状態を見守るべきだと思います」
「俺は自分で検査したいだけだ」

望月の言葉に成田が表情を変えぬままカルテを小脇に手挟む。

「…私の検査項目に何か不満でも?大体あなたはその期間に休暇をとっていたんでしょう」
「あいにく他人は信用しないようにしているもんで。あんたは自分が一番正しいって顔してるが、年食ってるんだからあんまり自分の頭を過信するのはどうかと思うがな」
「私よりも経験の少ない貴方に言われたくありませんね」
「年取ってるだけで優劣つけようとするのは愚かな人間の愚かしい最たるところだ」

放っておけば延々と続きそうな言葉の応酬にリンが制止をかける。

「言い分は分かった。とりあえず考慮はしておくが、成田の言うとおりとりあえずは警護の点も鑑みてしばらくは下へは移さない。城内の警備の枠も見直さなくてはならないから、その際にうまく人員が割けるようには調整しておこう」

リンが若干うんざりしながら返答すれば望月は軽く肩をすくめ、成田は再び綺麗に一礼をとって退室していった。
10以上歳が離れているのによくああしてやりあえるものだ、とリンは苦笑した。
笑ったのは酷く久しぶりな気がして、違和感の残る口角を指先で触る。

部屋を見渡しても生活感のない部屋にはアキラの面影なんてどこにもなくて、ベッドの上で静かに眠るアキラの存在感までも霞ませているような気がしてならなかった。
ベッド脇のチェストには引き出しいっぱいの真っ赤な折鶴が詰まっているはずだった。
細い指先に祈りをこめて、アキラは一体何羽折ったのだろう。
それを思うとどうにもやりきれなくてリンは凝った想いまでも吐き出すように深呼吸した。
ふ、と腕時計を見て仕事に戻らなくては、とアキラの額に口付けてからリンもまたこの部屋を去っていった。






夜更けにこつこつ、と控えめに靴音を響かせながらアキラの部屋の前に男が現れた。

「はいはい、どうも夜中までお疲れ様」

ひらり、と白衣をなびかせてやってきたのは…望月だった。
扉を見張る二人の男にひらひらと手を振って敬礼をやめさせれば音もなく扉が開かれ、望月は当然のように中に足を踏み入れた。
入っていったのは…彼一人だけ。

「眠り姫を起こすのなんて簡単なコト…王子様のキスがなくたってお姫様は起きれるのにね」

にやりと音もなく笑うと望月は白衣のポケットからケースに入った注射器を一本取り出した。
点滴の薬液を一時的に止めて留置針からチューブを取り外すと、チューブの代わりに注射器を宛がった。
たっぷりと時間をかけてごく少量の液体をアキラの体内へ送り込んでいく。
注射針の跡を残すと後々面倒になりそうであえてこの方法を望月は選んでいたのだが、どうにも時間がかかるのはいただけなかった。

望月が注射をしてすぐにその変化は起こった。
ぴくり、とアキラの体が震え、一時的に心拍数が上がる。
青白い体にさっと刷毛で掃いたように朱が灯り、苦しげに眉がしかめられていく。
ただそんなことには目もくれず望月は注射を終えるとそれ以前のように再び点滴のチューブを繋ぎ点滴を再開した。
しばらくすればふ、と表情が緩み元のようにアキラは眠るお人形へと戻ると彼は知っていた。
そのアキラの額の汗をガーゼでふき取り髪の乱れをなおすと望月は注射器をケースへしまい、ポケットへ滑り込ませる。

「リン隊長はまだ仕事中で執務室。シキ様は…どこにいるか知ってますか?お姫様?」

面白がるようにその耳元で囁くと望月は来たときと同じように何食わぬ顔で部屋を出て、回廊の先の闇へと身を消した。


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