忍者ブログ
唇のあわいからあなたへ甘い毒を注ぐ。幾度も、幾度も。
  • /04 «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • » /06
カレンダー

04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

カウンター

フリーエリア

キリ番は500単位で受付中です。
お礼SSを書かせていただいてます。
踏まれた方はコメントか拍手でご一報くださいね。
シチュエーションなどリクエストいただけると助かります~。



ぱちぱち

プロフィール

HN:
coffin
性別:
女性
自己紹介:
無類のシキアキスト。
次点でリンアキ、グンアキ。
そしてわりと好きなカウアキ。
なんにせよアキラは受けです。

あの可愛いさは反則…!
*************
リンクフリーです。
バナーはお持ち帰りくださいね。


リンク
カテゴリー
最新コメント
最新記事
バーコード
RSS
ブログ内検索

最古記事
最新トラックバック

アーカイブ
アクセス解析
アクセス解析
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

CUREはこれにておしまいです。
02のアキラの視点とその後がちょこっと。

昨晩02に追記できなかったので03のあとがきにまとめて書いてます。すみませ…!

************************

*CURE-03*

俺を呼ぶ声がする。
おいでおいで、って手招きするみたいに俺を呼び寄せる。

そちらにいきたいのに足は俺の言うとおりにはまったく動かなくて、ぽつんと暗い中、俺は立ち尽くす。

シキはどこ?


そのときピカッと一瞬だけ辺りが明るくなって、青い布地が見えた。
それに、赤い、血。

白いシャツと腰で結んだ袖。

ツナギ。

見たことのある、その服。

記憶のそこから這い上がってくるのが誰なのか、俺は知ってる。

そう、知っている。

「ケイスケ…」

どうして忘れていたんだろう。
なんで、忘れられたのだろう。

俺は、忘れたかったのかな?

だから、シキに支配されることで忘れようとした?

「アキラァ、ここはさぁ、寒いんだ。お前が俺のこと置き去りにしたせいでずっと寒いままだ。雨は冷たいなァ?」

時折ひらめく閃光のおかげで口元は見えた。
にやり、と口の端を上げて、笑ってる。

目は、見えない。
だから、その瞳が濁ってるかどうかなんてわからないし、もしそうだとしても関係なかった。

ただ、俺の中からなにかが抜け落ちていく感じがした。
すとん、と服を脱いだときみたいに。
体が軽くなって、思考がクリアになって、はっきりとものが考えられる。

「…」

口を開いて、息を漏らして、結局何も言えずに口を閉じる。

なんといったらいいというのか?
すべては真実だ。
俺がケイスケを置いていったことは事実だ。
あの雨の日に、あの場を離れたのがたとえあいつ―シキ―に連れ去られたせいだとしても、あのとき俺は抵抗しなかったから。

「アキラァ、迎えに来てくれよ。俺、ずぅーっとお前のこと待ってるんだぜ?」

なぁ、と首筋をケイスケの指先がたどる。力をわずかにこめられて息が詰まる。
相変わらず足は動かないし、言葉は出てこない。

またぴかり、と明るくなってそうして視界が白一色に染まる。

 

 

 

 

 

 

ふわふわした意識はそれでも主の声は聞き分ける。

「…アキラ」

シキの声が聞こえて、ゆっくり目を開ける。
冷たいシキの指がさらさらと俺の髪を梳いてる。
シキはバスローブを着てた。
黒の、バスローブ。

「…シキ…いつ帰ってきたの?」

いつ、この部屋に戻ってきたの?
いつ、お風呂に入ったの?

「…さっきだ。お前もよく寝ていられるものだな」

目じりをすっとなでられて微笑む。

「うん…頭、いたくて」
「もういいのか?」

ぜんぜん痛くないわけじゃない、けど。
何もする気がしないほどにはひどくもない…のかなぁ。

「よくわかんない。…けど起きれるからだいじょうぶ」

起こして、ってお願いするみたいに腕をシキに伸ばした。
シキは強い力で俺の腕を引っ張って、俺はその反動のままにシキに身を寄せる。

「キスして…」

噛み付くような、でも甘いキス。
好き。好き。好き。

「ふぁ…ん…んぅ…ふ…ぁ…」

気持ちいい。
とけちゃいそうで、シキの服をぎゅってつかむ。

 


「なんか、大事な夢…見た気がするけど…でもよく覚えてないんだ」

ぴかって光ってたのは覚えてるけど…それ以外はぼんやりしてる。
なんだったんだろ。
シキの胸に頭を預けたまま呟けば、撫でてくれてた手が一瞬止まる。

「……そうか。…お前にはそんなもの必要ないだろう?」

またシキが優しく俺のこと撫でてくれる。
それで、いい。

 

「うん…いらない」

いらないよ。
シキが俺のこと抱いてくれて、キスしてくれるなら。






 

何もいらない。



********
あとがきは続きから。

 

拍手[0回]

PR

CUREの続き。
***************************

*CURE-02*

一通りの仕事を終えてアキラの眠る寝室へと再び足を運び、ぐっと扉を開けばアキラの傍にいたらしい狗がベッドの上ですばやく身を起こす。

名残惜しそうにアキラの頬に鼻を寄せると、すぐにベッドを降り部屋の隅にうずくまった。
俺がいるときにはアキラの傍を離れ大人しくしているように、という命令をきちんと実行しているのだ。
あの変態が躾を行ったというのが非常に気に食わないがしょうがない。

ベッドの端に腰掛ければぎしりとわずかにスプリングが軋み、アキラの体も少し下がる。
昨晩は抱いていないというのにこれほどまでに眠るとは。
ぴくりとも動かずアキラは人形のように昏々と眠っていた。

まだ時刻は昼を回った程度だがアキラが起き上がって何かをした形跡が無い。
当然食事もしていなければシャワーも浴びていないのだろう。

普段はここまで昏睡することなど無いのだ。
俺が近づけば自然と目を覚ます。
血が呼ぶのだと、アキラは言うが。

しばらくは放っておくか、とベッドに腰掛けたまま刀の手入れをする。
丁寧に分解し、整備し、組み立てる。
人の血を吸わせた後は特にこの作業が重要だった。
ちゃき、と音を立て刀を点検する。

外は相変わらずの豪雨で時折、稲妻が光っては部屋を瞬間的に照らし出す。

「…っ!」

その雷鳴がとどろいた瞬間、動きもしなかったアキラが悲鳴のような息を飲み込んで、起き上がった。
何事か、と眉をひそめればアキラは窓辺に走りよってぺたりとそこに張り付く。
じっと何かを見つめ、そして部屋を走って出て行った。

「…アキラ」

という俺の呼びかけに何の反応も返さぬままに。
まったく、世話の焼ける。
何を考えているのかまるで分からない。
ため息を吐いてアキラを追う。


あろうことかアキラはこの雨の中外へと走っていった。
こめかみを押さえたくなるのをこらえ、少しだけ足を早めればすぐにアキラに追いつく。
もともとの歩幅が俺より狭い上に筋肉のついていない足で走るのであれば速度が出ないことは分かりきっていた。

あまりにひどい雨滴のせいで景色が白がかって見える。
それほどの雨。
そのなかでアキラの腕を捕らえ、動きを封じる。
ひどく浅い呼吸を繰り返すアキラが動きを止めるかと思いきや逃れようと身をよじる。

「…ゃだ…っ!離せ…っ、ケイスケが待ってる!!あんなところにケイスケは一人ぼっちだ!…ケイスケ!いま行くからっ。俺、行くからっ…離せよっ」

そう叫びながらもがくアキラがこちらをにらみつける。
その瞳はもう、とっくの昔に消えてしまったはずの…アキラのものだ。
鋭い眼光で俺に向かってくる。
抗い、歯向かい、思う侭にならない、アキラ。

「…ケイスケ…っ」

その唇からこぼれる名前が俺の名でない事が無性に腹立たしく、その頬を軽く張る。

「お前の友人は死んだだろう。あの雨の日に。お前が俺のものになったあの日に。目を覚ませ」
「ケイスケは死んでない!俺を待ってるんだ、あそこで待ってるんだ!」

青白くなっていく肌と、炎のような瞳。
今と過去が絡み合って、ひどく曖昧な感情を呼び起こした。
いっそう激しさを増す雨に打たれアキラのシャツは体に張り付き髪はしとどに濡れてその体のラインを浮かび上がらせる。
当然俺も濡れそぼり、体にまとわりつく皮のコートがひどく鬱陶しかった。


雨が、アキラを呼び覚ましたのだろうか。
この苛烈さは、とっくに失われたと、思っていた。
だんだんと過呼吸のようになり、息苦しそうにアキラの顔がゆがんでも、それは今のアキラの顔ではなかった。

「アンタ、離せよ…!ケイスケの傍に行かなくちゃいけないんだ!」
「黙れ」

その首筋に手刀を打ち、がくりと力の抜けた体を抱きとめて城内へと戻る。

「お湯を用意いたしております」
「あぁ、分かった」

さっと近づいてきて、それだけ告げて兵が持ち場に戻る。
片手でアキラのシャツを脱がし、浴槽に座らせる。

「…手間ばかりかけさせる奴だな、お前は」

もっともそこも愛いのだがな。
俺も服を脱ぎ、シャワーを浴びると浴槽へと身を沈める。
アキラの体を支え、その身が温まるまでじっと待つ。
湯の中でも冷たかった体は徐々にその温度を取り戻してきていた。
肌の青白さが少しよくなった頃合を見計らって浴室を後にする。

バスローブを羽織り、アキラの体を軽く拭きベッドに横たえる。
以前でも軽かった体は今ではもう片手でも足りるほどの重さだった。

「…アキラ」

髪を梳きながらそう名を呼べば今度こそゆっくりと睫が震え、その瞳が俺を映す。

「…シキ…いつ帰ってきたの?」

口調はもうすっかり元に戻っていて、あの覇気はどこにも感じられない。
…覚えていないというのか?

「…さっきだ。お前もよく寝ていられるものだな」
「うん…頭、いたくて」
「もういいのか?」
「よくわかんない。…けど起きれるからだいじょうぶ」

こちらに手を伸ばすアキラを引っ張って起こしてやる。

「キスして…」
 

その身を寄せて、甘えるように囁いたアキラの唇を、あらゆる言葉を封じ込めるようにふさいだ。

********

あとがきは続きから

拍手[1回]

いつだってアキラはシキを待ってるんです。

*********************

*CURE*


雨、雨、雨。

ずーっと降り続けてる。
それで、俺は体がだるくて、頭が痛い。

朝からカウに抱きついたままベッドから動いていない。
シキは夜中出に出て行っちゃってまだ帰ってこないし。
城にはちゃんといるんだって、わかるけど、やっぱりシキが傍にいないと嫌だ。

カウは心配してくれてるのか鼻先で俺の髪とか、頬とかに触れてきて。
それが少し心地よくて、俺よりずっと体温の高い体をぎゅっ、てする。

「かーう。ずぅっと…あたまいたいんだ…あめは嫌いだよ」

ちらちらと脳裏を横切る青いモノ。
それが何なのかはよくわからなかったけど、思い出そうとすればするほどその輪郭はぼやけていくみたいに、すぅっと消えてしまう。

つきん、つきん、と鼓動と同じリズムで頭痛がする。
眠って誤魔化してしまいたかったけどそれもできない。

「カウはあったかいね」

カウはシキの言いつけどおりちゃんと服を着ていたけど、それでも俺よりもあったかいってすぐにわかる。

くん、と鼻を鳴らしてカウが俺の顔を舐めていく。
これがカウの慰め方って最近分かってきた。

カウはしゃべらないから、いい。
俺の呟きを黙って聞いてくれて、絶対に誰にもそれを漏らす事は無いし。
言葉で侍女や見張りたちや医者に「大丈夫ですか?」なんて聞かれるよりもカウがその頬を摺り寄せてくれる方がずっと慰められた。

「シキ…」

頭の痛みで一晩眠れなかっただけですごく疲れてしまって、やっと痛みに負けないくらいの睡魔が襲ってくる。

「シキ…」

もう一度名前を呼んで、俺は緩やかに眠りに落ちる。


まっくらな夢の中へ。

 

********

あとがき、拍手お礼は続きからー。

 

拍手[0回]

邂逅-01の続き。
カウはどうなったのか、という話。
一応おしまいですがきっとまた関連物を書きますー。

*******************

*邂逅-02*


「こっち、おいで」
半ば飛びかかるようにして浴室に入ってきたカウをアキラはよしよしと拙い手つきでなでてやる。

(え…と。…服、脱がせなきゃ)

「おとなしくしてなきゃだめだよ。…いい子にね?」

いつもは己がシキに言われるようにアキラはカウにそう諭した。

複雑な仕様の服とうんうんと唸りながら格闘してアキラはなんとかカウの服を脱がせる。
その衣類をぽいぽいと脱衣所に放り投げて最後にアイマスクに手をかけて取り去ってしまうとアキラは小さく息を呑んだ。

その瞼は閉じた状態のまま銀糸で縫い付けられていたからだ。
眼球のないことは覚えていたが、縫われているとはさすがにアキラも思い及ばなかった。

そっとその繊細の指先で瞼をたどるとカウの肩がピクリと跳ねた。
その押せば窪んでしまう不思議な感覚にアキラは優しく何度も瞼をなでる。

「…いたい?」

アキラの問いにカウはもちろん言葉で答えを返すはずもなく、ただ、大丈夫だいうようにアキラの頬をぺろりと舐めた。

「ふふ、くすぐったい」

シャワーから湯を出して、カウの体を濡らしていく。
誰かの体を洗うというのはアキラは初めてだった。
いつもは自分で洗うかシキに洗ってもらうかのどちらかであったし、シキと会う以前に誰かと風呂に入った記憶もなかった。
温かい湯が気持ちいいのかカウの口元の笑みが深くなり、ぴちゃぴちゃと床の湯を弄ぶ。
アキラはシャンプーを手にとると、すっかり灰や埃にまみれて黒くなっていた髪に手を伸ばした。
泡を懸命にたてて洗っていく。
カウの頭にこんもりと泡が乗った状態で今度は体を洗いにかかる。
柔らかいスポンジにボディーソープを含ませると優しく優しくその背中をたどっていった。
背面を洗い終えるとスポンジを投げ捨てて前面は掌で洗う。
そのいくつものピアスでうまく洗えそうなかったからだ。
そっと肌の上を掌がすべり、輪のピアスに指がかかった瞬間、カウがアキラにぎゅっと抱きついた。
シャツが泡と湯でぐしょぐしょになり、楽しそうにアキラは笑った。

「俺と似てるね…俺もこれ、シキにもらったんだ。…ほら」

カウの手を己の臍へと導いてそのピアスを触らせる。
少し触られただけでも快楽の炎が揺らめいてアキラは"ぁん…"と甘い声を漏らす。

(カウと悪戯しちゃったらシキはカウのこと斬っちゃうのかな)

どうしよう、と楽しげにアキラの瞳は迷っていたがまずはカウの体を綺麗にすることに専念した。
遊ぶのはいつでもできる。

すべてを洗い終えて二人で浴槽にはいる。

「綺麗になったね、カウ」

頬を両手で挟んでアキラが呼びかければカウは嬉しそうに笑った。
肌はすっかりもとの白さをとり戻し、髪は以前のようにきらきら光る綺麗なプラチナ。
ボディーソープやシャンプーの香りがふわりと漂って、アキラは満足げな顔でそれを見つめる。
ぴちょん、ぴちょん、と滴る水音に二人して耳を澄まして、石鹸の匂いのあふれる浴室でじゃれあっていたときにぴく、とアキラが動きを止める。

「あ…」

突然声を出したアキラにカウが"どうしたの?"とでも言いたげにアキラに抱きついていた腕を緩めた。

「シキ…」

ざぶん、と湯船の湯を波立たせてアキラはするりと浴室から出て行った。

カウを残して。


「…もうお仕事終わり…?」

体から湯を滴らせながらぞんざいに巻いていたタオルを床に落とし、コートを脱いでいたシキにアキラは抱きついた。
今の今までカウがアキラにそうしていたように。

「あぁ、早く帰るとお前と約束したからな。ところでアキラ…浴室に何を連れ込んだ?」

そうたずねるシキのことだ、絶対にカウのことだって報告があがっているはずなのに、とアキラは小さく笑う。

「見てみるといいよ…シキも驚くよ?」

くすくすと笑い続けながらその手をひいてアキラはシキを浴室へといざなう。
もちろんその掌にキスすることを忘れずに。 

「懐かしい面だな。あの変態のペットか」

カウを見たシキの一言目がそれだった。
カウは相変わらず湯船に浸かって、水を跳ね上げて遊んでいた。
その仕草は幼子のようでアキラはまた小さく笑う。
シキの匂いに反応してカウが動きを止め、こちらを伺う。

「カウを部屋に置いていい?」
「ほう、猫が犬を飼うか」

楽しそうに喉を鳴らすシキを見てアキラがその腕に体を寄せる。

「シキがいないとき俺一人じゃつまんないんだよ」
「以前鳥を与えてやっただろう。お前は気に入らなかったみたいだが」

シキは以前アキラに美しい鳥を土産に持って帰ったことがあった。
自分も連れて行けとアキラがごねたときにこれでも部屋に置いておくんだな、と珍種の鳥をアキラに手渡したのだ。結局アキラはその鳥籠の扉を開け放して鳥を外に放してしまったのだが。

「だってあれ臭いんだ」

ふん、と鼻を鳴らしてアキラは不満げな態度を見せる。


わずかに逡巡してシキがその形の良い口唇を開く。

「…いいだろう。ただし」

シキはそこで一度言葉を切ってカウを浴槽から引き上げる。

「俺が部屋にいるときはお前は大人しくしている事だ。従えるか?」

顎をつかみ、顔を上向かせてシキはカウに問うた。
カウはおずおずとためらいがちにそれでもそっと、シキの手に唇を寄せる。
それはアキラに向ける親愛の情とは違い恭順を示す動作だった。

「ふ、いい子だ…。従順なペットは嫌いじゃない」

それだけ言うとシキは寝室へと踵を返す。
アキラは少し上気したカウの頬をするりとなでて、よかったね、と笑うとその主を追いかけて浴室を去る。

 

浴室には満面の笑みを浮かべたカウだけが、残った。



********
あとがき&拍手のお返事は続きから

拍手[2回]

下の記事で言っていたシキアキ前提のカウアキ。
いや、カウアキというかカウ+アキラという感じになりそうです。
書き終わりませんでした…。
なるべく早く続きを書くようにしますのでもう少しお付き合いくださいー。

*********************

*邂逅-01*

その日アキラが外庭を出歩いていたのは単なる気まぐれだった。
シキが朝から忙しく、ずっと放って置かれたからという理由があるにはあったのだがそれにしてもアキラが城から出ることなど滅多にないからして、気まぐれと呼んでも差し障りはないだろう。

 

いつものようにシャツだけを羽織り、適当にボタンで留めてアキラは空を見上げる。

(くもり…)

あまり日差しが強いと、アキラはすぐに疲労してしまうため曇りのほうが何かと都合はいいのだ。
本人が、ではなく周囲の兵たちが、だが。
ぐったりとしたアキラを連れ帰ればシキに睨まれる事は間違いないからだ。
たとえ己が罪を犯していないとしても、だ。


その素足に柔らかい芝の感触を楽しみながらゆっくり歩く。
観賞用の植物は(こんな荒んだ土地でそんなものがあるのは、ひとえにアキラのために中庭が作られたからだ)専ら中庭に植えられているため外庭には何もないのだが。

「シキはまだかな」

ふわふわとした足取りで楽しそうにアキラが笑う。

そのとき俄かに正門のほうが騒がしくなってアキラの気がそちらに逸れる。
ざわざわと困惑した様子の男たちの方へぺたぺたと向かえば、途中から地面は芝でなくなり、敷き詰められた石畳や小石がアキラの柔らかな足裏を傷つけた。

「ねぇ、どうしたの?」

「アキラ様…!危険ですのでお下がりください。不審人物がちょうど発見されたところでして」
「…ふぅん」

なんだ、たいしたことではない、とアキラの興味は薄れたかのように見えたが次の瞬間両腕を一人の兵士に拘束されたその人物を見てアキラの頭を何かがよぎった。

"それ"はアキラに向かって手を伸ばして兵士たちに抗っていたがその行為が余計周囲に警戒を与えてしまっていた。
既視感がぬぐえずにもう一度見ようと試みてはみたもののアキラの周りには3人の兵士が張り付き、ぴりぴりとした緊張感さえ漂わせている。
この場で最も重要なのはアキラに傷ひとつ負わせないことなのだ。

その男たちの隙間からアキラはそっと向こうを伺う。

胸元に見えるいくつものピアス。
拘束具のような黒い革の服。
汚れてはいるが美しいプラチナの髪に細い体躯。

「ぁ…」

その既視感の正体を突き止めたアキラは小さく声を上げた。
それにすぐに気づいた兵士がアキラの方を向いてたずねる。

「どうかなさいましたでしょうか?」
「あれ、放してあげて」
「…と申されましても…あの人物は不審者として拘束しておりますので」
「あれ、俺の知ってるヒトだから」

人と呼ぶには少し違う気がしたが仕方がない。

「ですが…」

アキラが知っている人物だとはいえ、その格好は明らかに常軌を逸したものだし、害をなさないとは言い切れない。

「ねぇ、俺の言ってることわかるよね?それともシキにお願いしたほうがいいの?」

一人の男の手をとって、己の頬に宛てながらアキラはうっそりと笑んだ。
そのままその手を徐々にシャツの中へと導くように降下させる。
振り払うようにあわててその手を引き抜いた男はアキラがその対象に近づこうとももはや何も言わなかった。
もちろん、細心の注意は払っていたのだが。

「おい、そいつを解放してやれ。アキラ様のお知り合いらしい」
「失礼しましたっ」

敬礼をとる彼らにかまいもせずにアキラはそっと近寄ってその髪に手を伸ばす。

「…カウ」

そっと名前を呼んでやれば喜びを表すようにアキラの胸に鼻先をすりつけ、ぎゅっと抱きつく。
それはアルビトロがひどく気に入ってそばにいつも置いていたカウという名の少年だった。
髪や服がすっかりと汚れてしまっていたが間違いない。
おそらくアキラの匂いも覚えていたのだろう。
警戒心などちっとも見せずアキラの顔を舐めまわす。

「おまえ、なにしにきたの?」

くすくすと笑いながらたずねながらその背にゆっくり腕をまわす。
そしてたずねた後にカウの主人はもういないことをアキラは思い出す。

あぁ、そうか。

「カウは今、ひとり…?」

カウはアキラの問いかけにぴたりと動きを止めてちょこんと首をかしげた。

「おいで…?俺がカウのこと綺麗にしてあげる」

夢見心地で去っていくこの城の主の美しい情人と、四つん這いでその後ろについていく怪しい服装の少年。
現実とはよほどかけ離れた光景に兵士たちはしばらく目を離せなかった。

拍手[0回]

BACK * HOME * NEXT
BrownBetty 
忍者ブログ [PR]