半年振りでとても申し訳ないです~。
やっとかけました。
またちょこちょこと修正が入るかもしれませんが一応暫定版です。
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*afterglow-06*
アキラがベッドの上で色とりどりの紙を並べていた。
「その折り紙どうしたの?」
「…もらったんだ」
そう、とリンは頷いて。
誰に、なんて聞きはしなかったが。
アキラのそばにあるその色紙を一枚手に取ると器用に紙を折りたたんで鶴をアキラに手渡す。
「ほら、鶴ができた」
「ツルってなに?」
「鳥だよ…ニホンにもいるんだって。俺は見たことないけどね」
今もいるのかな、とリンは小さく呟いた。
荒れてしまったニホンに鶴はいるのかリンには見当がつかなかった。
「これを願いをこめながら千羽折るとその願いがかなうんだって」
「そうなの?」
「って言われてるね」
くす、と笑ってリンはアキラの髪を梳いてやった。
アキラは何かを考えるように暫く黙ってうつむいた後にリンをまっすぐ見つめた。
「リン、教えて…?」
「うん…いいよ」
そう言ってリンは微笑んだ。
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いつものようにリンは仕事を追えて夕食のワゴンを運びながらアキラの部屋へと足を運んだ。
「アキラ、入るよ」
「………リン?」
「そうだよ」
からから、という銀色のワゴンの音がベッドの脇でぴたりと止まる。
アキラはシーツに投げ出していた身をわずかに起こした。
鎖骨どころか肋骨までうっすらと浮かび上がるその白い肢体は目に毒だと、いつもリンは思う。
今まで何人もアキラに手を出してシキに殺されたのだという話を噂で聞いたがそれも仕方がないのかもしれない、と。
アキラの白い肌は病的なものではなく、ただそのアキラの色香をいっそうと増しているだけなのだから。
「アキラ、体調はどう?今日は少し顔色がいいね」
「具合なんて…悪くないよ」
ふるふるとアキラは首を振ってリンの言葉を否定する。
それでも実のところアキラはこのところ体調を崩していた。
微熱が続いていたアキラにリンは気づかれぬように薬を飲ませていた。
「うん…そうだね」
ゆっくりとその髪を梳いてやるとアキラはわずかに目を細めた。
「ねぇ…お外…連れてって?」
「外って…中庭?」
アキラのための中庭。
シキがアキラに作らせたらしいそれはいつも綺麗に手入れがされている。
刈り込まれた柔らかな芝生、季節の花が咲くそこはアキラのお気に入りの昼寝場所でもあった。
「ん……そう」
「でももう日が落ちかけてるし…外は寒いよ?」
「いいの…おねがい…リン。……紅い花が…みたい」
リンは滅法この"おねがい"に弱かった。
おねがい、なんて滅多にないことだからこそ。
「そうだね、じゃぁ夕飯を食べたら連れて行ってあげる」
夕飯…とアキラは首をかしげた。
「そうだよ。ほら、今日のデザートはアキラの好きな苺だよ」
うん、とアキラは頷いてしぶしぶといった具合にその細い指先でスプーンを手に取った。
アキラが食べ終わるまでリンはずっと傍でそれを手伝っていたが、食事の半ばでアキラは不意にぴたりと手を止めた。
今まではゆっくりながらも何とか食べていたのだが。
不思議に思ってそっとアキラを見ると目を半ば閉じかけているところだった。
「アキラ…?」
そっとその手からスプーンをとって呼びかけると、アキラは一度ゆっくりと瞬きをした。
長い睫に縁取られた瞳が潤んでいた。
「リン………眠い…」
「そう…じゃぁ…眠るといいよ」
リンはゆっくりとアキラの髪を梳かすとそっと微笑んだ。
「すごく……眠いんだ」
「うん、おやすみ、アキラ」
しぱしぱと瞬きを繰り返すアキラの目を手で覆うとかくん、とアキラの体から力が抜けるのがわかった。
リンはそのままアキラをゆっくりとベッドに横たえる。
こういうことは良くあった。
定まった時間に就寝せず、起きたり寝たりを繰り返すせいでアキラは突然眠りについたりするのだ。
「疲れてるんだよね…アキラ。シキを…ずっと待ってさ」
消息さえつかめないと…いうのに。
「よい夢を…アキラ」
その額にそっと口付けたリンは夕食を片付けて部屋をそっと後にした。
月がちょうど中天に昇るころアキラは何か違和感を感じてうっすらと目を開けた。
体がひどく熱かった。
緩やかな快楽と同時に体の奥に潜む熱。
「ん…っ」
その目が捕らえたものは己の体に口付けている男の姿だった。
ひどく頭痛がした。
目が冷め切らないせいかどこかぼんやりとしたまま何度か瞬きをする。
「…だれ?」
その声に男ははっと顔を上げた。
どこか恍惚とした目に混じるのは…ラインの鈍い光。
「……アキラ…さま」
二人の視線が絡んですぐにアキラが身をよじる。
早く、逃げなければ、と。
もはやアキラにはシキ以外に抱かれてやる気などなかった。
以前そうしていたのはただの戯れだ。
シキにただ構ってもらうための。
今はそんなことをせずともシキはアキラのことを気にかけて抱いてくれる。
だから、もう必要ないのだ。
それはすぐにその男によって阻まれてしまったが。
腰をぐっと掴まれればアキラにはもう身動きが取れなかった。
既に散々弄られていたのだろうアキラの半身は緩やかに頭を持ち上げていた。
すかさずそこを咥え込まれその白い喉をのけぞらせる。
「っぁ……やだ……っ」
男がうっとりとその細い腿を撫でてその内側に吸い付いた。
「アキラさま…一度…こうしたかった。こうやってあなたを抱く日を何度夢見たか…シキ様の居られるときには適いませんでしたが今なら…。食事に睡眠薬を混ぜて正解でした。リン様の目をかいくぐるのは難しかったですが」
苦労しました、とその男はさわやかに笑った。
快楽に慣れて溶けきったアキラの体はすぐにその甘い痛みを受け入れる。
徐々に脳が解けていくような感覚。
枕もとのシーツを掴んでアキラははぁっと熱い吐息を吐いた。
「やめろ…っ」
「アキラさま…」
「んぁ…っは…ぁあっ…」
熱い猛りを押し込まれて苦しさに明の目じりに涙がにじむ。
「シキ……」
知らずと無意識のうちにアキラの唇がその主人の名をつむぐ。
「シキ様は…もう居られないというのに…なぜ…その名を…呼ばれるのですか?」
「シキが…いない?…っぁ…シキは…出かけてるだけ…だ…っ」
腰が打ち付けられるたびにアキラは霧散しそうに成る意識を必死に繋ぎとめる。
考えがまとまらない。
シキが…いない?
もちろんこの城に、今はいない。
遠征に出かけたからだ。
「シキ様は…もう何ヶ月も前に消息が途絶えたままです。遠征先で亡くなられたのではないかという噂も」
「嘘を…ひぁ…っん…つくな…っ」
忌々しいほどの快楽にアキラの思考は遮断される。
体はすっかりとほどけて溶けきって。
「決して嘘ではありません…幹部なら誰でも知っていることです。もちろん…リン様も」
この男は何を、言っているのだろう。
アキラはぎゅっと目をつぶった。
聞きたくない。
気持ち悪い。
「もっ…やめろ…あぁ…っ…ん」
細い腰を掴まれて穿たれるほどにアキラは段々とその快楽しか追いかけられなくなっていく。
シキが、死んだなんて…信じない。
シキは戻ってくるといったのだから。
いい子で待っていると、アキラはシキに約束したのだ。
片足を高く掲げられてより奥深くまで押し込まれればその背がしなやかに沿った。
「ぁっ…っ…」
首筋を這いまわる男の舌にアキラはわずかに眉を寄せた。
滑らかなアキラの肌を滑り降りては時折紅いシルシをその肌に刻んでいく。
「ぁあ…っ」
がつがつと抉られてアキラの耳にその声がもう言葉として届いていたかは怪しい。
ただその先の快楽を追ってアキラはただ喘ぎ声をこぼすだけだった。
「シキ様からあなたは…自由になるべきです…俺が…あなたを……っ」
そこから先の男の言葉は続かなかった。
その胸、寸分たがわず心臓の位置から刃の切っ先が突き出ていた。
一瞬信じられないように目を見開いて男はひくっと息を吸い込んだ。
その男がアキラの前に倒れこむ前にその人影は男の体を乱暴に蹴ってベッドから床に転がした。
いささか乱暴に体の中から熱を引きずり出されたせいでアキラは息を乱しながらその姿を見た。
窓を背にしていたせいで逆光でその顔までは良く見えなかった。
ただ軍服を着ていること、そして、武器は日本刀。
それだけしか、わからなかった。
「…シキ…?」
まるでその問いに肯定するかのようにそっとその頬をなでられてアキラはゆっくりと目を閉じた。
「ほら、やっぱり嘘だった…シキ……俺、いい子で待ってたよ」
「アキラ…」
「おかえり、シキ」
その首に腕を回して、アキラはにっこりと微笑んだ。
「………ただいま、アキラ」
そう言った男の髪は金色で、瞳は…赤ではなかった。
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あとがきは続きから
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