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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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キリ番は500単位で受付中です。
お礼SSを書かせていただいてます。
踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
リンクフリーです。
バナーはお持ち帰りくださいね。


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先日のキリリクの際の没作品…。
というか同じ話の流れで書いてたんですけど、長い上に纏まりそうに無かったので没になったのでした。
"彼"はアキラに殺された"彼"ですよ。
こっちのお話はこれからアキラが監禁(笑)されたりシキが助けにきたりするのでした。
まだこの段階では"彼"はシキに殺させようかな、なんて思っていました。
それからシキとアキラの対話になるので超長ッですよね。

まぁ暇つぶし程度にでも思っていただければ幸いです~。
タイトルはないですよ。

**********

*no title*


アキラは表情を変えることなく、黙々と仕事に没頭していた。
書類の束をトントン、と机で軽くそろえシキから決済された書類を下へと送り返す区分の仕事だ。
今日は朝から延々とこの作業が続いている。
というのも定例報告会や、来月のための外交書類をまとめておかねばならなかったり、と月末(つまり今だが)は急がしく、またシキの遠征が被り決済が遅れたことも起因して目の前の膨大な量の書類が出来上がったのだった。
その枚数は相当なもので、いつもなら一人でこの作業をこなすアキラも今回ばかりはあまりの量の多さに圧倒されて部下を一人、助手として呼んだのだった。

ふ、と息を吐いて首を軽く回す。
慣れているとはいえやはり疲労は出てくるものだ。
アキラは傍らでまたしても作業に徹する"彼"に声をかけた。

「…少し休憩にしよう」

アキラの部下の中でも特別有能な男だ。
賢く(というよりは頭の回転が速いのだろう)、そして剣の腕もなかなかにたつ。
アキラが目をかけている数少ないうちの一人だ。

「では私は厨房に行って紅茶をもらってきます」
「あぁ、すまない」

仕事を頼むときは大抵を彼に任せるため、アキラがコーヒーよりは紅茶が好きということまで彼は知っているのだった。

"彼"を見送って、アキラはぐっと背筋を伸ばした。
今頃はシキはきっと部下たちに取り囲まれて、内心では退屈しながら軍議を開いているはずだ。
「……シキ」
アキラはそっと囁いたあとに満足げに顔を僅かにほころばせ、チェアにゆったりと腰掛けた。


「シェフがぜひアキラ様に、というのでマドレーヌを預かってきました」
さわやかな香りを放つオレンジペコーと、小皿に品よく並べられたマドレーヌとがアキラの前に置かれた。
陶磁器のカップに鮮やかな紅が映える。

「いい香りだな」

そうやってアキラと"彼"はひと時の安らぎを共有する。
僅かな休息でも、それをいかに効率良くとるか、というのが最近のアキラの課題だ。
効率のよい休息は効率の良い仕事につながるということを先日主に諭されたばかりだったからだ。

一口齧ったマドレーヌは確かに甘さが控えめに作られており、小食のアキラにしては珍しく2つも食べた。

「シェフが喜びますね」
「美味かったといっておいてくれ」
「えぇ、伝えておきます」
微笑みながら"彼"がうなずいた。

「…そういえば最近、トウホク…のほ…う…!」
アキラは不意に襲った眩暈にソファの肘掛をぎゅっと握ってやり過ごそうとする。
視界が白く染まり、そして急激に明度が落ちていく。
ぐらりぐらりとゆれる景色に瞳孔が収縮を繰り返し、ちかちかと光が目に痛い。
「…っ」
顔をあげれば、こちらを見つめるどこか哀しげな"彼"と目があった。
「…薬を…盛ったな…」
ぴりぴりとした刺激が全身を駆け巡ると同時にアキラはひどく体が重くなったように感じていた。
「…すぐに楽になれますよ。睡眠薬に痺れ薬が混ざっただけですから安心してください」
その言葉通り、痺れだして感覚の徐々になくなっていく手足にアキラは小さく悪態をついて腰に佩いていた短剣を抜く。
それでソファを刺し、なんとか体を支え体勢を保った。
「…」
物言わぬ"彼"にアキラの鋭い視線が突き刺さる。
「……お許しください…」
「…何の…真似だ」
霞む視界でアキラは"彼"をにらみ続ける。
「あなたには人質になってもらいます。…われわれは総帥に反旗を翻す」
「…っ、馬鹿なことを」
言葉を吐き捨てたアキラから"彼"が短剣を奪う。
それは優しい手つきであるにもかかわらず、アキラはさしたる抵抗もできなかった。
支えを失って後方に体が傾ぎ、背もたれに寄りかかる。
「ですから、あなたが必要なんです。あなたは唯一、総帥が傍にいることを許したお方。それは完全なる総帥の唯一の隙でもあります」
「……ふざ…けるな」
己が総帥へと仇なすものへの助けになると思うだけでアキラの負の感情は膨れ上がった。
「われわれには…あなたが必要です。…そして、これも」

細い切っ先が感覚のないアキラの手のひらに埋まる。
ぷつりと皮膚を破って珠玉がみるみるうちに盛り上がる。
アキラがその身に宿す、非ニコル。

なによりも皆がこぞって手に入れたがる、ニコルと相反するもの。

そのキャリアーであるアキラはニコルを制圧する際には欠かせないものなのだ。
"彼"が妖しく笑い、その血を、ウイルスを舐めとった。
感覚のないアキラはただ不快な温度だけを感じ、眉をぎゅっとこれ以上ないほど寄せた。
(あぁ、"彼"はニコルを投与していないのだった…)
ぐっと唇をかみ締めて、遠ざかりそうになる意識を引き戻す。
徐々に顔が青白くなるアキラはそれでもまだ抗っていた。
そしてアキラは"彼"が奪った短剣を僅かな隙を突いて取り返し、すばやく己の腿へと刺した。
深々と刺さったそれが瞬間的にアキラの意識と感覚とを冴えさせて、アキラは"彼"にそのナイフを投擲する。

…そしてそのままアキラはくず折れた。
腿から鮮血があふれ出し、すぐにアキラの軍服を染め、絨毯へと染み渡っていく。

「おっと…まだ動けたとは…驚きですね」

危なげなくそのナイフをかわし、アキラを抱きとめる"彼"の声には殆ど賞賛のような響きが混じっていた。
「…アキラ様…」
"彼"はアキラを抱き寄せてその首筋に口付けを落とした。


そして。

 

「お待ちしておりました…総帥」

穏やかな彼の双眸がすっと細まった。

**********

拍手[5回]

PR

スズカ様へのキリリク小説です。
リクエストは「ストイックエロなシキアキ(ED2)」でした。
…ストイック………。
とりあえずあとはあとがきにてっ。


*loyalty*


アキラが男を斬った。

アキラの部下だった男だ。

アキラが目をかけ、いろいろな仕事を任せていた男だ。


シキの前まで引きずり出された男は抵抗したときの名残であろう傷を体のいたるところに負っていた。
そこにきっちりと軍服を着込み、髪を整えた青年の面影はどこにも見受けられない。
それほどにやつれ、疲れきったような風体で、それでもその瞳はしっかりとシキを睥睨していた。
ぎらついた瞳に宿るのは憎悪、それだけだ。

「…」

シキは"殺せ"とも"斬れ"とも言わなかった。
ゆったりと座ったまま、ただちらりとアキラを見ただけだった。
それでもアキラはシキの意思を違わず汲み取り、男を、斬った。

 

その男は謀反を起こそうとしていたのだ。
よりによってシキを倒そうと、していたのだ。

シキを至上とし、付き従うアキラが許すはずもない。

すらりと美しい剣を抜き、躊躇わずアキラはその男の首元に刃を滑らせれば、吹き出た血がアキラの顔、シャツ、ネクタイ…そういったものを一瞬で紅に染め上げる。
ニコルを服用していたであろう男のそれにもアキラは僅かに目を眇めただけで、表情に変化は見られない。
血を拭うこともせず、ただそこに立っているだけだ。
アキラの足元で、男がピクリと、動いた。
首元から間欠泉のように出血していても、男はまだ生きていた。
アキラは完全には殺さなかったのだ。

無表情のまま瞬間、アキラはしっかりと血濡れの男を見つめ、すっと剣先をその胸に充てた。

男が、笑う。
ごぼ、と血を吐いて、それでも。
浮かぶのは純粋な、笑み。

そうして…アキラの剣が男の胸へと吸い込まれていった。
音もなく、ただ男の心臓を貫いた。

男の体が一度跳ねて、止まる。
絶命したことを確認するまでもなく、アキラは剣を引き抜き血糊を振り落とした。
そしてすぐに、どこからか差し出された布で刀身を綺麗にふき取った。

凄惨な、しかしここでは良く見る景色の中にアキラはたたずむ。
その身を赤に浸していても"高嶺の花"と称される気高き美しさが劣ることはない。
むしろ赤はより一層アキラを彩り、アキラの全身から出る、ぴんと糸を張ったような緊張感をより際立たせた。

アキラの剣が鞘に戻ると同時にシキが立ち上がり、ただ"片付けておけ"とだけ言って出口へと歩を進める。

「アキラ、来い」
「…はい」

血塗れた姿のまま総帥につき従うアキラに皆、一様に言葉を奪われ、張り詰めた空気の中ただ二人のために道が開く。

 

 


「…なぜ一太刀で殺さなかった?」
シキの執務室に戻ればただ面白がるようにシキがたずねる。
「…殺すつもりでした。でも苦しませて死なせるのが順当だと」
「お前はすぐに血にあてられると分かっていだだろう?」
アキラがニコルを服用しているものたちの血液を浴びると、まるで酩酊しているかのような症状を引き起こすことは既に分かっていたことなのだ。
それは非ニコルのキャリアーであるせいだろう。
もっとも、比較対象がいないので断言はできないのだが、ここ数年で適合率が上昇したことが原因のようだった。
しかしそのような状態になると分かっていながら、アキラは血を浴びるであろう首筋をまず、斬ったのだ。

その血のせいで今もアキラの心拍数は僅かずつながら上昇をはじめ、それに伴って体温も高くなってきているのが目に見えて分かる。
淡く高潮した頬に、潤み始めた瞳に、引き寄せられぬ男などいるだろうか。
この姿を見せぬためにシキはアキラを連れて部屋まで戻ってきたのだった。
アキラの頬にはねた血をシキの手が優しくぬぐい、その肌の温度を確かめる。
確かにいつもよりも火照ったような熱に表情を変えぬままシキは幾度か手のひらを滑らせる。
アキラはそれだけでぴく、と小さく震え、シキを喜ばせた。

ふ、と笑ったシキはすぐにアキラを浴室へと押し込む。
「それはやく洗い流せ。俺はその匂いは好まん」
そういわれて初めてアキラは自分がまだ血を浴びた姿のままであることを思い出した。
純粋なニコルのキャリアーであるシキはニコルを服用した者の血がひどく鼻につくのだという。
それは以前からニコルという存在を憎んでいたからかもしれないし、己のうちに潜むウイルスの真の姿を知っているからかもしれない。
「…っ、失礼しました」
慌ててアキラが礼をとり、服を脱ぎはじめた。
血に染まったシャツが肌に張り付く感覚が不快で、アキラは眉を寄せたまま手早くそれらをまとめてダストシューターに放り込んだ。

 


「総帥…ッ」
風呂から上がったアキラはベッドに腰掛けたシキがアキラの刀を手入れしているのを見て慌てて駆け寄った。
「そのようなことは俺が」
「暇だっただけだ、気にするな。それより座れ」
ぽたり、と髪の先から水が滴るのもかまわずにアキラはシキに応じて床へと座った。
シキがアキラの刀で、その鞘の先でアキラの頤を上げさせる。

「そういえば……笑っていたな」
「…」
思考力が徐々に鈍ってきていたアキラが瞬きをひとつして、何の事か、とシキに問う。
「あの男だ。お前に斬られる時に、笑っていた」
その言葉を聴いてアキラは思い出したくもない、という風に視線を床へと落とした。
シキがその顔をさらに上げさせる。
「…っ」
気管をふさぐ様に喉仏の上から鞘を押し当てられてアキラは小さく咳こんだ。
「あの男は達成したのだ…忌々しいことだが」
「…達成…ですか?」
意味を量りかねて、アキラはよく回らない頭で思考する。

「…お前は知らなくていいことだ」

…あの男が、アキラを想っていたなどと、そんな情報をシキはアキラにやるつもりは毛頭なかった。
アキラに想いを寄せる故の謀反であった、と。
アキラを所有物として傍に置くシキへを憎しみを向けて、ただアキラに殺されるために謀反を起こしたなどと。
そんな事を言うつもりはなかった。

殺される瞬間の、あの男の幸福そうな顔を思い出すだけで腹の底から黒い感情がふつふつとわきあがってくる確かな感覚をシキは感じていた。
男にはアキラを決して手に入れることはできない、と分かっていたはずだ。
それにシキを殺せるはずもない、ということも。
だからこそアキラに最も信頼された部下という立場ではいられなかったのだろう。
アキラの瞳はけっしてシキ以外に向くことはないと、傍にいればいるほど分かっただろうから。
だからこそ男はアキラに殺される道を選んだのだろう。
殺される、その刹那。
その瞬間だけはアキラは悲しみと喪失と怒りと憎しみの瞳で男を見つめるのだ。
加えて、あわよくば部下を殺したという傷をもアキラの中へと残すことができる。
…そして、少なくとも男は目的を達成した。
シナリオ通りにアキラに殺されるという、最大にして唯一の目標だ。
……男は実現してみせた。

あの笑みは純粋なものでありながら同時にシキをあざ笑っているかのように感じられた。
『どうだ、俺も"アキラ様"を手に入れた。あなたには決してできない方法で』と。
それがシキには腹立たしくてならなかったのだ。

(あれは俺の所有物だ。それ以外の何者でもない)

「お前の所有者は誰だ?」
幾度となく繰り返される同じ問いに、アキラはいつも同じ答えを返す。
いくらその質問が唐突であろうと関係ないのだ。
いつも同じ答え。
「総帥、俺にはあなたしかいません。あなたが許してくださる限りずっとお傍におります」
そうしてアキラはシキの指先にそっと口付けた。
恭順の口付けだった。
真摯な声と、忠誠を誓う行為にシキの口元が満足そうに弧を描いた。
「良い答えだな」

はにかむ様にちいさく笑うアキラをシキは優しくなでてやる。
体温が高く、呼吸の浅いアキラはいつになく扇情的だった。
「来い、可愛がってやろう」
その言葉にアキラは一瞬目を見開いて、すぐに微笑みながらうなずいた。


「…っん」
アキラが着替えた清潔な軍服が次々と崩されていく。
シャツのボタンはすべてはずされ、ジャケットは床へと放られている。
白い肌のところどころにはシキのつけた跡が赤く残っている。
ベッドの上でシキのものを咥え丹念に奉仕するアキラの姿はいつでも献身的でいつでも妖しいほどに美しい。
時折いたずらに体を這うシキの手にアキラは素直に反応を返しぴくりぴくりと体が跳ねた。
今の血に酔った状態ではその感度も上がっているのだった。

「もういい…アキラ、準備は一人でできるだろう?」
そう言ったきりシキは多くの枕やクッションへ上半身を預け、ただ傍観する姿勢をとった。
いつもよりひどく乱れているアキラを見ていたかったのだ。

突然に奉仕をやめさせられただけでなく、いつもと違う要求にアキラは僅かに逡巡したが、そもそもアキラにはシキの言葉に従うという選択肢以外はないのだ。
その後孔にゆるゆると指を伸ばしゆっくりとほぐしていく。
さしたる時間をかけることなくアキラのそこはその指を飲み込んだ。
くちゅりと、淫猥な水音が響きだす。

「は……ん…っ…ぅん…」

瞳を閉じて徐々にアキラはその快楽へと身を投じようとしていた。
それでも最後の理性がアキラの声を押しとどめようとする。
その唇のあわいから漏れ出る甘い喘ぎにシキの口の端が更にあがる。
「どうした、今日は随分と淫らだな」
「…っ!」
現実に引き戻されたようにアキラの目が見開かれ、シキの視線に絡めとられる。
血に濡れたかのような深紅の瞳に捕らえられ、目をそらせない。
「ぁ…」
今にも泣きそうなアキラの表情にシキは言いようのない悦楽に駆られ、アキラを己の膝の上へと導いた。
その首筋から人差し指でアキラの体をたどる。
緩やかに、締まった体を撫でる。
そしてたどり着いた先は…臍のピアス。
「…んん…っ」
ぎゅっと目を瞑り襲い来る快楽の波をやり過ごそうとするアキラをシキは容赦なく追い詰めていく。
すっかりと肌になじんだそれは今ではもうアキラの体の一部となり、そして性感帯となっていた。
疼き、そしてくすぶる感覚に、血を浴びて高揚したアキラは一層と身をよじった。
「目を瞑るな」
耳元で囁くシキの声に、聴覚までもが犯されていくような甘い感覚にアキラはもう抗えない。
そういうふうにアキラはシキによって変えられた。
否、アキラが望んで変わったのだ。
アキラはシキのためにすべてを捧げる、そうして生きてきたのだ。
あの日から、トシマを出たあの日からアキラはただシキの傍にいることだけを考えて生きてきた。
だから迷わず、あの男も斬ったのだ。
ただ仕事ができる男だというだけで多くのものを任せていたに過ぎない。
その男が、謀反を犯し、シキに反旗を翻すというならアキラは何度でも、誰であろうと殺すことができるだろう。

 


「…し…き…っ」
アキラがとうとう呼んだ名に応えるようにシキはアキラを組み敷いて、己の屹立したものをその内部へと埋め込んだ。
「最初からそう呼べばいい。…部屋に入ってまで総帥などと下らぬ名で呼べといった覚えはない」
「…んぁっ……ゃ…ん…ん…ぅぁ」
揺さぶられるたびに甘く啼くアキラをシキは更に追い上げていく。
「…お前は俺のものだ…そうだろう?…この血液が、細胞が、俺を求めている」
「…う…ん…ぁ」
シキにはもちろん殺された男など、そんな影をアキラの中に残す気はない。
「…俺の血の中のニコルを…お前は感じるだろう?」
「…ぁ…」
アキラはただ首を小さく振ってうなずいた。
荒い息遣いのその合間に何度も何度もシキの名を呼ぶ。
「…なにも恐れることはない」
そう言ったシキの犬歯が、アキラの首筋の柔らかな肌を食い破った。
つながった血を頼りに、シキとアキラはただ前進していく。
何も省みることなく、ただ突き進むシキにアキラはついていくのだ。

それだけなのだ。

シキがベッドを降りて、乱れた服を調え始める。
「そうす…シキ…?」
あわてて呼びなおしたアキラにシキは振り向いて応じる。
起き上がった途端に顔をしかめたアキラを見て薄く笑った。
「まだ寝ていろ。体温が高い」
「しかし…っ」
「寝ていろ」
「…………はい」
アキラは大人しくシキに従い、その身を再び横たえた。
「すぐに戻る」
シキには後始末が残っていた。
残った謀反人たちの処分だ。
アキラが殺したのはその首謀者に過ぎない。
長引かせることはなにより面倒だと分かっていた。
なんといってもこれでアキラが「自分が責任を取って…」などと下らぬことを考えるかと思うとそれだけで面倒ごとは早く片付けなければ、と思うのだった。
「…いってらっしゃいませ」
部屋に一人取り残されたアキラは幾度目かの寝返りを打った後、火照った体を覚ますように大きく息を吐いた。
「……シキの傍にいたいだけなんだ」
だから、誰だって行く手を阻むものは消してみせるのに。
アキラの呟きは本人にも聞こえることはないほどに小さなものだ。
「…それだけでいいのに」
アキラはそっとシキが噛み付いた首筋を撫でた。
まだ新しい傷跡は甘い痛みを伴って、アキラの感覚を支配する。

シーツに残るシキの匂いやぬくもりを感じながらアキラは目を瞑る。
知らぬうちに疲弊した体が休息を求めていた。


「…お傍に、おります」


それだけをそっと言葉にして、アキラはシキが帰ってくるまでの眠りについた。

**********

拍手[6回]

ちょっと視点を変えて兵士から見たシキとアキラ。
ED2に慣れなきゃいけないなぁとおもいます。
書きにくい、書きにくいけど好きなんです。

他のサイト様の素敵なED2を見るたびに憧れが山積していきます。
キリ番も次はED2ですから頑張って書きたいものです。


最近たくさん拍手をいただきます。
とてもとても励みになります!
返信不要の方もぱちぱちだけの方もありがとうございます~。
しばらくしたらまた拍手用の文もあげたいなぁ…!


*the beauty*

コンコン、と規則正しくノックはいつも2回だ。
俺の中ではもうすっかりと定着してしまった。

夕の報告を任せられるようになって大分経つ。
何度報告を行なったか知れないのに、いつでもこの部屋の前に経つと緊張するものだ。

総帥の、執務室。

皆が憧れるアキラ様も大抵はここで総帥の執務の補佐をしていらっしゃるのだ。
あの美しいお姿を思い浮かべるだけでなぜこんなにも幸福になれるのだろうか。
不思議だ。

「入れ」

しばらくして聞こえた総帥の声に、知らず緩んでいた顔を意識して引き締めた。

「失礼いたします」

執務室続きの寝室から総帥がゆっくりとこちらにいらっしゃる。
タイを締めながらもその所作にはどこにも隙がなく、たとえどんなときであろうともこの方が倒される日など来ないような気がする。

いつものように怖いほど整った美貌はなかなか直視することができないが、はじめのうちは同じ室内にいるだけで目に見えない、なにかぴりりぴりとしたものに終始緊張し続けだった。


いつもはぴったりと閉じられている寝室へ続く扉。
総帥がその扉を閉めなかった為に視力だけはやたらと良い俺には見えてしまった。

奥にある豪奢なベッド。
その上に横たわった、抜けるように白い肌を惜しげもなく晒した…。

「どうした、なにか変わったものでも見えたか?」
革張りのチェアにゆったりと腰掛けた、揶揄するような総帥の声にあわてて報告を開始する。

総帥に見抜かれていると分かっていた。
それでも瞼の裏に焼きついた、映像が離れない。

力なく投げ出された腕と、床に散っている軍服。
乱れたシーツは今の今まで何が起こっていたかを如実に物語る。
どうしても艶やかなアキラ様を想像してしまう。
それはどうも禁忌のような気がしてぐっとこぶしを握った。

 

「…本日の報告は以上です」
「最近、西棟の警備の人数が若干多い気がするがどうなっている?」
「はい、先日アキラ様の指示がありまして今までより10名程増員しております。理由はお聞きしておりませんが…」
「…そうか。わかった。下がっていい」


「は。失礼いたします」
もう一度敬礼。


広い執務室を後にして、俺はやっと大きく息をつく。
見てはいけないものを、見てしまった。
長く報告を行なっているがこんなことは初めてだった。
否応なく頭の中で際限なく繰り返されるあの映像。
あれは間違いなく、アキラ様だった。

いつもの張り詰めたような雰囲気はどこにもなく、そこは甘やかな空気に満ちている気さえした。
ぴんと、糸を張ったような空気を纏って隙無く軍服を着込んだそのお姿があんなに色香漂うのも、少しだけ垣間見えた先ほどの美しさが知らず滲みでるからなのだろう。


「はぁ…幸せなのか、そうでないのか」


あれを見れたことを、幸福ととるか、不幸ととるかは難しいところだ。
これからしばらくは頭を悩ませそうな問題に俺は一人で頭を抱えた。

ただひとつはっきりしていることは誰にも言えないということだ。
窓に映った俺は想像よりも自分が柔らかい表情をしていることに驚いて、小さく笑う。

また軍務に戻らねばならない。
やらねばならぬことはたくさんあるのだ。


われらの主君と、あの美しいお方のために。

拍手[5回]

アンケートで一番獲得票が多かったED2です。
シキに一途なアキラは書いていて楽しいです。
ED1はアキラはシキの隣、ED2はシキの一歩うしろ、ED3は抱っこされてるといいなぁと思います。
それぞれアキラはEDによってシキとの距離感が違うのだと思います。
むむむ。

どうかなぁ。

*progression*


「総帥、お茶がはいりました」

風が冬に向けて少しずつ冷えてきているが、相変わらず陽は暖かい。
シキの執務室は薄いカーテンで濾過された柔らかな陽光で満たされていた。

アキラは運ばれてきた小さなワゴンから慣れた手つきで茶器を扱い、シキのデスクへと置いた。
シキへと呼びかける声は部下がいるときと比べひどく柔らかい。
小振りの皿には甘さを抑えたブラウニーが品よく並べられている。
もっともそれにシキが手をつけることなどあまりないのだが。

「アキラ、未決裁の書類はこれですべてだな?」
判を押しながら疑問ではなく事実の確認をするような口調でシキが問う。
「はい、本日のデスクワークはこれで終了となります。18時に兵たちの訓練の視察が入っていますが、あと30分程ありますのでそれまですこしお休みになられてください」

「あぁ、そうしよう」

ここ連日のオーバーワークでさすがのシキも疲れているのだろう、珍しく首肯したのをみてアキラはほっと内心息をつく。

(せめて少しでもシキの負担が減るように俺がしっかりしなければ…)

部屋に満ちていく紅茶のほのかな香りにアキラの顔がわずかに緩む。
シキの執務室には決まった時間に決まった人間が報告を行いにくるだけで、常にシキの傍らにひかえているのはアキラだけだ。
アキラはこの執務室にいるときに自分だけがシキの傍にいることを許されているということ、それを実感することができるのだった。

アキラは己の立場と役目とを十分に理解していたからできうる限りの最大限の努力と犠牲と献身とをもって仕事をこなしシキに仕えてきた。

すべてはシキのため。

アキラの体、爪から髪の毛、そしてその魂さえもシキのものなのだ。
すべてを主へと捧げ、生きてきた。
トシマを出たあの日からアキラの意思は揺るがない。

そうしていつの間にかアキラの定位置はシキの右斜めうしろとなった。
シキの横でもましてや前でも完全にうしろでもない。
シキから一歩下がって傍にひかえる。
アキラはそこからシキの美しい姿を目に焼き付けるのだ。

そして周囲もまたシキの傍に控えめに立つ、美しいアキラを高嶺の花と謳う。
絶対主君に寄り添う姿はアキラの性格を如実に現していて、兵たちからは憧れと尊崇の眼差しが絶え間なく注がれている。


シキがティーカップへと手を伸ばし、一口嚥下した後で小さく笑う。
「…紅茶を淹れるのが上手くなったな」
「!……ありがとうございます」
突然の賛辞にわずかに驚きながらもはにかむようにアキラは笑った。
その笑顔はシキだけが知っているアキラの極上の微笑み。

 

鍛錬中に突如現れた自分たちの主に、30人ほどの小隊の兵たちは鍛錬の手を止めてすぐに姿勢を正した。
アキラはそれに軽く手を振って続けるように促す。
その場の責任者を呼び、経過報告をさせる。
「アキラさま…なにか不備がございましたでしょうか…?」
「いや、総帥が鍛錬の視察を、と仰った。いつもどおり続けてもらって構わない」

とは言われたものの、シキとアキラがいるだけで空気がぴりぴりと張り詰めており兵たちは気もそぞろだった。
そんな状態の兵をシキは見渡して、面白そうに喉を鳴らす。
「アキラ、稽古をつけてやったらどうだ?」
思わぬシキの言葉にアキラのみならず兵たちが一斉にシキのほうを向いた。
「…はい、分かりました」

その了承に兵たちは色めきたった。
アキラから稽古をつけてもらえることを何よりも皆が待ち焦がれているのだ。
偶にアキラは請われてこうやって稽古をつけることがあったからだ。
もっとも普段はシキの補佐が忙しくなかなかあるようなことではないが。

「アキラ、お前はこれを使え。少しはハンデがないとな」
そういってシキが放り投げたのは軍支給の短剣だった。
アキラがいつも使っている剣とは長さも形状も違うそれに表情を変えることなくアキラは頷いた。
何度か確かめるように短剣を握り、すっと構える。

「アキラを殺すつもりで向かっていくことだ。一度に何人でもいい。ただしアキラに服を裂かれたら終わりだ…いいな、アキラ?」
訓練を取り仕切るようにシキが言葉を発し、周りはそれに耳を澄ます。
「はい。服を斬ればよろしいのですね」
シキの号令とともに何人かがアキラへと向かって走り出す。

 

「予想より時間がかかったな」
「申し訳ありません。これに慣れるまでに少しかかりました」
「だろうな。大分お前の剣よりリーチが短い」

アキラには傷ひとつ見当たらない。
わずかばかり髪とシャツの襟が乱れた程度だ。
それに比べ兵たちの服はどこかしらが裂かれ、皆が息を荒げていた。
身軽なアキラを捕らえるのは想像以上に体力を要するのだ。
その儚げな外見とは裏腹にアキラはとても強い。
これが高嶺の花と言われる所以でもある。
強さも美しさもほかの誰かを魅了してやまないのだ。

アキラがすべての兵の服を裂くまでに要した時間は20分程度。
それでもシキにとっては"遅い"のだろうとアキラは反省する。
きちんと短剣を鞘に戻し、アキラは乱れた襟を正した。

「また稽古をつけてやろう」
アキラの髪を手で直してやりながらシキが囁く。
「ありがとうございます」

アキラは深く礼をとり、帽子をかぶりなおした。
兵たちがアキラの稽古を楽しみにしているようにアキラはシキの稽古を楽しみにしているのだ。
シキは強くなれ、とアキラに言った。
だからアキラは何をもってしてもシキに次ぐ強さを保たねばならないのだと、訓練を重ねてきた。
シキの言葉は絶対なのだ。
アキラを支配する、声。

すべてはシキのため。
誰よりも尊い主のためにアキラはすべてを捧げ、すべてを懸け、すべてを捨て、すべてを得るのだ。


なによりも尊い、シキのために。

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書きかけお題を少しずつ消化。
初ED2です。
その割にはアキラが…うぅむ。研究しなければ!

*********

盲目な程に、一途に


月も中天を過ぎ、だんだんとその身を西へと傾け始めたころになっても城の執務室の灯りが消えることはない。

「総帥、そろそろお休みになられてください」

シキが決済を行った書類を種類ごとに選り分け、必要なものには押印をする手を休めアキラが言った。
ゆったりとした革張りのチェアに深く腰掛け、リラックスした状態ではあるが仕事を始めてそろそろ10時間になる。その間一切の休憩を挟まず(片手間に食事は摂ったが)シキは黙々とペンを走らせている。
シキの手を煩わせるものが少しでも減るようにとアキラはシキの署名が必要な最低限の書類しか渡していない。
それ以外はシキにわたる以前にすべてアキラが処理していた。
それでもこの地を統べるシキの仕事は一向に減る気配を見せない。
それこそがシキの地位を体現している。

最近、各地に広がる反乱分子が不穏な動きを見せているため、シキもアキラもここのところ満足に睡眠を取っていない。
その対応、軍の配備ならばともかく、なにより面倒なのは書類だった。
反乱分子などシキが行って切り捨てれば軍を送るより何倍も早いのだろうが、トップに君臨した今ではそうもいかないのだった。
睡眠時間はよくて3、4時間。
悪ければ1時間程度だ。
シキの睡眠時間がその程度だということはもちろんアキラも、である。
シキが手を止めぬ限り、アキラは決してその傍を離れようとはしなかった。
それは健気なほどの献身だった。
何よりもシキを優先することを至上とするアキラはシキの傍にいるときがどんなときよりも美しい。
アキラに憧れる兵がいるのも頷ける。


それにしてもここ何日か、さすがにアキラはシキの体が心配だった。
己よりもきちんと鍛え上げられた体であるのは分かっているのだが、それでもシキはアキラより遅く寝入り、アキラより早く目覚めるのだ。
いったいいつ休んでいるのか、誰よりシキの近くにいるアキラでさえきちんと把握できてはいない。

「お前は先に休め。俺に付き合う必要はないといったはずだが?」

アキラのほうをちらりとも見ずにシキが返す。
シキとしてはアキラの体のほうが心配なのだが、それがアキラに伝わっているはずもない。
それに、主を置いて先に休むなどアキラにできようはずもないのだ。
それと、とシキが言葉をつなぐ。
「二人の時には名で呼べといったのをもう忘れたか?」
ぐ、と言葉につまったまま、綺麗にそろえた書類の角を意味もなくアキラが弄う。

「…申し訳ありません」
搾り出すような声にまたしてもシキの方眉がぴん、と跳ね上がる。

「アキラ」
一際低くなった声にぴくりとアキラの肩が揺れる。
周りに誰もいないとき、シキはアキラに敬語を使われるのを嫌った。
アキラはもう何度もシキに注意をされてきたのだ。
それでも不器用なアキラはなかなか上手く切り替えができずにこうやってシキに叱責されるようなってもう大分経つ。

「………悪かったよ」

小さな声はそれでもシキの耳に届いて、そうしてようやくシキの口元にかすかな笑みが浮かぶ。
「いい子だ…あと30分したら切り上げるぞ。お前は俺が休まない限りやめそうにないからな」
タイに指をかけて少し緩めながらシキが嗤う。

「…わかった」
シキとは目をあわさないようにしながらもアキラの意識は常にシキに向いている。
シキはもちろんそのことに気づいているからこそ、アキラが己のほうを見なくとも今は何も言わないのだ。

 


もっとも、アキラを抱えたシキが執務室を出てくるのも、もう時間の問題なのだが。



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あとがきは「つづき」から。

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