CUREはこれにておしまいです。
02のアキラの視点とその後がちょこっと。
昨晩02に追記できなかったので03のあとがきにまとめて書いてます。すみませ…!
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*CURE-03*
俺を呼ぶ声がする。
おいでおいで、って手招きするみたいに俺を呼び寄せる。
そちらにいきたいのに足は俺の言うとおりにはまったく動かなくて、ぽつんと暗い中、俺は立ち尽くす。
シキはどこ?
そのときピカッと一瞬だけ辺りが明るくなって、青い布地が見えた。
それに、赤い、血。
白いシャツと腰で結んだ袖。
ツナギ。
見たことのある、その服。
記憶のそこから這い上がってくるのが誰なのか、俺は知ってる。
そう、知っている。
「ケイスケ…」
どうして忘れていたんだろう。
なんで、忘れられたのだろう。
俺は、忘れたかったのかな?
だから、シキに支配されることで忘れようとした?
「アキラァ、ここはさぁ、寒いんだ。お前が俺のこと置き去りにしたせいでずっと寒いままだ。雨は冷たいなァ?」
時折ひらめく閃光のおかげで口元は見えた。
にやり、と口の端を上げて、笑ってる。
目は、見えない。
だから、その瞳が濁ってるかどうかなんてわからないし、もしそうだとしても関係なかった。
ただ、俺の中からなにかが抜け落ちていく感じがした。
すとん、と服を脱いだときみたいに。
体が軽くなって、思考がクリアになって、はっきりとものが考えられる。
「…」
口を開いて、息を漏らして、結局何も言えずに口を閉じる。
なんといったらいいというのか?
すべては真実だ。
俺がケイスケを置いていったことは事実だ。
あの雨の日に、あの場を離れたのがたとえあいつ―シキ―に連れ去られたせいだとしても、あのとき俺は抵抗しなかったから。
「アキラァ、迎えに来てくれよ。俺、ずぅーっとお前のこと待ってるんだぜ?」
なぁ、と首筋をケイスケの指先がたどる。力をわずかにこめられて息が詰まる。
相変わらず足は動かないし、言葉は出てこない。
またぴかり、と明るくなってそうして視界が白一色に染まる。
ふわふわした意識はそれでも主の声は聞き分ける。
「…アキラ」
シキの声が聞こえて、ゆっくり目を開ける。
冷たいシキの指がさらさらと俺の髪を梳いてる。
シキはバスローブを着てた。
黒の、バスローブ。
「…シキ…いつ帰ってきたの?」
いつ、この部屋に戻ってきたの?
いつ、お風呂に入ったの?
「…さっきだ。お前もよく寝ていられるものだな」
目じりをすっとなでられて微笑む。
「うん…頭、いたくて」
「もういいのか?」
ぜんぜん痛くないわけじゃない、けど。
何もする気がしないほどにはひどくもない…のかなぁ。
「よくわかんない。…けど起きれるからだいじょうぶ」
起こして、ってお願いするみたいに腕をシキに伸ばした。
シキは強い力で俺の腕を引っ張って、俺はその反動のままにシキに身を寄せる。
「キスして…」
噛み付くような、でも甘いキス。
好き。好き。好き。
「ふぁ…ん…んぅ…ふ…ぁ…」
気持ちいい。
とけちゃいそうで、シキの服をぎゅってつかむ。
「なんか、大事な夢…見た気がするけど…でもよく覚えてないんだ」
ぴかって光ってたのは覚えてるけど…それ以外はぼんやりしてる。
なんだったんだろ。
シキの胸に頭を預けたまま呟けば、撫でてくれてた手が一瞬止まる。
「……そうか。…お前にはそんなもの必要ないだろう?」
またシキが優しく俺のこと撫でてくれる。
それで、いい。
「うん…いらない」
いらないよ。
シキが俺のこと抱いてくれて、キスしてくれるなら。
何もいらない。
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あとがきは続きから。