アンケート結果を受けまして久々のグンアキですー。
アルビトロを書くのが異常に楽しいです。
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*その名前*
グンジがいつもどおり昼食を終えて、部屋に戻ろうとしたときだった。
キリヲにがしっと肩をつかまれて、長身ががくっとつんのめった。
「おい、ヒヨォ。ビトロが呼んでるぜ」
「あァ?」
なんだかんだといいながらも気だるくその仮初の主の部屋へと向かう。
実際、アルビトロに放り出されれば多少は困るのだ。
ベッドがなくなるしィ、とグンジはつぶやいた。
重厚な木材で作られた扉をためらいなくグンジは蹴り開けた。
「グンジ……っ、扉は手で開けるのだとお前は何回私に言わせたら気が済むのかね…っ?!」
「うるせーなァ、ちゃんときたんだからいいだろー」
ここまでならばいつものこと。
ただグンジのめぐらせた視線がある一点でぴたりととまる。
「え……」
いつもどおりのはずだった。
いつもどおり仕事を言い渡されて、文句を言いながらキリヲとまた街へと出て行くはずだった。
「……どうしたのだね?」
「………」
アルビトロの問いにもグンジは答えない。
ただじっと、カウと戯れる………アキラをみつめる。
グンジの視線の先に気づいたアルビトロがゆっくりとアキラの髪をなでた。
「あぁ……お前にはまだ見せていなかったな。これはカウのつがいとして私がセレクションした子なのだよ。名はアキラという。どうだ、可愛いだろう?」
どこかぽやっとした顔でアルビトロの動く指先を追っていた目がふ、とグンジに向けられる。
「っ……」
目深にかぶったピンクのフードのその下でグンジは瞠目した。
なんだ、これは。
これは………アキラじゃない。
感情が抜け落ちたかのような、顔。
ちがう、感情がないんじゃない。
…無垢すぎる。
あどけない表情は稚い子供の様ですらあった。
以前のアキラのようなどこか危うげな儚さなどどこにも見当たらない。
「……?」
そっとアキラが近づいてくる。
鼻先をグンジに向けてくんくんとにおいを確かめるように。
そっとグンジはかがんでアキラに目線を合わせる。
「……なァ」
「…なんでお前ここにいんの?」
言葉の意味がわからないのかただ不思議そうに首をかしげながらアキラがそっとグンジへと手を伸ばす。
その白い指先が己の鉤爪に触れたところであわててグンジは両手を引いた。
常ならば、処刑を行う彼が肩を揺らすほど動揺することなどめったにない。
「……危ないだろ」
そういってから、はた、とグンジは首をかしげる。
グンジは人の悲鳴もラインに汚れていない血の香りも大好きなはずなのに。
しかし今、確かにアキラの指先が傷つくことを…恐れたのだ。
(あれ…………?)
かすかに感じた違和感にグンジはぎゅっと眉を寄せた。
「おい、グンジ!……聞いているかね!?」
アルビトロの呼びかけにもこたえぬままグンジは己の手から鉤爪をはずして、素手でアキラの頭をくしゃりと撫でた。
「………アキラ…」
その胸に溢れる思いがいったい何なのかをグンジは…まだ知らない。
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あとがきは続きから~
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