どうにも季節はずれな拍手お礼を更新しました。
5月だというのに雪の話…。
まぁ、あまり気にせず(笑)
よければぽちっと拍手押してみてくださいね。
こちらにひとつおろしておきます~。
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*wish*
ギィ、と扉を開けたシキにアキラが駆け寄る。
ひらひらとシャツを揺らして走り、シキに抱きついた。
「邪魔だ」
普段ならば帰城したシキを出迎えて口付けをねだるのだが、今日はアキラはただ小さく震えながら堅くシキの服を握って離さない。
いつもとは違うアキラの態度にシキが眉を寄せた。
「アキラ」
顎を掴んで顔を上げさせれば泣き腫らしたような瞳をしていてシキは内心で驚いていた。
(珍しいこともあるものだ…)
そもそもアキラが泣くところなどシキは情事以外に見たことはなかった。
それですら快楽から流す涙であって泣くという行為そのものではない。
「シキ…」
またしてもその顔を下げ、シキの体にぴたりとくっついて離れない。
「アキラ…どけ」
悪い気分ではなかったが如何せん歩けないというのが問題だった。
そのシキの言葉にもアキラはゆるく首を振って一層と服を握る力を強めただけだった。
シキは無理やりアキラを剥がすと担ぎ上げて部屋へと戻った。
兵たちも慣れた様子でそれを見送る。
荒々しくベッドに放られ軽いアキラの体がバウンドした。
「…その目は何だ」
「……おいてかないで………捨てな…で…シキは…傍にいろって…いったのに…っ」
ベッドの上で丸くなって座るアキラは涙の混じった声でそう呟いた。
(何を言っている…?)
まったく持って状況が飲み込めないシキは小さくため息をついた。
まさかアキラが悪夢をみて泣き明かしたなどと想像もできないだろう。
ベッドに腰掛ければ親鳥についてまわる雛のようにアキラがシキの傍まで移動して、その背中に抱きついた。
くすん、くすん、と飲み込む涙の余韻のようなものがアキラを彩っていた。
「…シキ……」
力強いその主の鼓動に耳を澄ませて、これが現実なのだと理解してアキラはやっと安らかな眠りについた。
[1回]
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