*ぬくもり*
「シキの手…冷たいね」
アキラの指がシーツの中で俺の指を絡めとった。
きゅっと握られた先から熱いほどのアキラの体温が伝わってくる。
空気が徐々に冷えだすこの季節でもアキラの服装は(つまりはシャツ一枚ということだが)変わらない。
それはこの部屋が完全に温度も湿度も調整されているからなのだろうが、そもそもアキラに服を着る、という意思は無いようだ。
ふんわりと微笑む顔を見ながらアキラの好きにさせる。
「もう、雪、ふる?」
「……雪はまだ先だろう」
唐突に何を言い出すかと思えば…。
まだ秋口で、最近紅葉が始まったばかりだ。
雪など降ろうはずも無い。
「そう…雪…まだなんだ」
少しずつアキラの体温で俺の指先が温まる。
それと引き換えにアキラの指先は少しずつ冷えて、温度が溶け合う。
動かさなければ、肌との境目が分からないほどの体温の均衡。
「まだだな」
シーツに埋もれるように、アキラが布をかきあわせて俺の胸に顔を寄せる。
アキラはよくこうやって胸にぴたりと耳を押し当てる。
何が楽しいかは分からないが、こうするのが好きなのだ、といっていた。
「俺ね、雪…好き……ここから見える景色が白くて…音が無くなって…すごくきれい」
「…」
「真っ白の中にね、シキがいるとすぐ分かるんだよ。シキ、黒いから」
くすくすと笑ってアキラが俺の指に口付ける。
温まっていたはずの俺の指よりもよっぽど熱く、潤っていて俺はふ、と嗤った。
「…シキ…雪、降った日はここにいてくれる?」
「…さぁな。それはわからん」
確約など、してやれない。
する必要も無い。
「つまんないの」
そう呟く声は言葉とは裏腹にひどく楽しそうだった。
「…お前次第だな」
やさしく髪を撫でてやり、その感触を楽しむ。
柔らかなそれに気づかれぬように口付けて、軽く抱き寄せた。
[2回]
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