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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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お礼SSを書かせていただいてます。
踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
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なんとかお礼更新できました。
夏っぽく夏っぽく、と思ったんですけどまったくそんなことにはなりませんでした…。
今回は「アキラに服を着せるシキ」というシーンが書きたくて書き始めたんですが…シキは意外と面倒見がよさそうというか甲斐甲斐しい気がしますね。
でもお城の中では季節なんてあんまり関係なさそうです。


こちらにひとつおろしておきますね。
食べるという仕草は妙に色気を感じることがありませんか?
え…私だけですか?(笑)


*************************

*アキラのお食事(ED3)*


シキの足元に座り込んだアキラはあーん、と口を開けてスプーンを迎えた。
バニラアイスがアキラの口の中ですぅととけていった。

シキの足にしなだれかかるようにしながらアキラはふふ、と笑った。

「おいしい」
「犬猫のようだな」
「…俺は犬?それとも猫?」
「さぁ…どうだかな」

くすぐるようにシキの指先がアキラの喉元をつぅっとなで上げる。

「シキ…もっと」

赤い舌がちろりとねだるように蠢いた。
シキは優雅に足を組み替えて銀色のスプーンにクリーム色のアイスを掬う。

「…お前は甘えるのばかりうまくなる」

舐めるようにアイスを食べてアキラは微笑んで問いかけた。

「…シキは甘えられるのきらい?」

シキはその問いに答えることなく再びアキラの口にスプーンを運んでやる。
傾けたスプーンから液体になったクリームがシキの指先を僅かに汚すとアキラはそれを舌先でゆっくりと舐めとった。
ちゅ、と口付けてようやく口を離す。

ぴくり、とシキが僅かにその片眉を跳ね上げる。

「シキ…ちょうだい」

両手を床におろしたままアキラはもう一度口をあーんと開けた。
シキはふっと息を吐くとそのおねだりに応えるようにアキラを引き寄せて口付けを与えてやった。
 

拍手[7回]

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なんか…寸止めって感じですね。
いろいろ折りたたんでます~!


**********************

*唇の温度*



シキが部屋へ戻ってきた午後、アキラはベッドの上でふわりと微笑んだ。
一糸纏わぬままのアキラが動くたび、しゃらり、と涼やかな音がする。

「おかえり、シキ」
「…やけに機嫌がいいな」

明るい声音にシキは面白そうに目を細めた。
アキラはもっと機嫌を損ねているかと思っていたのだ。
ゆっくりとそのベッドに腰掛ければ当然のようにアキラはシキの隣に擦り寄ってきた。

しゃら、しゃら。

「シキが帰ってきたからだよ」
「どこにも出かけてなどいないが?」
「部屋から出て行ったくせに。しかも3日もここに戻ってこなかった!」
「城からは出ていないだろう」
「そんなの俺にとってはどっちも同じだ。」

シキに会えなければ同じだとアキラは唇を尖らせる。
そのつん、と上向いた唇をシキは面白そうに親指で辿る。
しっとりとして柔らかなこの唇がいかに甘いかなど、とっくに知っていた。
しかし口付けることはせず、ただゆるりと視線をアキラに滑らせる。

「大人しくしていたようだな」
「シキの言いつけどおりにね」

しゃら、しゃら。

その音の正体はアキラの両手、そして右足を戒める華奢な鎖が立てる音だった。
一見すればアクセサリーのような腕輪からのびるごくごく短い鎖で両手同士はつながれ、右足も同様に。
ただ足の方の鎖だけはベッドの脚へとつながっていた。
といっても大した長さはなく、アキラはこのベッドからさして移動しなかっただろうことが容易に分かる。


この瀟洒な手錠はうろうろと城内を徘徊しては男を誘うアキラへの罰、といったところだった。
また城内にいるシキを探している途中だったのか、中庭へと至る廊下に先日は貧血で倒れているのを発見されたばかりでもあった。
いつまでたってもちっとも部屋で大人しく待っていないアキラにシキは盛大にため息をついてみせた。
もっともそんなことで改善されるとは到底思っていなかったが。
そして手足の自由を奪ったままアキラを抱き、完全にアキラを満足させないままに部屋を後にしたのだった。
シキに触れられないから嫌だ、と抵抗していたアキラが動くたびに腕輪が皮膚に食い込んで淡く赤い跡をつける。
大体、それもシキは気に食わなかった。
シキがつけた戒めが原因で傷をつけるアキラに腹を立てるなど問題のすり替えもいいところだが、そんなことはシキにもましてやアキラにも関係なかった。
傷をつけるなと多少は強引に約束させて、一度だけ深く口付ければとろけた瞳でアキラは頷いて。
それが3日前の話だった。
シキはわざと部屋へ帰らなかったのだ。


アキラの腕を取り、そして足首を見て痣や傷が出来ていないことを確認したシキは褒美をやってもいいぞ、とアキラへ囁いた。
唇の触れ合わないぎりぎりの位置で面白がるようなシキにアキラはふふふ、と笑った。
一気に瞳に淫蕩な色が滲む。

「それ、なんでもいいの?」
「俺の気分次第だがな」

主の言葉に期待を寄せたアキラはシキを腕の輪の中に通すようにして体を近づけた。
アキラの自由を奪う鎖がシキの項に宛てられ、そして軽い力で引き寄せられる。
逆らうことなく望まれるがままわずかに上半身を倒したシキは確かにアキラの体温が上がっていることを知る。

「シキが最後までしてくれなかったから…あのあと俺、一人でしちゃった」
「それで満足したのか?」
「………満足したって言ったら…?」
「俺の目の前でやらせるだろうな」
「意地悪」
「どこがだ」

ふ、と口元を緩めたままシキは強い眼光でアキラを射抜く。
赤い瞳に見つめられるたびにアキラは体の奥や、心の中までも見透かされているような気分になる。
何気ない言葉の応酬もほんの戯れにしか過ぎないことをお互いがよくわかっていて、だからこそ意味のないことばかりを話していられた。

「………ぜんぜん満足なんてしなかったよ…足りなくて…悲しくなった」
「だろうな。淫らなお前が自慰で事足りるわけがないだろう」
「ね…だからしよう?」
「てっきり望みは鎖を解け、かと思っていたんだがな。それよりも快楽を優先するか。どこまでも淫らだな」
「…鎖はシキが好きなときに解けばいいよ」

シキにつながれてるって考えるのも悪くないし、と胸中でアキラはこっそりと笑った。
せかすように腕で鎖を引いて、シキを誘う。

 


唇がふれるまで、あと少し。


**********************
 

拍手[15回]

リハビリがてらに書いてみました。
台詞は少なめですが…。
シキはアキラのものとかを大事にとっておきそうです。
っていうか保存?
ぺいっとは捨てられないというか…。
そういうところがシキの人間味なのかなぁ…なんて思ったりします。

拍手でメッセージ下さった方!
本当にありがとうございます。
メッセージはやっぱりとても励みになりました。
放置していて本当にすいませんでした。
暑さに負けずがんばりたいと思います~。

****************************

*秘密*


ある扉の前でアキラはふ、と足を止めた。
城の大分奥まったところにその扉はあって、普段から城の中を徘徊しているアキラもこの扉の存在は知らなかった。
もっとも、アキラが歩いているときに部屋の存在をいちいち気にしているかといえば答えはもちろん否、なのだが。
いつも探しているのは自分を楽しませてくれる存在と、それに必要な部屋と、なによりもシキだった。
前の二つはシキがいれば取るに足らない問題で、歯牙にもかけないようなことだけれど、シキがいなければどうしても物足りなかった。

そっとドアノブをひねればなんなく扉は開いた。
多少軋みながら開いたそれは城内のどの扉とも同じく重く、アキラは両手でしっかりをドアノブを握りなおす。
首をかしげながら右足を踏み出せば床は埃のざらついた感触。
人が入らなくなって久しいのかもしれない。

そこそこに広い部屋の中は暗く、アキラは手探りで明かりのスイッチを入れてはみたものの、ぱちんというスイッチの音が鳴るだけだった。
電球が抜かれているのかもしれなかった。
真っ暗な部屋の中で少し視線を漂わせながら考えてアキラは扉を大きく開く。
部屋の中にわずかに明かりが差し込む。
暗闇よりかは多少ましになった、と小さく頷いて再度部屋へと踏み出す。
なぜこのとき気まぐれなアキラが興味を失わなかったか、というのはやはり彼の気まぐれとしか答えようがなく、その理由はやはりアキラにもわからなかっただろう。
彼はそういうふうに"なって"しまったのだった。

部屋の中においてあったものには埃よけに白い布がかけられ、それがわずかな光を反射してぽぅっと浮かび上がっていた。
細い指先がその布の一端を手繰る。
しゅるりと落ちた布の下から出てきたのは裸の少年の像だった。
白い石で作られており、すべらかな感触にアキラは何度か手のひらを這わせた。
いつか、どこかでこれを見たような気もしたけれど、思い出すことはなく。
脳の遠くで何かの映像がちかちかと明滅しただけだった。
この像と同じような台座が布の下から見えているものが周囲にいくつもある。
という事はここにはこれと同じようなものしかないのかもしれない、とぼんやり考えながらも、アキラは暗闇に慣れてきた目でそろりそろりと前進する。
傍を通ったものの布をすべて床へと落としていく。
あっという間に床は柔らかな布で埋まっていった。

部屋の一番奥にあったものは振り子時計だった。
薄いガラス戸を開いて、止まってしまっている振り子を指で揺らすと柔らかい音がして、アキラは右に左に繰り返し動かしてみる。
シキの心臓の音に似ている、とアキラはひとりでくすくすと笑って目を閉じる。
ひとしきり遊んで満足するとその時計の隣の棚に目をやった。
なにかが光った気がして首を傾げながらも手を伸ばす。
手探りで小さな箱の中にあった金属製のプレートをつかみ出した。
チェーンのついたそれは金属同士がこすれあって硬質な音を立てる。
指先で辿れば模様か何かが彫ってあるようだったけれど暗闇ではそれをみることはできなくて。
幾度も指を滑らせてみたけれど、結局わからなかった。
妙に気になったそれを部屋に持ち帰ろうと握りなおした矢先、名前を呼ばれてぴくんと、とアキラの体がはねる。

「シキ…!」
「こんなところでなにをしてる」
「………さぁ…なんだろう」

わからない、と首を振ってためらいなく右手に握っていたものを床へ落とすと、アキラは主のもとへと駆け寄っていった。
埃だらけのアキラにシキはこれ見よがしにため息をついて。
眉を寄せながらもその肩についたほこりを払ってやった。

「…何か…みつけたのか?」
「………ううん、なにも」

面白いものは何もなかった、とアキラはつぶやく。
シキがちらりと横目で部屋の奥を見る。
暗闇で見えないが、その奥にはアキラのものがおいてあるはずだった。
以前の、アキラのものが。
眇めた目が一瞬深い色に変わるも、すぐにそれは消えて。
腕を絡めてくるアキラの好きにさせながらそのまま振り返ることはなかった。


後日その部屋にはシキの命により厳重に鍵がかけられた。
アキラの過去とともに。

拍手[7回]

ノヴ様からリクエストいただいていたカウアキです。
************************************
*ぬくもり*

「カウ…おはよ」

いつものように目が覚めるとアキラの傍にはカウがいた。
シキがいなくなるとすぐにカウはやってくるのだ。
シーツにもぐりこんでアキラが起きるまで隣でずっと待っている。

肌に無数の赤いシルシをつけたアキラは横になったままゆっくりとカウを抱き寄せた。
アキラが肌に何も纏わないままであろうと、そんなことはカウにはどうでもいいことだった。
そのままアキラに鼻を摺り寄せてしばらくアキラの眠気がどこかへいくまでじっとしていた。
もちろんここでアキラが二度寝に入ることも珍しくは無いのだけれど。
その場合でもカウはただ傍でじっと待つ。
それはカウにとっての至福の時間であることに変わりは無かった。

「おいで…カウ」

アキラはそっとベッドから降りて重いビロードのカーテンを少しだけめくった。

「ぁ……雪、つもってる」

カウの目が見えないことなど気にせずに"さむいね"等と声をかけては窓にぴたりと手のひらをつけた。
あまりに白すぎて距離感が図れないのがとても不思議で。
白く染まった世界がアキラにはすこし珍しかった。
窓から見える外の景色が変わるだけだが、寒くなってからはますます城にこもりがちだったからだ。
アキラのために作られたはずの中庭にもシキに止められているせいで外に出ていない。

暖房のきいた部屋でもさすがに裸ではすこし冷えたのだろうか、アキラはふるりと体を震わせてシャツを羽織った。上から適当にボタンをとめて。
その時くしゅんっとカウが小さくくしゃみをした。

「…さむいの?」

窓にもう一度カーテンをひいて、アキラはゆっくりとカウに視線を合わせるようにかがみこむ。
その指でカウの髪を梳いて、頬を撫でてやれば窓に触れたせいで指が冷たかったのかカウがきゅっと肩をすくめた。

「あ…ごめんね」

指を引くとカウがその指をぺろり、と舐めた。
冷たくなった指にカウの体温が熱いとさえ感じてアキラはすこし驚いて。
けれどそのままカウのしたいようにさせてやった。
シキの居ないこの部屋にはただアキラとカウしかいないのだ。
それに、純粋に自分のことを好きでいてくれるカウをアキラもまた好きだった。
なんの衒いも無く、全身で好きだとアキラに伝えてくる。
それはシキと一緒に居るときはまた別の感覚だった。

(シキといるときはそんなこと…考えない)

なにかを考えるようにしばらくアキラはじっとしていたが不意に立ち上がる。
優しくカウの額にキスをしてぱたぱたと部屋を出た。

「まってて、カウ。すぐに戻ってくるからね」

言葉通りアキラは銀色のワゴンを押して10分程度で帰ってきた。
ワゴンの上にはミルクココアとフィナンシェが載っている。
カウはアキラとともに帰ってきた甘い香りにくんくんと匂いを確かめているようだった。

「カウ、はい」

きをつけてね、といってアキラはマグカップをカウに手渡してやる。
冷えた手に温かいココアの熱が伝わってくる。
ふぅふぅと吹いてさましてからカウが飲んだのを確認して、アキラもココアを飲んだ。
一番上にのったクリームが少しずつ溶けていく。
アキラ用に甘く作ってもらったココアが体を少しずつ温めていく。

「おいしい?」

ふ、と顔を上げたカウの上唇にクリームがついている。
アキラはそれをみてくすり、と小さく笑った。

「カウ」

なぁに?というように首をかしげたカウにちゅっとアキラは口付けてそのクリームをぺろりと舐めとった。
くすぐったかったのか、それとも嬉しかったのかカウは唇の端を引き上げてにっこり笑った。

「おいしいね」

ふふ、とアキラは笑ってもう一口ココアを飲んだ。

***********************
あとがきは続きにて

拍手[2回]

*afterglow-10*


諜報員を何度も送り込み、やがてシキと思しき男の情報がぽつぽつと入り始めた。
シキ本人と確認できたようではなかったが、どうやらロシア軍の小隊を率いている男らしい。
顔も良く見えず、ただ背丈と、髪の色、そしてサーベル(日本刀ではなかったらしい)の扱い方から"どうやら"そうではないか、という、ただそれだけの情報だった。
なぜ敵の部隊にいるのか、また本当にその男がシキなのかだとか謎は絶えず、罠ではないかとの意見もあったがなりふり構っていられなかったというのも事実だった。
それしか、シキへの手がかりは無かったのだ。

一方でアキラは目覚めることもなく昏々と眠り続けていた。
リンは、ただあのときにアキラは純粋に眠りについたのだと思っていた。
だが、いくら経ってもアキラの瞼は閉じたままで、そしてその声で"リン"と呼ぶことも"シキ"と呼ぶこともなくなってしまったのだ。
アキラが眠りに着いたのは奇しくも、シキの情報が入り始めるほんのわずか前のことだった。
後もう少しそれが早ければアキラがこうなることは無かったのではないかとリンは何度も仮定を繰り返す。
それがどんなに無駄な事かなど分かっていた。

アキラを診た医者や研究者はアキラの体に異常はないと、言った。
ただ、相変わらず非Nicoleの適合率が少しずつ上昇しているということだけで。
彼らは本当にアキラが"眠っている"のだと言った。
データが示すことはたったそれだけだった。

「アキラ…」

リンは搾り出すようにその名を呼んでそっとその額の髪を払う。
少しずつ、少しずつ、アキラの命が零れ落ちていくようだった。
シキを待っているときの方がよっぽど良かった。
あの時はまだアキラは、リンのことを見ていて、そしてシキの話をしていた。
今はそれもなく。

日を追うごとにその肌から体温が消えていくようで。
死んでいるのではないかと疑ってしまうほど、アキラはただ静かに眠り続けていた。
毎日寝る間を惜しみリンはシキの行方を追い続け、そしてアキラの部屋へと通った。
最後にアキラが言った言葉が何度も頭を駆け巡る。

(からっぽのおと…)

一体その言葉が何を意味するのか、リンには考えても分かりはしなかったけれど。
あの悲しそうで、そして安心したような瞬間の顔が脳裏にこびりついてはなれない。
シキがいるときの心底幸せそうな顔や、シキにおいていかれて、一人で窓の外を見つめる顔も決してリンには向けられることの無いものだった。
それが悔しくて、でも、もう努力ではどうしようもないことだということも良く分かっていて。
だから、ずっとアキラの傍で。
そう、思っていたのだ。


(こんな形で傍にいることを…望んだんじゃない…)


城内、特に、主にシキが一切を束ねていた軍部は長い主の不在に少しずつ歪みを大きくしていった。
もともと実力主義で集められた兵達だが、それでもそれぞれがシキの圧倒的な存在感、そのカリスマ性に追随してもいたのだ。
よく統括され、機能していた。
しかし一方でラインを投与され、戦う場所を与えられる、そのことに喜びを見出すものも少なからずいた。
それらの兵にとっては絶対的な力を持ったシキがいない、ということは戦いの場が与えられない、ということと同義であった。
また絶対的指導者の不在というものはそれだけで組織立った軍を乱していくものだ。
シキが消息が不明になったということはまだ一部の者しか知らない事実ではあるが、やはりこの状態をおかしいと感じる者もいれば、これを機に城を占拠しよう、または城主の愛妾を奪おうとする輩も出てくるに違いなかった。
最悪シキが見つからなかった場合はラインが底をつくことになるだろう。
原液となるシキの血液はまだ余分にあるが、その場合はそれこそ争いが勃発するのは目に見えて明らかだった。

「アキラ…はやく起きて…目をあけてよ」

名前を呼んで、微笑んで。
これならいっそ、"シキ"のままでいればよかった…と思う日もある。
"シキ"のままなら…。

「もう、俺を見てなんて…思わないから」

………リンの願いは、届かない。
アキラの瞼は相変わらず下りたままで、長い睫は頬に影を作るばかりだった。

 

 

 

リンは硬い軍服の布地を強く握り締めた。
…シキを捜索に出た部隊が次々と消息を絶つ。

「なぜ…」

おかしい、とシキに与えられた執務室でリンは頭を抱えた。
何かがおかしい。
目に見えない、何かが確実に動いているのを感じる。
ただ、その"何か"が何なのか見当もつかなくて。
光の届かないところで蠢く闇が、リンの知らぬ間に一層と濃さをましていっているような気がしてならなかった。



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あとがき&拍手お返事は続きから

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BrownBetty 
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