忍者ブログ
唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
  • /04 «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • » /06
カレンダー

04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

カウンター

フリーエリア

キリ番は500単位で受付中です。
お礼SSを書かせていただいてます。
踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
リンクフリーです。
バナーはお持ち帰りくださいね。


リンク
カテゴリー
最新コメント
最新記事
バーコード
RSS
ブログ内検索

最古記事
最新トラックバック

アーカイブ
アクセス解析
アクセス解析
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

先日のキリリクの際の没作品…。
というか同じ話の流れで書いてたんですけど、長い上に纏まりそうに無かったので没になったのでした。
"彼"はアキラに殺された"彼"ですよ。
こっちのお話はこれからアキラが監禁(笑)されたりシキが助けにきたりするのでした。
まだこの段階では"彼"はシキに殺させようかな、なんて思っていました。
それからシキとアキラの対話になるので超長ッですよね。

まぁ暇つぶし程度にでも思っていただければ幸いです~。
タイトルはないですよ。

**********

*no title*


アキラは表情を変えることなく、黙々と仕事に没頭していた。
書類の束をトントン、と机で軽くそろえシキから決済された書類を下へと送り返す区分の仕事だ。
今日は朝から延々とこの作業が続いている。
というのも定例報告会や、来月のための外交書類をまとめておかねばならなかったり、と月末(つまり今だが)は急がしく、またシキの遠征が被り決済が遅れたことも起因して目の前の膨大な量の書類が出来上がったのだった。
その枚数は相当なもので、いつもなら一人でこの作業をこなすアキラも今回ばかりはあまりの量の多さに圧倒されて部下を一人、助手として呼んだのだった。

ふ、と息を吐いて首を軽く回す。
慣れているとはいえやはり疲労は出てくるものだ。
アキラは傍らでまたしても作業に徹する"彼"に声をかけた。

「…少し休憩にしよう」

アキラの部下の中でも特別有能な男だ。
賢く(というよりは頭の回転が速いのだろう)、そして剣の腕もなかなかにたつ。
アキラが目をかけている数少ないうちの一人だ。

「では私は厨房に行って紅茶をもらってきます」
「あぁ、すまない」

仕事を頼むときは大抵を彼に任せるため、アキラがコーヒーよりは紅茶が好きということまで彼は知っているのだった。

"彼"を見送って、アキラはぐっと背筋を伸ばした。
今頃はシキはきっと部下たちに取り囲まれて、内心では退屈しながら軍議を開いているはずだ。
「……シキ」
アキラはそっと囁いたあとに満足げに顔を僅かにほころばせ、チェアにゆったりと腰掛けた。


「シェフがぜひアキラ様に、というのでマドレーヌを預かってきました」
さわやかな香りを放つオレンジペコーと、小皿に品よく並べられたマドレーヌとがアキラの前に置かれた。
陶磁器のカップに鮮やかな紅が映える。

「いい香りだな」

そうやってアキラと"彼"はひと時の安らぎを共有する。
僅かな休息でも、それをいかに効率良くとるか、というのが最近のアキラの課題だ。
効率のよい休息は効率の良い仕事につながるということを先日主に諭されたばかりだったからだ。

一口齧ったマドレーヌは確かに甘さが控えめに作られており、小食のアキラにしては珍しく2つも食べた。

「シェフが喜びますね」
「美味かったといっておいてくれ」
「えぇ、伝えておきます」
微笑みながら"彼"がうなずいた。

「…そういえば最近、トウホク…のほ…う…!」
アキラは不意に襲った眩暈にソファの肘掛をぎゅっと握ってやり過ごそうとする。
視界が白く染まり、そして急激に明度が落ちていく。
ぐらりぐらりとゆれる景色に瞳孔が収縮を繰り返し、ちかちかと光が目に痛い。
「…っ」
顔をあげれば、こちらを見つめるどこか哀しげな"彼"と目があった。
「…薬を…盛ったな…」
ぴりぴりとした刺激が全身を駆け巡ると同時にアキラはひどく体が重くなったように感じていた。
「…すぐに楽になれますよ。睡眠薬に痺れ薬が混ざっただけですから安心してください」
その言葉通り、痺れだして感覚の徐々になくなっていく手足にアキラは小さく悪態をついて腰に佩いていた短剣を抜く。
それでソファを刺し、なんとか体を支え体勢を保った。
「…」
物言わぬ"彼"にアキラの鋭い視線が突き刺さる。
「……お許しください…」
「…何の…真似だ」
霞む視界でアキラは"彼"をにらみ続ける。
「あなたには人質になってもらいます。…われわれは総帥に反旗を翻す」
「…っ、馬鹿なことを」
言葉を吐き捨てたアキラから"彼"が短剣を奪う。
それは優しい手つきであるにもかかわらず、アキラはさしたる抵抗もできなかった。
支えを失って後方に体が傾ぎ、背もたれに寄りかかる。
「ですから、あなたが必要なんです。あなたは唯一、総帥が傍にいることを許したお方。それは完全なる総帥の唯一の隙でもあります」
「……ふざ…けるな」
己が総帥へと仇なすものへの助けになると思うだけでアキラの負の感情は膨れ上がった。
「われわれには…あなたが必要です。…そして、これも」

細い切っ先が感覚のないアキラの手のひらに埋まる。
ぷつりと皮膚を破って珠玉がみるみるうちに盛り上がる。
アキラがその身に宿す、非ニコル。

なによりも皆がこぞって手に入れたがる、ニコルと相反するもの。

そのキャリアーであるアキラはニコルを制圧する際には欠かせないものなのだ。
"彼"が妖しく笑い、その血を、ウイルスを舐めとった。
感覚のないアキラはただ不快な温度だけを感じ、眉をぎゅっとこれ以上ないほど寄せた。
(あぁ、"彼"はニコルを投与していないのだった…)
ぐっと唇をかみ締めて、遠ざかりそうになる意識を引き戻す。
徐々に顔が青白くなるアキラはそれでもまだ抗っていた。
そしてアキラは"彼"が奪った短剣を僅かな隙を突いて取り返し、すばやく己の腿へと刺した。
深々と刺さったそれが瞬間的にアキラの意識と感覚とを冴えさせて、アキラは"彼"にそのナイフを投擲する。

…そしてそのままアキラはくず折れた。
腿から鮮血があふれ出し、すぐにアキラの軍服を染め、絨毯へと染み渡っていく。

「おっと…まだ動けたとは…驚きですね」

危なげなくそのナイフをかわし、アキラを抱きとめる"彼"の声には殆ど賞賛のような響きが混じっていた。
「…アキラ様…」
"彼"はアキラを抱き寄せてその首筋に口付けを落とした。


そして。

 

「お待ちしておりました…総帥」

穏やかな彼の双眸がすっと細まった。

**********

拍手[5回]

PR

25日に変更した拍手お礼の微妙な続きをアップしました。
ですからもう一作品こちらにおろしてきますね。


なんだかまとまりなくて申し訳ないです。
来月頭まではまた忙しいんですよねぇ。

がんばって更新したいな!

********************

*あたたかなもの*

 

きらきらのきれいな世界なんていらないよ。

シキと、俺。

それだけでいい。

それだけがいい。

シキが俺に約束してくれた。


シキの世界を見せてくれるって。
たぶんいつかはニホンだけじゃなくてその外へだって。
だからそれがどんなものなのか、俺はすごく楽しみにしてる。

「シキの世界…」

俺はその隣にいれるのかな。
シキが見せてくれるって言ってくれたってことは、俺はシキの傍にいてもいいってことなのかな。
そうだといいな。

きらきらしてるのはきれいだけど飽きちゃうんだ。
陽に反射するガラスとか、シキの色に似た宝石。

全部全部いらないから、シキだけほしい。


シキシキシキ。

 

何度目か分からないほどその名前を呼んで、俺は今日もベッドにもぐる。

 

 


シキのいない城はすごく寒い。

 

拍手[0回]

拍手お礼にひとつお話を追加しました。
それに伴いましてひとつログをこちらにおろしておきます。

お礼の方は不安定なアキラが書ければいいかなぁと思ってやってみました。
ED3ではありえるかな、と思います。
ED2では無いと思う…んですよ。
何の話か分かりませんよね(笑)

ぜひぜひぽちっとボタンを押して読んでみてくださいませ。

********************
身体部位10のお題:そのに

04 鎖骨

普段シキはアキラの眠っている間に入浴することが多い。
しかし今日は偶然にもシキの入浴中にアキラが覚醒した。

シキにひどく抱かれていたせいでふらふらとおぼつかない足取りで、それでもシキを求めてアキラは半分寝ぼけながらも主のためにしつらえられえた広い浴室へとたどり着いた。

「…し…き…?」

水音の反響する浴室の目の前。
ドアを遠慮なく開けて、アキラは足を踏み入れる。

「…起きたのか?」
「ぅん…」

湯船の中からシキがアキラに問いかけるもアキラはどちらともつかないような声で返しただけだった。

「…それともまだ寝てるのか、お前は」
「ん…ぅ」
「おい」
「しきぃー」

腕を伸ばしてきたアキラをため息とともにシキは湯船へと導く。
シャワーをとると、シキはアキラの頭上から勢いよく水をかけた。

「っわ!」

ぱち、と。
アキラの目が開いてなんども瞬きをする。

「やっと起きたか」
「…うん」

今度はしっかりとした声で返事が返ってきたのを確認するとシキはシャワーを放り投げた。
硬質な音を立てて転がるそれをアキラの目が追う。

それにしてもずいぶんと痩せたものだ、とシキは目を僅かに眇める。
以前はぴんと張り詰めたしなやかな筋肉で覆われていた腹、腕、脚。
今ではすっかりと筋肉は落ち、緩やかな稜線を描いてアキラの輪郭をかたちどっていた。
鎖骨の窪みにたまった湯。

きちんと食事を取らせなければならない、とシキは眉を寄せる。

その間にもアキラはシキの膝の上にあがり、その肌にぴとりと身を寄せた。
熱気でしっとりとした肌は密着度をさらに上げているようだった。

先ほどまでの交わりでアキラの鎖骨に己がつけた歯形をシキがなでる。
くすぐったそうにアキラは小さく笑うと、シキの鎖骨にその柔らかい唇を押し当てた。

瞬間小さな刺激がシキを襲う。

「おかえし…シキは赤が似合う」

唇を離したアキラが無邪気に笑う。
シキの鎖骨にはアキラがつけたキスマーク。


「まったく…まるで飢えた獣だな?」

愉快そうに喉を鳴らすシキの胸に耳を当てるとアキラもまた笑う。
こうやって鼓動を聞くのがアキラは好きだった。

 

「シキほどじゃないよ」

アキラはふふふ、と笑ってそっとその赤いシルシをなぞった。 

拍手[2回]

スズカ様へのキリリク小説です。
リクエストは「ストイックエロなシキアキ(ED2)」でした。
…ストイック………。
とりあえずあとはあとがきにてっ。


*loyalty*


アキラが男を斬った。

アキラの部下だった男だ。

アキラが目をかけ、いろいろな仕事を任せていた男だ。


シキの前まで引きずり出された男は抵抗したときの名残であろう傷を体のいたるところに負っていた。
そこにきっちりと軍服を着込み、髪を整えた青年の面影はどこにも見受けられない。
それほどにやつれ、疲れきったような風体で、それでもその瞳はしっかりとシキを睥睨していた。
ぎらついた瞳に宿るのは憎悪、それだけだ。

「…」

シキは"殺せ"とも"斬れ"とも言わなかった。
ゆったりと座ったまま、ただちらりとアキラを見ただけだった。
それでもアキラはシキの意思を違わず汲み取り、男を、斬った。

 

その男は謀反を起こそうとしていたのだ。
よりによってシキを倒そうと、していたのだ。

シキを至上とし、付き従うアキラが許すはずもない。

すらりと美しい剣を抜き、躊躇わずアキラはその男の首元に刃を滑らせれば、吹き出た血がアキラの顔、シャツ、ネクタイ…そういったものを一瞬で紅に染め上げる。
ニコルを服用していたであろう男のそれにもアキラは僅かに目を眇めただけで、表情に変化は見られない。
血を拭うこともせず、ただそこに立っているだけだ。
アキラの足元で、男がピクリと、動いた。
首元から間欠泉のように出血していても、男はまだ生きていた。
アキラは完全には殺さなかったのだ。

無表情のまま瞬間、アキラはしっかりと血濡れの男を見つめ、すっと剣先をその胸に充てた。

男が、笑う。
ごぼ、と血を吐いて、それでも。
浮かぶのは純粋な、笑み。

そうして…アキラの剣が男の胸へと吸い込まれていった。
音もなく、ただ男の心臓を貫いた。

男の体が一度跳ねて、止まる。
絶命したことを確認するまでもなく、アキラは剣を引き抜き血糊を振り落とした。
そしてすぐに、どこからか差し出された布で刀身を綺麗にふき取った。

凄惨な、しかしここでは良く見る景色の中にアキラはたたずむ。
その身を赤に浸していても"高嶺の花"と称される気高き美しさが劣ることはない。
むしろ赤はより一層アキラを彩り、アキラの全身から出る、ぴんと糸を張ったような緊張感をより際立たせた。

アキラの剣が鞘に戻ると同時にシキが立ち上がり、ただ"片付けておけ"とだけ言って出口へと歩を進める。

「アキラ、来い」
「…はい」

血塗れた姿のまま総帥につき従うアキラに皆、一様に言葉を奪われ、張り詰めた空気の中ただ二人のために道が開く。

 

 


「…なぜ一太刀で殺さなかった?」
シキの執務室に戻ればただ面白がるようにシキがたずねる。
「…殺すつもりでした。でも苦しませて死なせるのが順当だと」
「お前はすぐに血にあてられると分かっていだだろう?」
アキラがニコルを服用しているものたちの血液を浴びると、まるで酩酊しているかのような症状を引き起こすことは既に分かっていたことなのだ。
それは非ニコルのキャリアーであるせいだろう。
もっとも、比較対象がいないので断言はできないのだが、ここ数年で適合率が上昇したことが原因のようだった。
しかしそのような状態になると分かっていながら、アキラは血を浴びるであろう首筋をまず、斬ったのだ。

その血のせいで今もアキラの心拍数は僅かずつながら上昇をはじめ、それに伴って体温も高くなってきているのが目に見えて分かる。
淡く高潮した頬に、潤み始めた瞳に、引き寄せられぬ男などいるだろうか。
この姿を見せぬためにシキはアキラを連れて部屋まで戻ってきたのだった。
アキラの頬にはねた血をシキの手が優しくぬぐい、その肌の温度を確かめる。
確かにいつもよりも火照ったような熱に表情を変えぬままシキは幾度か手のひらを滑らせる。
アキラはそれだけでぴく、と小さく震え、シキを喜ばせた。

ふ、と笑ったシキはすぐにアキラを浴室へと押し込む。
「それはやく洗い流せ。俺はその匂いは好まん」
そういわれて初めてアキラは自分がまだ血を浴びた姿のままであることを思い出した。
純粋なニコルのキャリアーであるシキはニコルを服用した者の血がひどく鼻につくのだという。
それは以前からニコルという存在を憎んでいたからかもしれないし、己のうちに潜むウイルスの真の姿を知っているからかもしれない。
「…っ、失礼しました」
慌ててアキラが礼をとり、服を脱ぎはじめた。
血に染まったシャツが肌に張り付く感覚が不快で、アキラは眉を寄せたまま手早くそれらをまとめてダストシューターに放り込んだ。

 


「総帥…ッ」
風呂から上がったアキラはベッドに腰掛けたシキがアキラの刀を手入れしているのを見て慌てて駆け寄った。
「そのようなことは俺が」
「暇だっただけだ、気にするな。それより座れ」
ぽたり、と髪の先から水が滴るのもかまわずにアキラはシキに応じて床へと座った。
シキがアキラの刀で、その鞘の先でアキラの頤を上げさせる。

「そういえば……笑っていたな」
「…」
思考力が徐々に鈍ってきていたアキラが瞬きをひとつして、何の事か、とシキに問う。
「あの男だ。お前に斬られる時に、笑っていた」
その言葉を聴いてアキラは思い出したくもない、という風に視線を床へと落とした。
シキがその顔をさらに上げさせる。
「…っ」
気管をふさぐ様に喉仏の上から鞘を押し当てられてアキラは小さく咳こんだ。
「あの男は達成したのだ…忌々しいことだが」
「…達成…ですか?」
意味を量りかねて、アキラはよく回らない頭で思考する。

「…お前は知らなくていいことだ」

…あの男が、アキラを想っていたなどと、そんな情報をシキはアキラにやるつもりは毛頭なかった。
アキラに想いを寄せる故の謀反であった、と。
アキラを所有物として傍に置くシキへを憎しみを向けて、ただアキラに殺されるために謀反を起こしたなどと。
そんな事を言うつもりはなかった。

殺される瞬間の、あの男の幸福そうな顔を思い出すだけで腹の底から黒い感情がふつふつとわきあがってくる確かな感覚をシキは感じていた。
男にはアキラを決して手に入れることはできない、と分かっていたはずだ。
それにシキを殺せるはずもない、ということも。
だからこそアキラに最も信頼された部下という立場ではいられなかったのだろう。
アキラの瞳はけっしてシキ以外に向くことはないと、傍にいればいるほど分かっただろうから。
だからこそ男はアキラに殺される道を選んだのだろう。
殺される、その刹那。
その瞬間だけはアキラは悲しみと喪失と怒りと憎しみの瞳で男を見つめるのだ。
加えて、あわよくば部下を殺したという傷をもアキラの中へと残すことができる。
…そして、少なくとも男は目的を達成した。
シナリオ通りにアキラに殺されるという、最大にして唯一の目標だ。
……男は実現してみせた。

あの笑みは純粋なものでありながら同時にシキをあざ笑っているかのように感じられた。
『どうだ、俺も"アキラ様"を手に入れた。あなたには決してできない方法で』と。
それがシキには腹立たしくてならなかったのだ。

(あれは俺の所有物だ。それ以外の何者でもない)

「お前の所有者は誰だ?」
幾度となく繰り返される同じ問いに、アキラはいつも同じ答えを返す。
いくらその質問が唐突であろうと関係ないのだ。
いつも同じ答え。
「総帥、俺にはあなたしかいません。あなたが許してくださる限りずっとお傍におります」
そうしてアキラはシキの指先にそっと口付けた。
恭順の口付けだった。
真摯な声と、忠誠を誓う行為にシキの口元が満足そうに弧を描いた。
「良い答えだな」

はにかむ様にちいさく笑うアキラをシキは優しくなでてやる。
体温が高く、呼吸の浅いアキラはいつになく扇情的だった。
「来い、可愛がってやろう」
その言葉にアキラは一瞬目を見開いて、すぐに微笑みながらうなずいた。


「…っん」
アキラが着替えた清潔な軍服が次々と崩されていく。
シャツのボタンはすべてはずされ、ジャケットは床へと放られている。
白い肌のところどころにはシキのつけた跡が赤く残っている。
ベッドの上でシキのものを咥え丹念に奉仕するアキラの姿はいつでも献身的でいつでも妖しいほどに美しい。
時折いたずらに体を這うシキの手にアキラは素直に反応を返しぴくりぴくりと体が跳ねた。
今の血に酔った状態ではその感度も上がっているのだった。

「もういい…アキラ、準備は一人でできるだろう?」
そう言ったきりシキは多くの枕やクッションへ上半身を預け、ただ傍観する姿勢をとった。
いつもよりひどく乱れているアキラを見ていたかったのだ。

突然に奉仕をやめさせられただけでなく、いつもと違う要求にアキラは僅かに逡巡したが、そもそもアキラにはシキの言葉に従うという選択肢以外はないのだ。
その後孔にゆるゆると指を伸ばしゆっくりとほぐしていく。
さしたる時間をかけることなくアキラのそこはその指を飲み込んだ。
くちゅりと、淫猥な水音が響きだす。

「は……ん…っ…ぅん…」

瞳を閉じて徐々にアキラはその快楽へと身を投じようとしていた。
それでも最後の理性がアキラの声を押しとどめようとする。
その唇のあわいから漏れ出る甘い喘ぎにシキの口の端が更にあがる。
「どうした、今日は随分と淫らだな」
「…っ!」
現実に引き戻されたようにアキラの目が見開かれ、シキの視線に絡めとられる。
血に濡れたかのような深紅の瞳に捕らえられ、目をそらせない。
「ぁ…」
今にも泣きそうなアキラの表情にシキは言いようのない悦楽に駆られ、アキラを己の膝の上へと導いた。
その首筋から人差し指でアキラの体をたどる。
緩やかに、締まった体を撫でる。
そしてたどり着いた先は…臍のピアス。
「…んん…っ」
ぎゅっと目を瞑り襲い来る快楽の波をやり過ごそうとするアキラをシキは容赦なく追い詰めていく。
すっかりと肌になじんだそれは今ではもうアキラの体の一部となり、そして性感帯となっていた。
疼き、そしてくすぶる感覚に、血を浴びて高揚したアキラは一層と身をよじった。
「目を瞑るな」
耳元で囁くシキの声に、聴覚までもが犯されていくような甘い感覚にアキラはもう抗えない。
そういうふうにアキラはシキによって変えられた。
否、アキラが望んで変わったのだ。
アキラはシキのためにすべてを捧げる、そうして生きてきたのだ。
あの日から、トシマを出たあの日からアキラはただシキの傍にいることだけを考えて生きてきた。
だから迷わず、あの男も斬ったのだ。
ただ仕事ができる男だというだけで多くのものを任せていたに過ぎない。
その男が、謀反を犯し、シキに反旗を翻すというならアキラは何度でも、誰であろうと殺すことができるだろう。

 


「…し…き…っ」
アキラがとうとう呼んだ名に応えるようにシキはアキラを組み敷いて、己の屹立したものをその内部へと埋め込んだ。
「最初からそう呼べばいい。…部屋に入ってまで総帥などと下らぬ名で呼べといった覚えはない」
「…んぁっ……ゃ…ん…ん…ぅぁ」
揺さぶられるたびに甘く啼くアキラをシキは更に追い上げていく。
「…お前は俺のものだ…そうだろう?…この血液が、細胞が、俺を求めている」
「…う…ん…ぁ」
シキにはもちろん殺された男など、そんな影をアキラの中に残す気はない。
「…俺の血の中のニコルを…お前は感じるだろう?」
「…ぁ…」
アキラはただ首を小さく振ってうなずいた。
荒い息遣いのその合間に何度も何度もシキの名を呼ぶ。
「…なにも恐れることはない」
そう言ったシキの犬歯が、アキラの首筋の柔らかな肌を食い破った。
つながった血を頼りに、シキとアキラはただ前進していく。
何も省みることなく、ただ突き進むシキにアキラはついていくのだ。

それだけなのだ。

シキがベッドを降りて、乱れた服を調え始める。
「そうす…シキ…?」
あわてて呼びなおしたアキラにシキは振り向いて応じる。
起き上がった途端に顔をしかめたアキラを見て薄く笑った。
「まだ寝ていろ。体温が高い」
「しかし…っ」
「寝ていろ」
「…………はい」
アキラは大人しくシキに従い、その身を再び横たえた。
「すぐに戻る」
シキには後始末が残っていた。
残った謀反人たちの処分だ。
アキラが殺したのはその首謀者に過ぎない。
長引かせることはなにより面倒だと分かっていた。
なんといってもこれでアキラが「自分が責任を取って…」などと下らぬことを考えるかと思うとそれだけで面倒ごとは早く片付けなければ、と思うのだった。
「…いってらっしゃいませ」
部屋に一人取り残されたアキラは幾度目かの寝返りを打った後、火照った体を覚ますように大きく息を吐いた。
「……シキの傍にいたいだけなんだ」
だから、誰だって行く手を阻むものは消してみせるのに。
アキラの呟きは本人にも聞こえることはないほどに小さなものだ。
「…それだけでいいのに」
アキラはそっとシキが噛み付いた首筋を撫でた。
まだ新しい傷跡は甘い痛みを伴って、アキラの感覚を支配する。

シーツに残るシキの匂いやぬくもりを感じながらアキラは目を瞑る。
知らぬうちに疲弊した体が休息を求めていた。


「…お傍に、おります」


それだけをそっと言葉にして、アキラはシキが帰ってくるまでの眠りについた。

**********

拍手[6回]

なんだか最近書き込み頻度がひどくてすみません…。
ただいまキリ番小説を執筆中です~。

ED2は楽しいですけど、時間がかかりますね;;
アキラの性格がいまいち把握できません...っ。
訓練ですねorz

ストイックさを追及しながらどんどん逸れていっている予感☆

…もう少しお待ちくださいね~。
発掘した小説を投下していきます~。

****************

*溶け合う、熱*


星を数える。

ひとつ、ふたつ、みっつ。

「…」

満点の星なんて見えない、トシマの空。

たまに雲が途切れて、少しだけ見えるから、それをまた数える。

べつに何の意味もない…けど。

「…起きたのか」

シャワーを浴びて寝室に戻ってきたシキが意外そうに俺に声をかけた。

「うん。目…覚めた」

さっきまで俺は寝てた、から。


「…風邪をひきたくなければ何かを着るか布団に入るかしろ」

そうだね。
窓際はすごく…寒い。
…寒いね。

「うん…ベッドに戻るよ」

まだすこしだけあったかいシーツと毛布の隙間に潜り込んで、シキを待つ。


少ししてシキがベッドに入る。
俺の、隣。

シャワーを浴びたばっかりだから俺よりもすごくあったかい、シキ。
冷たい足をシキの足に絡ませれば、シキがぎゅっと眉を寄せた。

「…冷たい?」
「お前が俺を暖かいと感じているなら俺はお前を冷たいと感じるとは思わないのか」
「…?」

ん?って首をかしげて笑う。
シキってたまにすごく意味のわかんないことをいうんだ。

「はやく寝ろ」

シキはわかってない俺をふん、って嗤って(何か言われるかと思ったけどさ)それだけ言った。

「…おやすみ、シキ」

俺は眠くなくてもシキの隣なら、寝れる。
だから、きょうも俺はシキの傍で目を閉じる。

夢は見ない。

絡めた足から伝わってくるシキの体温を感じながら、俺はそっと意識を手放した。

拍手[0回]

BACK * HOME * NEXT
BrownBetty 
忍者ブログ [PR]