身体部位10のお題:そのに
03 喉仏
シキはよく俺を噛む気がする。
あの鋭い犬歯が肌に食い込む瞬間はいつやられてもどきっと心臓がはねる。
そんなの気にならなくなるくらい気持ちいいんだけどさ。
「あ…あ…ぅあっ!!」
ひときわ大きな声が出たのは、ゆっくりと降下してたシキの唇が首元で止まって俺の喉仏に噛み付いたから。もちろん甘噛みだから歯は緩くたてられただけ。
「こんなことでもお前は感じるのか」
嗤いながらシキがさらに歯を立てる。
今の自分を想像して、俺はやんわりと笑みを浮かべた。
鹿の喉元に食らいつくライオンの映像をどこかでみたことがある。
それに似てる。
…ライオン?
シキは黒ヒョウとか、チーターとか。
しなやかな感じ。
ライオンじゃちょっと体が重たいよね。
黒猫、とか言ったら怒られるかな。
「んぅ…んっ」
喉元に噛み付かれたら、鹿はもう殺されちゃうんだ。
…俺もいっしょかな?
噛まれると、シキはこのまま俺のこと殺してくれるんじゃないかなって思うときがある。
それはそれでとってもきもちがよさそうなんだけど。
「…何を考えている、アキラ」
ぐん、と突かれて、しどけない喘ぎをもらして、その考えをいつもすぐ訂正するんだ。
「しき…っ」
だって、こっちのほうがずっと気持ちがいい。
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