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唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
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キリ番は500単位で受付中です。
お礼SSを書かせていただいてます。
踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
リンクフリーです。
バナーはお持ち帰りくださいね。


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え…ログなの?
なんていったらいいんだろう。

んんん・・・。

*********************

*moon light*

 

月光がやわらかい光を惜しみなく注ぐ夜。
アキラは一人で窓辺に座って月を眺めていた。

ただ、何をするわけでもなく、体に巻きつけたシーツと戯れるように時折それをかき合わせる。

「シキは今なにしてるのかな」

はぁ、っとガラスに息を吹きかけて曇らせると無意味な模様を指先で描く。

「おきてるかな」

くすくすと笑いながらそのまま床に寝転ぶ。

「シキはひどいね。俺を絶対に一緒に連れて行ってくれない」

 

いつだってシキのそばにいたいのに。


いつだってシキって呼びたいのに。


 

拍手[1回]

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*momentary happiness*

すごくすごく久しぶりに夜中に目が覚めた。
薄いカーテンの向こうにぼんやり月が見えて、俺はまだ朝になっていないことを知る。
夜明けにはまだ遠い。

背中越しに、シキの気配。
耳を澄ますと息を吐き出す音だけが規則正しく聞こえる。

そうだ昨日はシキに抱かれて、それから…そのまま寝ちゃったんだっけ。
体…綺麗になってる。
シキが拭いてくれたのかな…?

それならなんで途中で目が覚めたんだろう。
抱かれた次の日は大体、昼まで眠ってるのに。

俺はそっと寝返りを打ってシキの寝顔を見る。
長い睫。
さらさらの黒い髪。
上半身は裸のまま俺のほうを向いて寝てる。

綺麗なシキ。

俺と一緒に被ったシーツから少し見える腕も胸も腹も俺とは違ってちゃんと筋肉がついてる。
引き締まった、体。
俺は筋肉なんて無くなっちゃった。
前はもうちょっとついてた気がするけど…どうだろう。
昔からシキは俺のこといつも軟弱、とか脆弱な体っていってたし。


シキが隣に寝てくれるの、すごく好き。
トシマにいたときはこんなこと絶対なかった。


今だってシキは俺より後に寝て俺より先に起きる。
だから寝顔なんて見れないけど。
目が覚めたらいないことなんてしょっちゅうだけど。

でもトシマのあの部屋と違ってシキはいつもこのベッドで眠る。
広い広いベッド。
俺が隣にいることを許してくれる。
それを考えると…とても幸せになる。

シキのその頬に手を伸ばそうとして止めた。
あんまり動くとシキは起きちゃいそう。
もったいないものね。


ねぇ、シキ。
もうちょっと見ていてもいいでしょ?

 


そう…月が沈むまで。

**********
あとがきは続きから~。

拍手[1回]

久々のシキアキ+カウ。
ほのぼの、ゆったりした感じを出せるようになりたい…な。

*******************

*petal shower*

シキは仕事中でなんだか難しい話をしてる。
俺にはよくわからないからつまらない。

 

シキのいない部屋で、そのベッドの上でつまんない、って呟く。
どうしたのって聞いてるみたいな顔をしてカウが俺の隣にちょん、って座る。
よしよし、って撫でてあげるとカウがにっこりしてぺろ、って俺を舐めた。

「つまんないね…?」

だからカウとおさんぽしよう。
ゆっくりベッドから降りてシャツを羽織る。
適当にボタンを留めて小さく伸びをした。
ベッドに座ったままだったカウに"おいで"って言うとぴくん、って反応して俺についてくる。

カウはいいこ。
俺の言うこと、ちゃんとわかってる。

ぺた、ぺた、って歩く俺のすぐ横にカウが並んで二人でゆっくり進む。
シキと一緒だと俺はシキに追いつけなくていつもちょっと小走り。
シキの腕とかコートとか掴んで一生懸命ついていく。
そうじゃないときはシキが抱き上げてくれる。

だから俺の隣を歩くのはカウくらいなんだ。

「中庭…いこ?」

誰も、俺達に声、かけないんだ。
シキが城にいるときはシキが怖いから、みんな俺と目をあわさない。
俺と"遊んだら"殺されちゃうから。

 

重たいドアを開けたらもうそこが俺の遊び場。
シキが俺のために作ってくれた…庭。

はしゃいだカウが芝生にごろんって寝転がるのを俺も真似する。
葉っぱと、土と花の匂い。
風が少し吹いてて、代わり映えしない曇り空。

芝生を体にくっつけてカウが俺に抱きついてくる。
カウの胸のピアスがくすぐったくて俺はくすくす笑った。
俺が笑うとカウはなんでか嬉しいみたい。
カウもにこって笑って、もっとぎゅってしてくる。
しっぽがあったらぱたぱた振ってるんだろうなって俺はいっつも思うんだ。

手をのばして近くにある黄色の花をくしゃって握ると花びらがぱらぱらって落ちる。
きれい(シキの眼みたいな赤だったらもっときれいなのにね)。
ひらひら花びらが散って、強くなる蜜の匂いにカウがくん、って鼻を鳴らす。

落ちた花びらを俺が掬ってカウの上に散らす。
カウがくしゅ、ってくしゃみしたのが面白くて俺はまた笑う。


俺は何度も花を握ってカウの上に散らした。
黄色の花びらが何度も、何度も俺とカウに降ってくる。

ひらひら。

ふわふわ。

花びらがいっぱい散った中でだんだん眠くなって、うとうとしてた。
気づいたら俺の頬を舐めてたカウの気配がいつの間にかなくて。
うっすら眼を開けてもやっぱりカウはいない。
代わりに近づいてくる、気配。

カウがいなくなる理由は一つだけ。

 

まだ足音は聞こえない。

「・・・はやく」

たくさん地面に散った黄色い花びら。
もう一度掬い上げて俺は笑う。

「はやく…来て」

 

ぱらぱらと降らせたはずの花びらは風にさらわれて俺に落ちてはこなかった。


*********

以下追記です~。

拍手[0回]

南様からのリクエストで「狂気、エロ、依存のシキアキでいちゃいちゃ」でした。
ほとんどリクエストに添えていないような…すみません~;
やたら長くなって書けば書くほど焦りが募りました…!やー、びっくりした。
ということでちょっと長めのお話になってます~。(そうでもないかな…?)

南様のみお持ち帰り可となっております!

リクエストありがとうございました!!

*********
*Fictitious  Paradise*


照明をすべて落とされた部屋が、大きくとられた窓から惜しみなく降り注ぐ月光によってぽぅっと淡く輝いている。
ベッドの上のアキラをも照らす柔らかな光が柄にもなく幻想的にも見えて、部屋に入ったシキは照明をつけるのを少し躊躇った。
ほんの僅かな逡巡。
静かな室内に揺らいでいた、よく知る気配がそっとこちらを向いたのがわかる。
僅かな衣擦れの音がして、すぐにやむ。
結局シキの手はスイッチを入れることなく下におろされ、代わりとばかりにその足で床の死体を蹴って脇へと転がした。
毛足の長い絨毯に埋もれるように一人の男の死体。
おかえり、と微笑むアキラにはまるで見えていないかのようだ。
もっとも、シキにとっても男の死などどうでもよいことだが。


「今日は何の遊びだ?」

部屋に充満する血臭に動じもせずにシキはアキラに近づく。
コツ、コツというアキラが聞けばすぐにそれとわかるシキのブーツの音も、絨毯に吸い取られてまるで音を立てない。
静かな室内。

「俺のこと、城の外に連れ出そうとした。あいつ…俺をシキから自由にしてやるって言ってた…俺はシキのものなのに。無理やり連れて行かれそうだったから…だから、殺した。」

そう言ってアキラは乾燥した血のこびりついたナイフをひらりとかざしてみせる。
輝きを失ったナイフをアキラがその手で弄んで、最後に床にポトリ、と落とす。
ナイフは絨毯に垂直に落ちた後に鈍い音を立てて倒れた。
シキはアキラが誰かを殺した、ということよりもまだナイフを扱うだけの筋力があったことにわずかばかり目を見開いて驚きをあらわした。
もうアキラはすっかりと戦闘行為から離れて久しいからだ。
あの反抗的な目だってとうの昔に失われてしまった。
それともただ単に男が隙を見せていただけかもしれない。
当然、アキラがナイフを使えることなど知らなかっただろうから。

「…楽しかったか?」

にやりと嗤ったシキの指先がアキラの頬をするりと撫でればうっとりとアキラが目を瞑り、ぜんぜん、と呟く。

「シキの血と違って、なんだか気持ち悪くなるんだ。頭がぼぅっとするし、体は熱くなる」
「…」

シーツをするりと頭からかぶって、ふふふ、とアキラが笑う。
その体にもところどころ返り血を浴びていて、シャツや肌が酸化した血で茶色に染まっていた。

シキは無言でその頬からうなじへ辿り、悪戯にアキラに触れる。

(確かに少し体温が高いな…。血にあてられたか?)

「…気持ち悪いんだ…シキの血はあんなに甘くて、あんなにいい匂いなのに」

不思議だね、と笑ってアキラがベッドに倒れこむ。
シキの血が混ざってるはずなのに、という呟きにシキは喉を鳴らして小さく嗤った。
骸となって横たわる男はごくごく薄いラインを服用していた。
けれどそれは珍しいことではない。
絶命した男だけではなくこの城で働く者の殆どがシキの血を何十分の一かに薄めたラインを使用しているのだ。シキは己の血を上手く利用して、兵士達を統率していた。
それをわかっていながら、アキラが己の血で男を殺さなかったのは、ひとえに傷を作るとシキが怒るからだった。
そろりと産毛を撫でるような仕草のシキの手が動きを止め、アキラはひくりと体を震わせる。

「シキ…」

熱っぽく潤んだ瞳を見てもシキの表情は動かない。

「その汚れた体を何とかするんだな」

耐え切れずにアキラが呼んでもシキはそれきりベッドを離れてしまう。

「ねぇ、シキ。いっしょにお風呂はいろ」

誘うような声音に(まさしく誘っているのだ)もシキがアキラのほうを向くことはない。

「一人で入れ」
「…」

一蹴され、それ以上シキがとりあってくれないことがわかると、つまらなそうにアキラはシャツを脱ぎ捨てて浴室へとふらりと足を運んだ。


「目障りだ。はやく始末しろ」

シキはアキラが浴室へ消えたのを確認し、辺りにいる兵士を呼んで部屋を片付けさせる。

「まったく世話の焼ける…」

けれどその表情は決して呆れなどではなく、苦笑のような笑みさえ浮かべたものだった。
すっかりと部屋が綺麗になると、小さく吐息を漏らして、シキはいつまでたっても浴室から出てこないアキラのもとへ向かった。


「ぁ…やっぱり来てくれた」

アキラがくすり、と笑って、泡だらけの体で扉に向き直る。

「いつまでやっている。一人じゃまともに風呂も入れないのか?」

それには応えずにただ笑うアキラは、わざとゆっくり体を洗い、シキが来るのを待っていたのだ。
遊びの名残なのか、体や床は大量の泡にまみれていた。

「…シキがいっしょに入ってくれないからだよ」

ね、と無邪気に笑うアキラの頭上からシキは無言のまま遠慮なくシャワーを浴びせ泡を綺麗に洗いながす。
されるがままにアキラは満足そうに瞳を閉じ、その口元の笑みを一層深くした。

「ねぇ、シキ…」

バスタオルに包まれながらも細い両腕を主のほうに伸ばし、アキラが主へとその身を寄せる。

「抱っこ…して?」

蜜のように甘い囁きはその願いがかなえられることを知っているからだ。

「お前は甘えることばかり上手くなるな?」

ふふ、と微笑むばかりでアキラは答えを返さない。
シキは僅かに口元を緩ませるとまだずいぶんと濡れそぼった体など厭いもせずに軽々とアキラを抱き上げて部屋に戻った。
いつの間にか死体は片付けられ、シーツはぱりっと糊のきいた清潔なものに取り替えられた部屋にアキラは特に関心も抱かない。
ほんの少し前にはそのシーツも血で汚れていたことなど、忘れているかのようだ。
ベッドの上にぽす、と放られてもアキラは楽しそうにただ笑う。

「シキ…きれい」

さしこんだ月光が、その作り物めいた美しい顔をちょうど照らし、アキラはうっとりと呟いた。
そっとアキラの指がシキの輪郭を辿る。

「…」

その言葉に怪訝そうに眉を寄せるシキは、己の容姿になど大して執着も興味もないが、アキラはシキの黒い髪も紅い瞳も好きだった。
烏の濡れ羽のような漆黒の髪と服は白い肌と紅い瞳をより際立たせる。
(シキは黒が似合う…)
ふわ、と笑い、直後シキから与えられた口付けにアキラは喜びで微かにふるりと震えた。


「アキラ」
「んぁ…し…きぃ…っ」

耳元で囁かれる声にアキラがピクリピクリと体を揺らし、一層シキはアキラを激しく抱く。
アキラが突き上げられ、揺さぶられ、啼く。
シキはこれ以上アキラから何を奪おうというのか。
ただ一片の理性ですら残させまいとするかのようにアキラが喘ぐのに任せる。

「シキ…シキ…シ…キ…ッ」

それしか言葉を知らない幼子のようにアキラはただその名を繰り返すだけだ。

「ん…ぁ……ふぁ……んっ!!」

途中で一瞬アキラの声のトーンが跳ね上がった。
シキの手にいつの間にか握られていた細いスティレットがアキラの胸の皮膚にぷつりと食い込んでいたからだ。
傷の残らぬ程度に加減されていることが分かっていても肌を滑っていく冷たい感触はすぐに、かぁっと熱さを伴う。
痛みよりも先に駆け巡る快感。
心臓に近い場所に刃物が当てられる、本能的な恐怖もすべてシキの手にかかればアキラにとって悦楽へと姿を変える。
その滑らかな肌にみるみるうちに紅い血が滲んでいく。
そこをシキが丹念に舐めとり、柔らかい皮膚の傷口を舌の先端でつついた。
わざとぴちゃりと音を立てて舐めとればそのたびにアキラの背は緩やかに反って、シーツから浮き上がる。

「俺の…血…舐め、てもへ…ぃきな…っの…シキだけだ…ね…」

荒い息の合間で楽しそうにアキラが呟いてシキの手からそっとスティレットを奪う。

「ね…シキの…も…ちょ…だい」

そう言うなり主の指先に僅かに切っ先を埋め込んで、後は用無しだといわんばかりにスティレットを放り投げ
る。
紅い、瞳と同じ色の血がシキの指先を染める。
それを少し見つめてからアキラが嬉しそうに口に含めばシキが苦笑をこぼした。

「俺に刃を向けて生きていられるのはお前だけだな」

アキラは口腔内に錆びた味が広がると同時にどうしようもないほどの恍惚感に見舞われる。
ふぅ、っと熱い息を漏らしながら丁寧に舌を這わせて、指の形を確かめるかのように辿っていく。
骨ばった関節、整った爪。

「まったく…血ですら興奮するのか、お前は」

アキラの肌はだんだんと淡く染まり、シキをも淫蕩へと誘う。
アキラにとってはシキのものであれば血ですら催淫剤になるのだ。
それぞれの体を流れるニコルと非ニコルが互いを感じてざわめきあう、ぴりぴりとした刺激がアキラは好きだった。

「シキは違うの…?」

艶やかに笑いながらアキラがちゅっ、と音を立てて指先に口付けた。

「さぁな」

シキもアキラもその答えがNOではないことを知っている。

「ねぇ……ひぁっ」

それでも返答を促すアキラをシキが無言で軽く揺する。
まるで幼子をあやすかのように優しく、甘い刺激にアキラは小さな悲鳴と喘ぎとを漏らす。
己の中のシキをしっかりと感じながらアキラは思考が溶けるほどの快楽に身を任せればもう応えなどどうでもよくなっていく。

(だって、わかりきってる)

ふわりと笑んでアキラはシキの背に手を回す。
ココロもカラダも全部。
シキとアキラはつながっている。
血ですらも相手を求めてやまない。


「ね…シキ……もっと」

 

これは愛ではなくて、渇望だ。
決して満たされることのない、乾き。
だからこそ絶え間なく魂で呼び合って、血を与え合う。

 

 

ここは彼らの楽園なのだ。

誰も立ち入れない、禁忌の園。


********
つづきであとがきとかメッセージとか。

拍手[0回]

1500番のキリリク小説、「ED3:過剰にアキラを甘やかすシキ」でした。
スズカ様のみお持ちかえり可となっております。

書いていて、ぜんぜん"過剰に"甘やかしている風にならなくてあせりました…。
それは…たぶんうちのシキが基本アキラにこの上なく甘いから…!(いまさら)
過剰に、を出せるようにアキラにおねだりさせてみました。
そしてかなえてあげるシキ様。

すこしはリクエストに近づけましたでしょうか…。
個人的には苺を食べるシーンが見せ場かと!ここ書いてる時が一番楽しかったです。

スズカ様、リクエストありがとうございました!


********

*STRAWBERRY KISSES*



シキがお昼を過ぎても部屋にいるなんて珍しい、と思ってた。
でも嬉しいからそんなこと気にもせずに俺は上機嫌でシキに体を預けて、取り留めもなく話して。

だから、部屋に昼食が運ばれてきたときに正直「あぁ…」とシキの意図が見えて少しだけ悲しくなった。

サイドテーブルには一人分のサンドイッチとスープとサラダがきれいに並べられて、食べられるのを待っている。

一人分。

シキは俺が食べるまで許してはくれなさそう。
スープの匂いは普通ならば食欲を刺激するのだろうけど、俺はあんまりお腹はすいてない。

「アキラ」

シキが俺の名前を呼んで食べるようにと促しているのがわかる。

「いらない」
「…アキラ」

もう一度呼ばれて俺は仕方ないって顔をして食卓につく。
シキ怒ると怖いもんね。

「…シキも食べるなら食べる」

シキがため息をついて、いいだろう、って。
だから給仕の人があわててシキの分をとりに行った。

シキと一緒にご飯たべることってあんまりない。
だからシキが食べるのを見たこともあんまりない。

二人分の食事が並ぶとシキが今度こそ俺のほうをじっとみるから、手を伸ばしてサンドイッチを少し齧る。
新鮮な野菜だって、卵だって、貴重なものなのにここではそんなこと嘘みたいに普通に出てくる。
それがすごいなと思う。
シキがここの支配者なんだから当たり前なのかもしれないけど。

シキは時々フォークでサラダをつついて、口に放りこんでる。
サンドイッチを1つ食べて、スープを飲んだらおしまい。
俺にしてはこれでもよく頑張ったほうだよね。

シキと一緒だと食べれそうな気もしてくるし、食べなきゃいけないんだろうなって思うし。

「もう終わりか?」

シキの方眉が少しだけ上がって不満、って顔。
俺はただ頷いて、スプーンを置く。

「せめてもう一つ食べろ」

差し出されたのはサンドイッチ。
レタスとハムの。

「もうお腹いっぱいだよ」
「違うな、お前は満腹なんじゃなくて食べるのが面倒なだけだ」

あぁ、あたってるかも。

「アキラ、俺は吐くほど食えとは言わない」
「…シキと一緒ならちゃんと食べるよ」
「毎日か?」

シキが忙しいのなんてわかってるんだ。
すごく、忙しいのなんて…わかってるんだ。

「…やっぱりいい」

結局、俺はシキからサンドイッチを受け取って大人しく齧る。
シキは何かを考えてるみたいだったけど、その間にシキの皿はどんどん空になっていってた。
静かな食卓。

「シキ、もう無理だよ…はいんない」

ほんというと、お腹がいっぱいなわけじゃなかった。
ただもう食べるのが疲れちゃっただけ。

椅子を降りて向かいのシキの膝に上る。
やっぱりシキは何も言わずに俺の好きにさせてくれる。
最近ではベッド以外の俺の指定席はシキの膝の上に決定しつつある。
だって、そこにいればシキはいつも頭を撫でてくれる。

「夕食ならいいだろう」

頭を撫でられていた手がぴたりと止まる。

「…?」

何の話かわからなくて、シキを見上げる。

「夕食なら一緒に摂ってやれるが」
「…ほんと?」

俺の言ったこと、考えててくれたの?

「もちろん毎日というわけにはいかないがな」
「うん…それでいい…それがいい。…俺、きちんと食べるよ」

シキはそうか、と言ってまた撫でてくれた。
嬉しいのと、心地いいのとで、ふわふわと意識を漂わせながらシキの胸に頭を預ける。
嬉しい。
嬉しい。

シキが、俺のために時間を作ってくれた。

食器を提げに来た給仕はいつもは俺のこと見つめてくるくせにシキがいるから俺のほうなんて見向きもしない。
それだって気にもなりはしない。

「本日のデザートはアキラ様のお好きな苺が手に入りましたので生のままでお持ちしました」

きらきらした赤い果実をのせた白い皿と練乳を残して給仕は去っていく。

「どうした、好物なのだろう?」

うん、苺は好き。だけど今は食べる気分じゃない。
シキの傍にいる、それだけでほかの事はどうでもいい。

「アキラ」

呼ばれて顔を上げれば目の前にシキの顔。

「食べろ」
「じゃぁ…食べさせて?」

シキに向かってあーんって小さく口を開ける。
シキはそんなことしてくれないだろうって思ったけどやってみた。

「なんだ、甘えたいのか?」

シキが親指で俺の唇を撫でて、すごく愉快そうに笑う。
本当に楽しそうで…珍しい。

「…そうだよ」

甘えたっていいでしょ?
いつもはこんなに長く一緒にいてくれないんだ。
朝起きたらいつもいない。
俺がどんな気持ちになるかなんて、知らないくせに。
頑張ってご飯も食べた。
それに今、すごく甘えたい気分なんだ。
だから、甘えさせてよ。

「…ほら」

シキが苺を俺の口元に持ってきてくれる。
その赤い果実に口付けて先端をかし、と齧る。
溢れてくる果汁が少しだけ俺の意識を冴えさせて、その甘さですぐに溶かす。

シキの指ごと口に含んで舐める。
苺の味。

「ぁ…」

優しく指が抜かれて、俺は息と一緒に小さく声を漏らした。
今度は少しだけ練乳のかかったそれを差し出されて、俺はまたシキの指ごと銜える。
柔らかく甘い果実を味わいながら俺は目を伏せた。
上手く飲み込めなかった果汁が口から滴ってシャツをピンクに染める。
ゆっくり飲み込んで、シキを見つめれば、苺よりももっと赤い瞳が近づいてくる。
ふさがれた唇をとおして送られてくる荒く噛み砕かれた果肉。
いつの間に、シキは苺を食べたんだろう。

ひどく、甘い。

「…もっと」
「そんな物欲しげな顔をせずともいくらでもやる。存分に味わえ」
「ん…ぁん」

シキに抱きついて、もっともっとってねだる。
体を密着させれば体温で暖められたせいかシャツの果汁がひときわ香る。

俺は本当にお腹がいっぱいなるまでシキに苺をねだった。
シキは最後まで俺に与えてくれた。

 

苺と、キスを。   

拍手[1回]

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BrownBetty 
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