まだまだ続きます。
ちょっとずつアップできたらいいなと思ってます。
リンとアキラの会話をもうちょっと増やした…い。
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*afterglow-02*
リンは今日もその扉を開く。
かすかに軋むその扉を両手で押し開けて、今日もリンはシキになる。
誰にもぶつけられない感情を静かに殺して、リンはシキになる。
「アキラ…」
「おかえり」
ベッドの上でふふ、とアキラが笑う。
「今日もいい子にしてた?」
「うん…ずっと部屋にいたんだよ」
「…ねぇ……キスして」
「…いいよ」
アキラがリンの手をとってベッドへといざなった。
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リンは申し送りを受けるためにシキの寝室にいた。
執務室続きのその部屋はアキラの部屋でもある。
「シキ…出かけるの?」
「あぁ」
シキが遠征へいくときはこのやり取りが必ず行われるのをリンは知っていた。
「いつかえってくるの?」
「さぁな。二月はかかるだろうが」
シキは今回海外へと足を伸ばすのだ。
今までの国内への遠征と違い時間がかかることはわかりきっていた。
…アキラには行き先を告げていないが。
「ふたつき……長いね」
連れてって、といつものようにアキラが呟くのにシキは取り合わない。
「リンを置いていく。退屈はせんだろう」
「シキ…」
アキラがベッドの上で寂しげにその名を呼ぶ。
リンのほうなど見向きもしない。
「いい子にしていたら褒美をやろう」
ぎゅっとネクタイを締めるのをじっと見つめてアキラが頷く。
「ご褒美…」
「そうだ」
「うん…いい子にしてる」
少しだけうつむいてアキラが小さな声で呟いた。
「キスして…いい子にしてるから。キスして…シキ」
細い細い両腕を精一杯伸ばしてアキラはシキを求める。
シキはふっと笑ってベッドへと腰掛けた。
「帰ってきた時にとっておけ」
「じゃぁいい。俺がする」
アキラはそういって自らシキへと口付けた。
別れを惜しむようにアキラの口付けは続いた。
いつの間にかシキが主導権を握っているが、もうそんなこと気づいていないだろう。
シキの口付けは噛み付くようにひどく荒々しい。
「ん…ぁ…ぅ…」
そしてそれは唐突に終わる。
「いい子にしていろ」
そうしてアキラはまたひとり、部屋に残される。
リンは時間のあるときはなるべくアキラの部屋へと通った。
アキラはいつも窓の外を眺めていた。
シキを…待っているのだとわかった。
「アキラ…ご飯食べないとシキに怒られちゃうよ?」
トレーの上に手付かずのまま残されたパンとスープサラダ、それからスクランブルエッグ。
アキラが食べやすいようにすべて小さめの器に盛ってある。
「うん…お腹すいてないんだ」
「スープだけでもいいから…ね」
差し出したカップとスプーンをアキラは受け取ってしばらくはじっとそれを見つめていたが、やがてあきらめたのか一口、二口とそれを啜った。
「アキラ、シキが帰ってくるまでまだ一ヶ月以上あるんだよ。シキが帰ってきたときアキラが痩せてたらご褒美もらえないかもよ?」
リンはそっとアキラの頭を撫でてやる。
アキラはただ頷いてまた一口、スープを飲んだ。
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